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幼馴染と赤い薔薇

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(一体、何がどうなったんだ!?)



おかしい。
なんだかおかしい。
 俺は、元気だけが取り柄だったはずなのに、この鉛みたいに重い体は何なんだ!?
そりゃあまぁ確かにゴールデンウィーク中は遊びほうけたけど、その程度で疲れる俺じゃない。 



 (もしや、悪い病気にでもかかったのか? )



そんなことを考えたら、なんだか気分が悪くなってきた。 



 「すみません。具合が悪いので、早引きさせて下さい。」




それは生まれて初めての早退だった。 
 幼稚園から今まで、俺は、休んだことも早退も一度もなかったのに… 



家に戻ると、俺はベッドの中に倒れこんだ。



どうしよう? 
 病院に行くべきか? 
でも、滅多に行ったことがないから、そう簡単には行けない。 
 気持ちの整理が付かない。 



 不安がさらなる不安を生み出し、食欲もなく、俺はずっとベッドで横になっていた。 
 次の日はついに仕事を休んだ。
 社会人となって、まだ一ヶ月とちょっとで、俺は、休んでしまったんだ。



やっぱりおかしい。 
 俺は、間違いなく病気だ。
それもきっとたちの悪い病気だ。 



 「母さん…悪いんだけど、来てくれるかな?」



こんな時、頼れるのはやっぱり家族だった。 
 社会人になったと同時に始めた一人暮らし… 
あんなに楽しかったのに、こんなことになるなんて… 



母さんに付き添われて病院を転々としたあげく、告げられた病名は適応障害というものだった。



 「そ、それはどんな病気なんですか?
もしかしたら大変な病気なんですか?
 隠さずに教えて下さい!」

 「わかりやすく言うと、五月病です。」

「え、えええ~~~っ!?」

まさか…そんなことがあるはずがない。 
 俺は、昔から元気だし、社会人として働くことも、初めての一人暮らしも楽しくて仕方なかったんだから。 



 俺も母さんも納得出来なかった。 
とりあえず、地元に帰って、地元の病院に行ってみることにした。 



 *



 「あれ?正治じゃないか。」

 「あ…直樹…?」

 実家に戻り、庭でぼんやりしていたら、隣の直樹に声をかけられた。



 「久しぶりだな!
 正治…やつれたみたいだけど…何かあったのか?」

 「うん、まぁ、ちょっとな…」

 「……おい、正治、おまえも手伝えよ。」

 「え?」

 直樹は有無を言わさず、俺をハウスに引っ張って行った。
ハウスの中に咲き誇っていたのは赤い薔薇だ。



 (あぁ……)



その艶やかな光景と薔薇の香りに、俺は昔のことを思い出していた。
まだ子供だった頃、ハウスで遊んで直樹の父さんに良く叱られたっけ…
そんな思い出になぜだか涙がにじむ。



 「は?お前、何泣いてんだ?」

 「泣いてなんかない。」

 「さっさと働けよ!」

 直樹に尻を叩かれ、俺は直樹を手伝った。
 最近は肉体労働をしていなかったせいか、体は悲鳴を上げ、汗が吹き出したけど、俺はそれでも体を動かし続けた。



 「あぁ、終わった~!」

 「お疲れさん!助かったよ、ありがとうな。
ちょっと、うち寄ってけよ。」

 直樹の家で夕食をごちそうになり、ビールを飲んで笑って泣いて大騒ぎして…



次の日、俺はひさしぶりに爽快な気分を感じていた。



 (故郷や幼馴染って、なんかすごいな…)



そんな事を考えながら、俺は大きく伸びをした。

 
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