101 / 401
かくれんぼ
1
しおりを挟む
(う~…さ、寒い…!)
氷みたいに冷たい北風が、落ち葉を舞い踊らせ、私をも突き刺そうとする。
私は立ち止まり、身を強張らせてじっと耐える。
(早く帰って、温かいものでも食べよう…)
そう思う気持ちとは裏腹に、私は家ではなく公園の方に向かっていた。
寒く薄暗い公園には、当然、人っ子ひとりいない。
足元の落ち葉が、かさかさと音を立てる。
私は公園の中の大きな木に向かっていた。
誰もいないことをもう一度確かめて…
「もういいかい?」
私の小さな声は、風の音にかき消される。
「もういいかい?」
さっきより、少しだけ大きな声でそう言って、振り返る。
返事が返ってこないことはわかってるのに…
馬鹿みたい…
思わず、自嘲めいた笑みがこぼれた。
あの時からもう二十年も経ってるのに…
それでも、私はまだ期待している。
いつか、お母さんをみつけられるんじゃないかって…
そう、あれは、私が小学4年生の頃…今日と同じ、北風の吹く寒い日のことだった。
「ねぇ、公園に行かない?」
「えっ!?こんなに寒いのに?」
「温かくしていけば大丈夫だよ。
かくれんぼしようよ!」
お母さんは、私の首にマフラーをぐるぐる巻きにしてくれた。
「最初は、のんちゃんが鬼ね。
良い?出来るだけゆっくり10数えるんだよ?」
「うん、わかった。」
私はお母さんに言われた通り、出来るだけゆっくりと数を数えた。
「……8…9…10!
もういいかい?」
「もういいよ。」の声はなかったけど、10数えたから私は目を開けて振り返った。
「おかあさん、どこ?」
急に得体の知れない胸騒ぎに襲われた。
「おかあさん!おかあさん!」
私は寒い公園でお母さんを捜し続けた。
でも、どこにもおかあさんの姿はなく…
そのうちに暗くなって来て、私はどうしようもなく心細くて、泣きながら家に戻った。
なぜお母さんが家を出たのか、それはいまだにわからない。
お父さんは元々寡黙な人で、いまだに何も話してくれないから。
手がかりひとつ残さずに、お母さんはいなくなってしまった。
もしかしたら、北風に連れ去られてしまったんじゃないか…
そんな馬鹿馬鹿しいことを考えたりもする。
もしもそうならば…またいつか、北風がおかあさんをこの公園に連れて来てくれるんじゃないか…
そんな夢みたいなことを考えながら、私は寒い公園を後にした。
氷みたいに冷たい北風が、落ち葉を舞い踊らせ、私をも突き刺そうとする。
私は立ち止まり、身を強張らせてじっと耐える。
(早く帰って、温かいものでも食べよう…)
そう思う気持ちとは裏腹に、私は家ではなく公園の方に向かっていた。
寒く薄暗い公園には、当然、人っ子ひとりいない。
足元の落ち葉が、かさかさと音を立てる。
私は公園の中の大きな木に向かっていた。
誰もいないことをもう一度確かめて…
「もういいかい?」
私の小さな声は、風の音にかき消される。
「もういいかい?」
さっきより、少しだけ大きな声でそう言って、振り返る。
返事が返ってこないことはわかってるのに…
馬鹿みたい…
思わず、自嘲めいた笑みがこぼれた。
あの時からもう二十年も経ってるのに…
それでも、私はまだ期待している。
いつか、お母さんをみつけられるんじゃないかって…
そう、あれは、私が小学4年生の頃…今日と同じ、北風の吹く寒い日のことだった。
「ねぇ、公園に行かない?」
「えっ!?こんなに寒いのに?」
「温かくしていけば大丈夫だよ。
かくれんぼしようよ!」
お母さんは、私の首にマフラーをぐるぐる巻きにしてくれた。
「最初は、のんちゃんが鬼ね。
良い?出来るだけゆっくり10数えるんだよ?」
「うん、わかった。」
私はお母さんに言われた通り、出来るだけゆっくりと数を数えた。
「……8…9…10!
