97 / 401
僕の彼女
1
しおりを挟む
(……気持ち良いな。)
特に理由なく始めた朝の散歩…
早朝の空気は、良い具合に冷えていて、頭も体もしゃきっとする。
小鳥たちのさえずり…空に顔を出したばかりの優しい太陽…そよぐ風…
そんな当たり前のものにも、なんとなく心が躍る。
家を出て、住宅街を抜け、大きな公園を一周り。
それが僕の散歩コースだ。
季節柄、公園の中は落ち葉がいっぱいだ。
(……ん?)
ふと目にした光景に、僕は悲鳴を上げ、その場に座り込んでしまった。
こんもりと集められた落ち葉の山から、茶色くて細いゴボウのような足がにょっきりと出ていたからだ。
もしかしたら、さ、殺人事件…!?
恐ろしさのあまり腰が抜けたのか、僕は立ち上がることが出来なかった。
「だ、だ、だれか…誰か~!」
驚きが大きすぎて、声もまともに出ない。
だめだ、こんなんじゃ、誰も来てくれない。
深呼吸をし、もう一度叫んだ。
「だ、誰か、いませんか~!」
まだ小さかったけど、さっきよりは声が出た。
その時、落ち葉の山が急に動き出し…
「ぎゃあーーーー!」
恐怖のあまり、裏返ったおかしな声で叫ぶと、落ち葉の山から女の子が顔を出した。
足と同じ、茶色く日焼けした女の子だ。
年は僕と同じくらいか…
「……どうかしたの?」
「ど、どうかって…ゴ、ゴボウが…」
「ゴボウ?」
女の子は、体に付いた落ち葉を払いながら立ち上がった。
僕をあんなに驚かせたことなどお構いなしに。
「大丈夫?」
「は、はいっ!」
女の子に手を差し伸べられ、情けなくも僕はなんとか立ち上がった。
「何かあったの?」
近くのベンチに並んで座った。
女の子は、そう言って僕の顔を覗き込む。
「だ、だから…落ち葉の山から、ゴボ…じゃない足が出てて、それで…」
「え?あ…そゆこと…」
事態を理解したのか、女の子はくすくすと笑い始めた。
「落ち葉って、着てみたらどんな感じなのかなって。
ん~…なんていうか、さつまいもの気分?」
「は?」
「思ったより、良いもんじゃなかったな。
かさかさだし。
温かくもなんともないし。」
「そ、そうなんだ…」
これが僕と彼女の馴れ初めだった。
特に理由なく始めた朝の散歩…
早朝の空気は、良い具合に冷えていて、頭も体もしゃきっとする。
小鳥たちのさえずり…空に顔を出したばかりの優しい太陽…そよぐ風…
そんな当たり前のものにも、なんとなく心が躍る。
家を出て、住宅街を抜け、大きな公園を一周り。
それが僕の散歩コースだ。
季節柄、公園の中は落ち葉がいっぱいだ。
(……ん?)
ふと目にした光景に、僕は悲鳴を上げ、その場に座り込んでしまった。
こんもりと集められた落ち葉の山から、茶色くて細いゴボウのような足がにょっきりと出ていたからだ。
もしかしたら、さ、殺人事件…!?
