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「!!…俺はインギーなんて名前じゃない。トレルだ」
感情を押し殺すように、低くつぶやいた。
すると、アズラエルは「おや?」という表情をする。
器はあの最低なインギーのものだが、魂が変わるだけで随分と雰囲気がかわるのだと思ったのだ。
彼の顔に悪戯な笑みが浮かぶ。
「トレル…それがお前の本当の名前か。ふふ…ではこういう遊びをしないか、トレル。私は今とても暇を持て余している。動けないお前と2人きりで、とても退屈をしているんだ。もしお前が私を楽しませてくれる話をすることができたら、お前の望みを1つだけ聞いてやろう。どうだ?」
「契約か?」
「契約じゃない、退屈しのぎの遊びだ」
「………」
傍にいる悪魔が何を考えているのか分からず、トレルは黙り込む。
どうせ気紛れな悪魔の戯言なのだろう。
契約以外の約束を守るとは、たくさんの悪魔を見てきたトレルには到底思えなかった。
「どうした、自信がないのか?せっかく口をきけるようにしてやったのに…」
アズラエルはトレルの唇を、軽く指で撫でる。
「だったら永遠に言葉を失ってしまうか?」
どうする…聞かれてトレルは小さく唇を噛みしめた。
例え悪魔の気紛れだとしても、これ以上悪くなる事はない。
トレルはしばらく考えた後、
「…いいだろう。とっておきの話をしてやる。お前はこの話を聞けば、絶対にそうしたくなるさ」
いい案が浮かんだのか、ゆるく笑う。
「大した自信だな。では、その話とやらを聞かせてもらおうか」
*
ふわり。
暖かいものが、頬に触れた。
《起きなさい・・・起きるのです・・・オルジェ》
柔らかな声に呼びかけられ、眠っていたオルジェはゆっくりと目を開けた。
《いつまでここにいるのです?》
青く長い髪を揺らめかせた赤い瞳の女性が、目を覚ました彼に優しく微笑みかける。
「あんた・・・誰?ここは、どこ?」
オルジェは横たえていた体を起こすと、辺りをぼんやりと見回した。
《ここは意識の世界》
「?」
《あなたはもう随分と長いこと、体から意識を切り離され、この世界で眠りつづけていたのです》
「意識の世界…?言ってる意味が分からないんだけど」
オルジェは女性の話に、怪訝な顔で首を傾げる。
感情を押し殺すように、低くつぶやいた。
すると、アズラエルは「おや?」という表情をする。
器はあの最低なインギーのものだが、魂が変わるだけで随分と雰囲気がかわるのだと思ったのだ。
彼の顔に悪戯な笑みが浮かぶ。
「トレル…それがお前の本当の名前か。ふふ…ではこういう遊びをしないか、トレル。私は今とても暇を持て余している。動けないお前と2人きりで、とても退屈をしているんだ。もしお前が私を楽しませてくれる話をすることができたら、お前の望みを1つだけ聞いてやろう。どうだ?」
「契約か?」
「契約じゃない、退屈しのぎの遊びだ」
「………」
傍にいる悪魔が何を考えているのか分からず、トレルは黙り込む。
どうせ気紛れな悪魔の戯言なのだろう。
契約以外の約束を守るとは、たくさんの悪魔を見てきたトレルには到底思えなかった。
「どうした、自信がないのか?せっかく口をきけるようにしてやったのに…」
アズラエルはトレルの唇を、軽く指で撫でる。
「だったら永遠に言葉を失ってしまうか?」
どうする…聞かれてトレルは小さく唇を噛みしめた。
例え悪魔の気紛れだとしても、これ以上悪くなる事はない。
トレルはしばらく考えた後、
「…いいだろう。とっておきの話をしてやる。お前はこの話を聞けば、絶対にそうしたくなるさ」
いい案が浮かんだのか、ゆるく笑う。
「大した自信だな。では、その話とやらを聞かせてもらおうか」
*
ふわり。
暖かいものが、頬に触れた。
《起きなさい・・・起きるのです・・・オルジェ》
柔らかな声に呼びかけられ、眠っていたオルジェはゆっくりと目を開けた。
《いつまでここにいるのです?》
青く長い髪を揺らめかせた赤い瞳の女性が、目を覚ました彼に優しく微笑みかける。
「あんた・・・誰?ここは、どこ?」
オルジェは横たえていた体を起こすと、辺りをぼんやりと見回した。
《ここは意識の世界》
「?」
《あなたはもう随分と長いこと、体から意識を切り離され、この世界で眠りつづけていたのです》
「意識の世界…?言ってる意味が分からないんだけど」
オルジェは女性の話に、怪訝な顔で首を傾げる。
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