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しおりのしおり
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「じゃあ、頼んだわよ!」
「はいはい。」
涼子は手を振りながら去って行き、私も同じように彼女に手を振る。
ちょっとだけ困ったような顔をして。
でも、その表情はある意味『嘘』だ。
ほんの建て前。
本心では、ちょっとウキウキしてる。
私が依頼されたのは、旅のしおり作りだ。
会社の旅好き女子で、年に何度か旅行に行く。
どこに行くか、どんな旅行にするか、そんなことをみんなで話してる時…
誰かが『旅のしおり』のことを口にした。
「しおりなら栞でしょ!」
そう言ったのは涼子だ。
ただ、私の名前が『栞』だということから、私はしおり係にされてしまったのだ。
でも…幸いなことに私はそういう作業が嫌いじゃない。
几帳面な性格だからか、細かい予定を組むのが好きだし、絵を描くことも好き。
子供の頃は壁新聞を作るのにハマってたくらいだから、そういう作業は得意だとも言える。
最初の旅のしおりは皆にとても好評で、絵がうまいとか、可愛いだとか褒められて、私はすっかり味を占めてしまったのだ。
でも、みんなが嫌がるこの作業を、楽しんでやってるなんて思われるのもちょっと恥ずかしいから、私は押し付けられて仕方なくやってるような振りをする。
(今度のはどんな感じにしようかなぁ…)
先日、密かにペンタブを買ったから、今年はイラストも凝ったものが描けそうだ。
考えただけでもウキウキしてくる。
(あ……)
ふと見上げた空には、白い鰯雲が浮かんでた。
(そうだ!表紙にあれを使おう!秋の雰囲気が出るよねぇ…)
鰯雲の空の下、私は浮かれた足取りで帰宅を急いだ。
「はいはい。」
涼子は手を振りながら去って行き、私も同じように彼女に手を振る。
ちょっとだけ困ったような顔をして。
でも、その表情はある意味『嘘』だ。
ほんの建て前。
本心では、ちょっとウキウキしてる。
私が依頼されたのは、旅のしおり作りだ。
会社の旅好き女子で、年に何度か旅行に行く。
どこに行くか、どんな旅行にするか、そんなことをみんなで話してる時…
誰かが『旅のしおり』のことを口にした。
「しおりなら栞でしょ!」
そう言ったのは涼子だ。
ただ、私の名前が『栞』だということから、私はしおり係にされてしまったのだ。
でも…幸いなことに私はそういう作業が嫌いじゃない。
几帳面な性格だからか、細かい予定を組むのが好きだし、絵を描くことも好き。
子供の頃は壁新聞を作るのにハマってたくらいだから、そういう作業は得意だとも言える。
最初の旅のしおりは皆にとても好評で、絵がうまいとか、可愛いだとか褒められて、私はすっかり味を占めてしまったのだ。
でも、みんなが嫌がるこの作業を、楽しんでやってるなんて思われるのもちょっと恥ずかしいから、私は押し付けられて仕方なくやってるような振りをする。
(今度のはどんな感じにしようかなぁ…)
先日、密かにペンタブを買ったから、今年はイラストも凝ったものが描けそうだ。
考えただけでもウキウキしてくる。
(あ……)
ふと見上げた空には、白い鰯雲が浮かんでた。
(そうだ!表紙にあれを使おう!秋の雰囲気が出るよねぇ…)
鰯雲の空の下、私は浮かれた足取りで帰宅を急いだ。
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