恐ろしさのあまり腰が抜けたのか、僕は立ち上がることが出来なかった。
「だ、だ、だれか…誰か~!」
驚きが大きすぎて、声もまともに出ない。
だめだ、こんなんじゃ、誰も来てくれない。
深呼吸をし、もう一度叫んだ。
「だ、誰か、いませんか~!」
まだ小さかったけど、さっきよりは声が出た。
その時、落ち葉の山が急に動き出し…
「ぎゃあーーーー!」
恐怖のあまり、裏返ったおかしな声で叫ぶと、落ち葉の山から女の子が顔を出した。
足と同じ、茶色く日焼けした女の子だ。
年は僕と同じくらいか…
「……どうかしたの?」
「ど、どうかって…ゴ、ゴボウが…」
「ゴボウ?」
女の子は、体に付いた落ち葉を払いながら立ち上がった。
僕をあんなに驚かせたことなどお構いなしに。
「大丈夫?」
「は、はいっ!」
女の子に手を差し伸べられ、情けなくも僕はなんとか立ち上がった。
「何かあったの?」
近くのベンチに並んで座った。
女の子は、そう言って僕の顔を覗き込む。
「だ、だから…落ち葉の山から、ゴボ…じゃない足が出てて、それで…」
「え?あ…そゆこと…」
事態を理解したのか、女の子はくすくすと笑い始めた。
「落ち葉って、着てみたらどんな感じなのかなって。
ん~…なんていうか、さつまいもの気分?」
「は?」
「思ったより、良いもんじゃなかったな。
かさかさだし。
温かくもなんともないし。」
「そ、そうなんだ…」
これが僕と彼女の馴れ初めだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
新世界で… 妖精少女は、ロボットを夢見る
チキンとり
ファンタジー
なろうからのお試しです。
とある事件に巻き込まれ…… 約三年ぐらいの意識不明の寝たきりから目覚めて、ちょっと世間からズレてしまった。
ロボ好き女性主人公が自分の夢を叶える為に、それ系のマニアに近い知識を基にその仲間たちを巻き込んで、がんばる系のファンタジーフルダイブVRMMOです。
狐の声劇台本置場
小狐門(ごんぎつねもん)
ファンタジー
小狐門の書いた台本一覧となります。もし良ければ演じてみてね!( *´꒳`* )
非商用であれば基本的に連絡は不要となります。しかし、配信の際に演じる場合に教えて頂ければ、ニッコニコで聞きに行きます!あと、出来れば『台本タイトルと作者名』を記入していただければ幸いです。
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ハニーローズ ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~
悠月 星花
ファンタジー
「背筋を伸ばして凛とありたい」
トワイス国にアンナリーゼというお転婆な侯爵令嬢がいる。
アンナリーゼは、小さい頃に自分に関わる『予知夢』を見れるようになり、将来起こるであろう出来事を知っていくことになる。
幼馴染との結婚や家族や友人に囲まれ幸せな生活の予知夢見ていた。
いつの頃か、トワイス国の友好国であるローズディア公国とエルドア国を含めた三国が、インゼロ帝国から攻められ戦争になり、なすすべもなく家族や友人、そして大切な人を亡くすという夢を繰り返しみるようになる。
家族や友人、大切な人を守れる未来が欲しい。
アンナリーゼの必死の想いが、次代の女王『ハニーローズ』誕生という選択肢を増やす。
1つ1つの選択を積み重ね、みんなが幸せになれるようアンナリーゼは『予知夢』で見た未来を変革していく。
トワイス国の貴族として、強くたくましく、そして美しく成長していくアンナリーゼ。
その遊び場は、社交界へ学園へ隣国へと活躍の場所は変わっていく……
家族に支えられ、友人に慕われ、仲間を集め、愛する者たちが幸せな未来を生きられるよう、死の間際まで凛とした薔薇のように懸命に生きていく。
予知の先の未来に幸せを『ハニーローズ』に託し繋げることができるのか……
『予知夢』に翻弄されながら、懸命に生きていく母娘の物語。
※この作品は、「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルアップ+」「ノベリズム」にも掲載しています。
表紙は、菜見あぉ様にココナラにて依頼させていただきました。アンナリーゼとアンジェラです。
タイトルロゴは、草食動物様の企画にてお願いさせていただいたものです!
チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~
ふゆ
ファンタジー
私は死んだ。
はずだったんだけど、
「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」
神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。
なんと幼女になっちゃいました。
まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!
エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか?
*不定期更新になります
*誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください!
*ところどころほのぼのしてます( ^ω^ )
*小説家になろう様にも投稿させていただいています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる