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スター☆

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「だから言ったでしょ。」



 確かに、操の言う通り。
それなりに広いホールの客席には、数える程の客しかいない。
 今までここまで客入りが悪かったことはなかった。
 開演前から、やる気がなくなる程の少なさだ。



 操は、反対した。
そんな無名の俳優を使っても、絶対に客は増えないって。
でも、俺は信じていた。
 遼平は、絶対にこの役をやりきる…と。
いくら無名でも、いくらキャリアが少なくとも、この役は遼平以外にはないと思ったんだ。



 反対したのは操だけではなかった。
 劇団員のほぼ全員が、遼平を主役に据えることに反対した。
それでも、俺は奴をうちの劇団に引っ張って来た。
そこまで奴に惚れ込んだんだ。



 初日は、本当に酷いものだった。
 大きな舞台に慣れていない遼平は、芝居も散々だった。
 以前見た時とは別人のような大根ぶりだった。
それは、本人も気付いていたらしく、遼平はすっかり気落ちしていた。



 「健さん、やっぱり僕には無理です。
 僕のせいで、客入りも少ないし、僕自身、思うように演技が出来ません。」

 「何を言ってる。まだ一日目だ。
それに、確かに今のおまえは無名だが、お前はそれで終わる人間じゃない。
 絶対にスターになる。それだけの才能がおまえにはあるんだ。」

 「買いかぶりですよ。
 僕にはそんな才能なんて…」

 「お前は俺を侮辱するつもりか?
 俺は今までたくさんの俳優を見て来た。
おまえには絶対に素晴らしい才能がある。
 俺は、自分の目を信じている。
だから、おまえも自分自身を信じるんだ。
 客入りも人の評価も関係ない。
おまえは、ただ、今の役を演じ切るだけで良いんだ!」

 「健さん…」



 俺の気持ちが伝わったのか、腹を割ったのか…
その後、遼平の芝居はどんどん良いものに変わって行った。
それに伴い、客入りも増えていき…



「すごい!満員だ!」

 最終日には、立ち見も出る程の盛況ぶりとなった。



 「だから、言っただろ?
 遼平には才能があるって。」

それには、操も他の劇団員も皆苦笑するばかりだった。
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