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しあわせな男

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「助けて!尚君!」

 「えっ!?」



 見れば、聖子が見知らぬ男に捕らえられていた。



 「聖子を離せ!」

 「この女を助けたければ、3時間以内に俺の家に来い!」

そう言い残すと、二人の姿はその場から掻き消えた。



 「せ、聖子!」



なんてことだ。
 俺の恋人の聖子が捕まってしまった。
とにかく、聖子を助けなければ…!
あいつの家はこの高い山の向うだ。
ん?なんで、俺、あいつの家を知ってるんだ?あいつが誰だか、知らないのに。
いや、今はそんなことは関係ない。
とにかく、聖子を助けないと!



 俺は目の前の山を見上げる。
 途方もなく高い山だ。
 看板には『エベレスト』と書いてある。



 「聖子~!今行くからな~!」

 俺は、エベレストを必死で登る。
だが、山はなにしろ高くて、どれだけ必死に登ってもなかなか進まない。
こんな調子では3時間以内にはとてもこの山を乗り越えられそうになかった。
 俺の気持ちは焦るばかり…



「あっ!」



そんな時、俺の体がふわりと浮かんだ。
 大きなコンドルが、俺を掴んで、山を越えていく…



「ありがとう!助かったぜ!」



 俺は、運んでくれたコンドルに大きく手を振った。
あいつの家はこの近くのはずだ。
 俺はあいつの家を探して歩いた。
そのうち、広大な畑が現れた。
 見渡す限りのピーマン畑だ。
ふと、腕時計を見ると、タイムリミットまであと3分となっていた。



 「聖子~!聖子~!どこだ~!?」



 *



 「ふぅーん…それで、最後はどうなったのよ。」

 「そこで目が覚めたんだ。」

 「なぁ~んだ。」

 「でも、エベレストにコンドルにピーマンだぜ。
 一富士、ニ鷹、三なすびと、明らかにかすってるよな?
こんな初夢見たんだ、きっと、今年は良いことがある!」

 「え~…そうかなぁ…?」

 「絶対そうだって!
あ、そうだ、宝くじ…!
 俺、今年は宝くじ買うぞ!
きっと、それが大当たりするんだ!
そうだ、そうに違いない!!」

 「はぁ……」

 聖子は呆れて、小さな溜息を漏らした。
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