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蓮の花
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(あ……雨……)
ここのところ、晴天続きだったせいか、昨日梅雨明け宣言がされたばかりだっていうのに、その次の日に雨とは何とも皮肉だ。
でも、私にとって、それはいやなことじゃない。
明るい晴天よりもこんな風に鬱陶しいお天気の方が、なんだか落ち着く。
だって…
私のココロの中はまさに今、雨降り状態なんだもの。
土砂降りじゃない。
しとしとと降り続く未練がましい雨模様…
最初からわかってた…
彼が本気じゃないことは。
だけど…それでも信じてみたかった。
1%の可能性もないと思いながらも、私は彼を信じたかった。
彼の言いなりになって、私は彼にお金を渡した。
人に言えないような仕事までして、彼に貢ぎ続けた。
「母の手術費が必要なんだ。」
「入院費がたまってるんだ。」
「交通事故を起こしてしまったんだ。」
私は彼に言われるままに、お金を貢ぎ…
そして、彼からの連絡は不意になくなった。
携帯ももう繋がらない。
きっとこうなると思ってた。
だって、いつもこうなんだもの。
なのに、それでも私は「今度こそは違うんじゃないか?」そんな想いに負けてしまう。
(本当に馬鹿だよね…
私…泥水すすりすぎだよね…)
おじいちゃんの顔が頭に浮かぶ。
小さい頃、おじいちゃんにいつも言われた。
「蓮の花になれ。」と…
蓮はどれほど汚い泥水を飲んでも、それに染まることなく、清らかで美しい花を咲かせる素晴らしい花だって…
その言葉がずっと心に残っていたせいか、私は若い頃から泥水ばかりをすすって来た。
自分が辛い目に遭うことが、美しい花を咲かせるためになるように思い込んで…
だけど、私はいまだ美しい花を咲かせることが出来ないでいる。
きっと、これからも咲かせることは出来ないだろう。
私は馬鹿だから、きっと何かを間違えたんだ…
そぼ降る雨の中、私はあてもなく歩いてみた。
雨が少しでも私の中の汚いものを洗い流してくれないか、と…
汚い私は雨に打たれても汚いままだ…
わかってる。
だけど、もしかしたら…
未練がましく、そんなことを考えながら……
ここのところ、晴天続きだったせいか、昨日梅雨明け宣言がされたばかりだっていうのに、その次の日に雨とは何とも皮肉だ。
でも、私にとって、それはいやなことじゃない。
明るい晴天よりもこんな風に鬱陶しいお天気の方が、なんだか落ち着く。
だって…
私のココロの中はまさに今、雨降り状態なんだもの。
土砂降りじゃない。
しとしとと降り続く未練がましい雨模様…
最初からわかってた…
彼が本気じゃないことは。
だけど…それでも信じてみたかった。
1%の可能性もないと思いながらも、私は彼を信じたかった。
彼の言いなりになって、私は彼にお金を渡した。
人に言えないような仕事までして、彼に貢ぎ続けた。
「母の手術費が必要なんだ。」
「入院費がたまってるんだ。」
「交通事故を起こしてしまったんだ。」
私は彼に言われるままに、お金を貢ぎ…
そして、彼からの連絡は不意になくなった。
携帯ももう繋がらない。
きっとこうなると思ってた。
だって、いつもこうなんだもの。
なのに、それでも私は「今度こそは違うんじゃないか?」そんな想いに負けてしまう。
(本当に馬鹿だよね…
私…泥水すすりすぎだよね…)
おじいちゃんの顔が頭に浮かぶ。
小さい頃、おじいちゃんにいつも言われた。
「蓮の花になれ。」と…
蓮はどれほど汚い泥水を飲んでも、それに染まることなく、清らかで美しい花を咲かせる素晴らしい花だって…
その言葉がずっと心に残っていたせいか、私は若い頃から泥水ばかりをすすって来た。
自分が辛い目に遭うことが、美しい花を咲かせるためになるように思い込んで…
だけど、私はいまだ美しい花を咲かせることが出来ないでいる。
きっと、これからも咲かせることは出来ないだろう。
私は馬鹿だから、きっと何かを間違えたんだ…
そぼ降る雨の中、私はあてもなく歩いてみた。
雨が少しでも私の中の汚いものを洗い流してくれないか、と…
汚い私は雨に打たれても汚いままだ…
わかってる。
だけど、もしかしたら…
未練がましく、そんなことを考えながら……
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