もういいかい?」
「もういいよ。」の声はなかったけど、10数えたから私は目を開けて振り返った。
「おかあさん、どこ?」
急に得体の知れない胸騒ぎに襲われた。
「おかあさん!おかあさん!」
私は寒い公園でお母さんを捜し続けた。
でも、どこにもおかあさんの姿はなく…
そのうちに暗くなって来て、私はどうしようもなく心細くて、泣きながら家に戻った。
なぜお母さんが家を出たのか、それはいまだにわからない。
お父さんは元々寡黙な人で、いまだに何も話してくれないから。
手がかりひとつ残さずに、お母さんはいなくなってしまった。
もしかしたら、北風に連れ去られてしまったんじゃないか…
そんな馬鹿馬鹿しいことを考えたりもする。
もしもそうならば…またいつか、北風がおかあさんをこの公園に連れて来てくれるんじゃないか…
そんな夢みたいなことを考えながら、私は寒い公園を後にした。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
Gift
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
リクエストやら記念に書いたSS集です。
すべて、数ページ程の短編ですが、続き物になっているお話もあります。
私や他のクリエイター様のオリキャラを使ったものや、私のお話の番外編もあります。
ショートショートのお茶漬け
rara33
現代文学
お茶漬けのようにサラサラと気軽に楽しめるような、基本5分以内で読めるショートショート集です。
原則一話完結ですが、次章に続く場合はその旨を章タイトルに明記します。
お好きな章からお気軽に読んでいただければ、本当に嬉しいです(^^)
どうぞよろしくお願い申し上げます。
(追記) 毎日1話更新の予定です。
※他の投稿サイトにて本人名義で投稿した拙作を、適宜アレンジしたものです。
※小説家になろう様でも連載中ですが、アルファポリス様掲載分は、女性の読者様向けの作品をメインに投稿させていただくつもりです。
このステータスプレート壊れてないですか?~壊れ数値の万能スキルで自由気ままな異世界生活~
夢幻の翼
ファンタジー
典型的な社畜・ブラックバイトに翻弄される人生を送っていたラノベ好きの男が銀行強盗から女性行員を庇って撃たれた。
男は夢にまで見た異世界転生を果たしたが、ラノベのテンプレである神様からのお告げも貰えない状態に戸惑う。
それでも気を取り直して強く生きようと決めた矢先の事、国の方針により『ステータスプレート』を作成した際に数値異常となり改ざん容疑で捕縛され奴隷へ落とされる事になる。運の悪い男だったがチート能力により移送中に脱走し隣国へと逃れた。
一時は途方にくれた少年だったが神父に言われた『冒険者はステータスに関係なく出来る唯一の職業である』を胸に冒険者を目指す事にした。
持ち前の運の悪さもチート能力で回避し、自分の思う生き方を実現させる社畜転生者と自らも助けられ、少年に思いを寄せる美少女との恋愛、襲い来る盗賊の殲滅、新たな商売の開拓と現実では出来なかった夢を異世界で実現させる自由気ままな異世界生活が始まります。
悪役令嬢?何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く
ひよこ1号
ファンタジー
過労で倒れて公爵令嬢に転生したものの…
乙女ゲーの悪役令嬢が活躍する原作小説に転生していた。
乙女ゲーの知識?小説の中にある位しか無い!
原作小説?1巻しか読んでない!
暮らしてみたら全然違うし、前世の知識はあてにならない。
だったら我が道を行くしかないじゃない?
両親と5人のイケメン兄達に溺愛される幼女のほのぼの~殺伐ストーリーです。
本人無自覚人誑しですが、至って平凡に真面目に生きていく…予定。
※アルファポリス様で書籍化進行中(第16回ファンタジー小説大賞で、癒し系ほっこり賞受賞しました)
※残虐シーンは控えめの描写です
※カクヨム、小説家になろうでも公開中です
若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました
mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。
なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。
不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇
感想、ご指摘もありがとうございます。
なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。
読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。
お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。
稀代の大賢者は0歳児から暗躍する〜公爵家のご令息は運命に抵抗する〜
撫羽
ファンタジー
ある邸で秘密の会議が開かれていた。
そこに出席している3歳児、王弟殿下の一人息子。実は前世を覚えていた。しかもやり直しの生だった!?
どうしてちびっ子が秘密の会議に出席するような事になっているのか? 何があったのか?
それは生後半年の頃に遡る。
『ばぶぁッ!』と元気な声で目覚めた赤ん坊。
おかしいぞ。確かに俺は刺されて死んだ筈だ。
なのに、目が覚めたら見覚えのある部屋だった。両親が心配そうに見ている。
しかも若い。え? どうなってんだ?
体を起こすと、嫌でも目に入る自分のポヨンとした赤ちゃん体型。マジかよ!?
神がいるなら、0歳児スタートはやめてほしかった。
何故だか分からないけど、人生をやり直す事になった。実は将来、大賢者に選ばれ魔族討伐に出る筈だ。だが、それは避けないといけない。
何故ならそこで、俺は殺されたからだ。
ならば、大賢者に選ばれなければいいじゃん!と、小さな使い魔と一緒に奮闘する。
でも、それなら魔族の問題はどうするんだ?
それも解決してやろうではないか!
小さな胸を張って、根拠もないのに自信満々だ。
今回は初めての0歳児スタートです。
小さな賢者が自分の家族と、大好きな婚約者を守る為に奮闘します。
今度こそ、殺されずに生き残れるのか!?
とは言うものの、全然ハードな内容ではありません。
今回も癒しをお届けできればと思います。
異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる