121 / 401
運命のテレホンカード
1
しおりを挟む
(あれ…?)
ポケットに手を入れた時、俺はある違和感に気付いた。
そうだ…テレホンカード…
さっき、使ってからどうしたっけ?
もう一度ポケットに手を入れてまさぐる…反対側も同じように。
でも、テレホンカードはやっぱりなかった。
クラッチバッグの中も見てみたが、そこにもない。
(やっぱり、さっきの電話の時…)
俺は、仕方なく、さっきの電話ボックスに戻ることにした。
テレホンカードがなければ、やっぱり不便だ。
小銭をじゃらじゃら持って歩くのは大変だし格好悪い。
それにあのカードは、まだ買ったばかりでそんなに使ってない。
なくしてしまうにはもったいない。
電話ボックスの近くに来た時…
ちょうど、ひとりの男性がドアを開けて中に入ろうとしていた。
俺は慌てて走り出し、その男に声を掛けた。
「あ!ちょ、ちょっと待って!
俺…そこに忘れものが…」
俺の声に気付いた男が振り返る。
その瞬間、俺とその男は、まるでまわりの時が止まったかのように、お互いの顔をみつめて固まった。
そこにいたのは、俺だった。
いや、俺とそっくりな男…
それが、誰なのか、俺は瞬時に理解した。
「まさか…誠司なのか?」
「えっ!?じゃ、じゃあ…祐司?」
そう…ある不幸な事情から、俺達は幼い時に別々の里親に引き取られ…
それ以来、お互いの消息を知ることもないままに大人になった。
別れたあの日から、三十数年ぶりに、俺達は偶然出会ったんだ。
俺達は、近くの茶店でティラミスを食べながら、お互いの近況を話した。
「え、漫画描いてるのか…」
「いい年になって馬鹿みたいだろ?でも、今でも漫画家になるっていう夢を諦めきれないんだ。」
「あぁ、わかるよ…」
「嘘吐け!本当は馬鹿みたいだって思ってるんだろ?」
「思ってないって。
俺も絵描きになるのが夢で、今でも絵を描いてるんだから。」
「えっ!?そうなのか?」
幼い時のことを思い出した。
そうだ、俺達は二人共子供の頃から絵を描くのが好きだった。
進む道は少しだけ違うけど、だけど二人共まだ絵を描いてたってことが…夢に向かって頑張ってるってことが、俺は本当に嬉しかった。
こんな年になって、まだ夢を追ってるなんて、普通なら話しにくいことだ。
俺たちくらいの年だと、きっと、子供の事や家のローンなんて現実的なことに頭を悩ませていることだろう。
だけど、俺はいまだに独身だし、家ももちろん借家だ。
こんな俺は、世間から言わせればただの負け犬なのかもしれない。
でも、俺はどうしても夢を諦めきれない。
俺の描いた漫画が雑誌に載り、それを読んだ人たちが感動したり、笑ったりしてくれることを思ったら、とてもじゃないけど、描くことをやめられないんだ。
そのことを馬鹿にされなかったばかりか、誠司も俺と同じように夢を追いかけていたなんて…
(俺達、二人共ネバーランドの住人なんだな…)
嬉しくなって、俺は思わず微笑んでしまった。
「……どうかしたのか?」
「いや、なんでもない。あ、これ、うちの住所と電話番号な。」
「ありがとう、じゃあ、俺も…」
俺達は、自宅の住所と電話番号を交換した。
意外にも俺達は、けっこう近くに住んでいた。
「それと…これ、やるよ。」
俺は無事に見つかったテレホンカードを誠司に手渡した。
「え?なんで?」
「これのお陰で、お前に会えたんだ。
だから…おまえに持っててほしいんだ。
これでまた連絡してくれよな。」
「ありがとうな。」
俺達は、また近々会う約束をした。
その時は、お互いの描いた絵を見せる約束も…
(二人共、夢を叶えられたら最高だな!)
漫画を描く意欲がさらに大きく膨らみ、最高の気分で家路に就いた。
ポケットに手を入れた時、俺はある違和感に気付いた。
そうだ…テレホンカード…
さっき、使ってからどうしたっけ?
もう一度ポケットに手を入れてまさぐる…反対側も同じように。
でも、テレホンカードはやっぱりなかった。
クラッチバッグの中も見てみたが、そこにもない。
(やっぱり、さっきの電話の時…)
俺は、仕方なく、さっきの電話ボックスに戻ることにした。
テレホンカードがなければ、やっぱり不便だ。
小銭をじゃらじゃら持って歩くのは大変だし格好悪い。
それにあのカードは、まだ買ったばかりでそんなに使ってない。
なくしてしまうにはもったいない。
電話ボックスの近くに来た時…
ちょうど、ひとりの男性がドアを開けて中に入ろうとしていた。
俺は慌てて走り出し、その男に声を掛けた。
「あ!ちょ、ちょっと待って!
