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僕の彼女

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(……気持ち良いな。)



 特に理由なく始めた朝の散歩…
早朝の空気は、良い具合に冷えていて、頭も体もしゃきっとする。
 小鳥たちのさえずり…空に顔を出したばかりの優しい太陽…そよぐ風…
そんな当たり前のものにも、なんとなく心が躍る。



 家を出て、住宅街を抜け、大きな公園を一周り。
それが僕の散歩コースだ。
 季節柄、公園の中は落ち葉がいっぱいだ。



 (……ん?)



ふと目にした光景に、僕は悲鳴を上げ、その場に座り込んでしまった。
こんもりと集められた落ち葉の山から、茶色くて細いゴボウのような足がにょっきりと出ていたからだ。
もしかしたら、さ、殺人事件…!?
 恐ろしさのあまり腰が抜けたのか、僕は立ち上がることが出来なかった。



 「だ、だ、だれか…誰か~!」



 驚きが大きすぎて、声もまともに出ない。
だめだ、こんなんじゃ、誰も来てくれない。
 深呼吸をし、もう一度叫んだ。



 「だ、誰か、いませんか~!」



まだ小さかったけど、さっきよりは声が出た。
その時、落ち葉の山が急に動き出し…



「ぎゃあーーーー!」



 恐怖のあまり、裏返ったおかしな声で叫ぶと、落ち葉の山から女の子が顔を出した。
 足と同じ、茶色く日焼けした女の子だ。
 年は僕と同じくらいか…



「……どうかしたの?」

 「ど、どうかって…ゴ、ゴボウが…」

 「ゴボウ?」



 女の子は、体に付いた落ち葉を払いながら立ち上がった。
 僕をあんなに驚かせたことなどお構いなしに。



 「大丈夫?」

 「は、はいっ!」

 女の子に手を差し伸べられ、情けなくも僕はなんとか立ち上がった。



 「何かあったの?」

 近くのベンチに並んで座った。
 女の子は、そう言って僕の顔を覗き込む。



 「だ、だから…落ち葉の山から、ゴボ…じゃない足が出てて、それで…」

 「え?あ…そゆこと…」

 事態を理解したのか、女の子はくすくすと笑い始めた。



 「落ち葉って、着てみたらどんな感じなのかなって。
ん~…なんていうか、さつまいもの気分?」

 「は?」

 「思ったより、良いもんじゃなかったな。
かさかさだし。
 温かくもなんともないし。」

 「そ、そうなんだ…」



これが僕と彼女の馴れ初めだった。
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