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寝正月
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「う、うぅ、頭が痛い、苦しい…だ、誰か、助けてくれ…」
だけど、助けてくれる人などいない…
俺は、今更にして、自分の馬鹿さ加減に打ちのめされた。
***
あれは、年末のことだった。
明日からは正月休みだという解放感からか、俺は、会社の忘年会で、酒を浴びる程飲んだ。
元々うちはそう堅苦しい会社ではないし、本当に楽しい酒を飲んだんだ。
「そろそろ、お開きにするか。」
楽しかった忘年会が終わり、同僚の水野と林と共に、俺は店の外に出た。
ここ数日は冷え込む日が続き、雪が積もっていた。
それを見た俺は、酔った勢いで馬鹿なことを思いついたんだ。
「おい、雪だるま作ろうぜ!」
「雪だるま?やだよ、そんなの…子供じゃあるまいし。」
「普通の雪だるまじゃないぞ。
人間雪だるまだ!」
「人間…雪だるま?なんだ、それ?」
「まぁ、俺に任せろって!」
俺は、水野と林を連れ、路地を進んだ。
路地の先には、割と広い空き地がある。
そこにも良い具合に雪が積もっていた。
「さてと…」
俺は、寒い中、服を脱ぎ捨て、パンツ一丁になってその場に座った。
「まさか、お前が雪だるまになるっていうのか?」
「その通り!」
「さ、雪を集めてくれ!」
つ、冷たい!
酔ってるせいか、服を脱いでもそれほどの寒さは感じなかったけれど、雪が触れるとさすがに冷たい。
だけど、自分で言い出してしまった以上、やめるとは言えない。
水野と林は、はしゃぎながら俺の体に雪をくっつけていく。
そのうち、俺のテンションもだんだん上がり、冷たさも麻痺して来た。
「雪が足りないぞ!もっとだ!」
そのうちに俺の体は、すっぽりと雪に包まれた。
人間雪だるまの完成だ!
俺達のテンションもマックスに達した。
水野と林は何枚も俺の写真を撮り、SNSに送った。
三人でさんざん大笑いをして、俺達は家路に着いた。
その晩は、本当に楽しい一日だったと、満足して眠りに就くことが出来た。
異変が起きたのは、ちょうど新年を迎えた頃だった。
寒くて寒くて震えが止まらない。
布団をかぶって横になったが、寒気は治まることがなかった。
風邪だかインフルだかわからないが、高熱が出ていることだけは間違いない。
思い当たるのは、あの人間雪だるま…
次の日もまたその次の日もなんともなかったのは、潜伏期間だったのか…
(あぁ、なんて馬鹿なことをしてしまったんだ…)
そんな後悔は何の役にも立たない。
俺は、もう二度とあんな馬鹿なことはやらないと、熱にうなされながら誓うのだった。
だけど、助けてくれる人などいない…
俺は、今更にして、自分の馬鹿さ加減に打ちのめされた。
***
あれは、年末のことだった。
明日からは正月休みだという解放感からか、俺は、会社の忘年会で、酒を浴びる程飲んだ。
元々うちはそう堅苦しい会社ではないし、本当に楽しい酒を飲んだんだ。
「そろそろ、お開きにするか。」
楽しかった忘年会が終わり、同僚の水野と林と共に、俺は店の外に出た。
ここ数日は冷え込む日が続き、雪が積もっていた。
それを見た俺は、酔った勢いで馬鹿なことを思いついたんだ。
「おい、雪だるま作ろうぜ!」
「雪だるま?やだよ、そんなの…子供じゃあるまいし。」
「普通の雪だるまじゃないぞ。
人間雪だるまだ!」
「人間…雪だるま?なんだ、それ?」
「まぁ、俺に任せろって!」
俺は、水野と林を連れ、路地を進んだ。
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「さてと…」
俺は、寒い中、服を脱ぎ捨て、パンツ一丁になってその場に座った。
「まさか、お前が雪だるまになるっていうのか?」
「その通り!」
「さ、雪を集めてくれ!」
つ、冷たい!
酔ってるせいか、服を脱いでもそれほどの寒さは感じなかったけれど、雪が触れるとさすがに冷たい。
だけど、自分で言い出してしまった以上、やめるとは言えない。
水野と林は、はしゃぎながら俺の体に雪をくっつけていく。
そのうち、俺のテンションもだんだん上がり、冷たさも麻痺して来た。
「雪が足りないぞ!もっとだ!」
そのうちに俺の体は、すっぽりと雪に包まれた。
人間雪だるまの完成だ!
俺達のテンションもマックスに達した。
水野と林は何枚も俺の写真を撮り、SNSに送った。
三人でさんざん大笑いをして、俺達は家路に着いた。
その晩は、本当に楽しい一日だったと、満足して眠りに就くことが出来た。
異変が起きたのは、ちょうど新年を迎えた頃だった。
寒くて寒くて震えが止まらない。
布団をかぶって横になったが、寒気は治まることがなかった。
風邪だかインフルだかわからないが、高熱が出ていることだけは間違いない。
思い当たるのは、あの人間雪だるま…
次の日もまたその次の日もなんともなかったのは、潜伏期間だったのか…
(あぁ、なんて馬鹿なことをしてしまったんだ…)
そんな後悔は何の役にも立たない。
俺は、もう二度とあんな馬鹿なことはやらないと、熱にうなされながら誓うのだった。
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