俺…そこに忘れものが…」
俺の声に気付いた男が振り返る。
その瞬間、俺とその男は、まるでまわりの時が止まったかのように、お互いの顔をみつめて固まった。
そこにいたのは、俺だった。
いや、俺とそっくりな男…
それが、誰なのか、俺は瞬時に理解した。
「まさか…誠司なのか?」
「えっ!?じゃ、じゃあ…祐司?」
そう…ある不幸な事情から、俺達は幼い時に別々の里親に引き取られ…
それ以来、お互いの消息を知ることもないままに大人になった。
別れたあの日から、三十数年ぶりに、俺達は偶然出会ったんだ。
俺達は、近くの茶店でティラミスを食べながら、お互いの近況を話した。
「え、漫画描いてるのか…」
「いい年になって馬鹿みたいだろ?でも、今でも漫画家になるっていう夢を諦めきれないんだ。」
「あぁ、わかるよ…」
「嘘吐け!本当は馬鹿みたいだって思ってるんだろ?」
「思ってないって。
俺も絵描きになるのが夢で、今でも絵を描いてるんだから。」
「えっ!?そうなのか?」
幼い時のことを思い出した。
そうだ、俺達は二人共子供の頃から絵を描くのが好きだった。
進む道は少しだけ違うけど、だけど二人共まだ絵を描いてたってことが…夢に向かって頑張ってるってことが、俺は本当に嬉しかった。
こんな年になって、まだ夢を追ってるなんて、普通なら話しにくいことだ。
俺たちくらいの年だと、きっと、子供の事や家のローンなんて現実的なことに頭を悩ませていることだろう。
だけど、俺はいまだに独身だし、家ももちろん借家だ。
こんな俺は、世間から言わせればただの負け犬なのかもしれない。
でも、俺はどうしても夢を諦めきれない。
俺の描いた漫画が雑誌に載り、それを読んだ人たちが感動したり、笑ったりしてくれることを思ったら、とてもじゃないけど、描くことをやめられないんだ。
そのことを馬鹿にされなかったばかりか、誠司も俺と同じように夢を追いかけていたなんて…
(俺達、二人共ネバーランドの住人なんだな…)
嬉しくなって、俺は思わず微笑んでしまった。
「……どうかしたのか?」
「いや、なんでもない。あ、これ、うちの住所と電話番号な。」
「ありがとう、じゃあ、俺も…」
俺達は、自宅の住所と電話番号を交換した。
意外にも俺達は、けっこう近くに住んでいた。
「それと…これ、やるよ。」
俺は無事に見つかったテレホンカードを誠司に手渡した。
「え?なんで?」
「これのお陰で、お前に会えたんだ。
だから…おまえに持っててほしいんだ。
これでまた連絡してくれよな。」
「ありがとうな。」
俺達は、また近々会う約束をした。
その時は、お互いの描いた絵を見せる約束も…
(二人共、夢を叶えられたら最高だな!)
漫画を描く意欲がさらに大きく膨らみ、最高の気分で家路に就いた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
Gift
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
リクエストやら記念に書いたSS集です。
すべて、数ページ程の短編ですが、続き物になっているお話もあります。
私や他のクリエイター様のオリキャラを使ったものや、私のお話の番外編もあります。
【完結】夫の心がわからない
キムラましゅろう
恋愛
マリー・ルゥにはわからない。
夫の心がわからない。
初夜で意識を失い、当日の記憶も失っている自分を、体調がまだ万全ではないからと別邸に押しとどめる夫の心がわからない。
本邸には昔から側に置く女性と住んでいるらしいのに、マリー・ルゥに愛を告げる夫の心がサッパリわからない。
というかまず、昼夜逆転してしまっている自分の自堕落な(翻訳業のせいだけど)生活リズムを改善したいマリー・ルゥ18歳の春。
※性描写はありませんが、ヒロインが職業柄とポンコツさ故にエチィワードを口にします。
下品が苦手な方はそっ閉じを推奨いたします。
いつもながらのご都合主義、誤字脱字パラダイスでございます。
(許してチョンマゲ←)
小説家になろうさんにも時差投稿します。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
婚約者に嫌われているようなので離れてみたら、なぜか抗議されました
花々
恋愛
メリアム侯爵家の令嬢クラリッサは、婚約者である公爵家のライアンから蔑まれている。
クラリッサは「お前の目は醜い」というライアンの言葉を鵜呑みにし、いつも前髪で顔を隠しながら過ごしていた。
そんなある日、クラリッサは王家主催のパーティーに参加する。
いつも通りクラリッサをほったらかしてほかの参加者と談笑しているライアンから離れて廊下に出たところ、見知らぬ青年がうずくまっているのを見つける。クラリッサが心配して介抱すると、青年からいたく感謝される。
数日後、クラリッサの元になぜか王家からの使者がやってきて……。
✴︎感想誠にありがとうございます❗️
✴︎(承認不要の方)ご指摘ありがとうございます。第一王子のミスでした💦
✴︎ヒロインの実家は侯爵家です。誤字失礼しました😵
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―
物部妖狐
ファンタジー
小さな村にある小さな丘の上に住む治癒術師
そんな彼が出会った一人の女性
日々を平穏に暮らしていたい彼の生活に起こる変化の物語。
小説家になろう様、カクヨム様、ノベルピア様へも投稿しています。
表紙画像はAIで作成した主人公です。
キャラクターイラストも、執筆用のイメージを作る為にAIで作成しています。
更新頻度:月、水、金更新予定、投稿までの間に『箱庭幻想譚』と『氷翼の天使』及び、【魔王様のやり直し】を読んで頂けると嬉しいです。
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる