上 下
134 / 291
scene 8

しおりを挟む
「ケイト…ケイト……」

 「な…オ…オルジェ!
どうして、ここへ?!」

 目を覚ましたケイトは、オルジェの姿に驚いた様子を見せた。



 「どうしたんだ?ケイト?」

 「オルジェ……あんた…大丈夫なの?」

 「大丈夫?あぁ…俺が変な行動をしたってことだな?
それなら大丈夫だ。
 悪魔はもう離れた…」

 「離れた?
そんなはずないわ!」

 「それはどういうことなんだ?」

 「あ……いえ、なんでもないの。
それより、オルジェ、あんた一人でここへ?」

 「いや、トレルと一緒だ。」

 「じゃ、なんでオルジェだけがここに?」

オルジェは、ケイトから急に目を逸らし、俯いたまま、ゆっくりと口を開いた。



 「……それは……ケイトに会いたかったから……」

 「な、な、何を…!」

 「実は、トレルの具合がよくないんだ。
それで医者の所へ来たんだけど、もしかしたらそろそろケイトが帰って来る頃じゃないかと思ったらたまらなくなって…それで、探しに来たら、運良くみつけることが出来て…」

 「あ!そういえばリンクは?リンクがいないわ!」

 「大丈夫さ、リンクならトレルと一緒だ。」

 「トレルと?なぜ、そんなことを…?」

 「おまえと二人っきりで話がしたかったから…」

 「話?リンクがいたらまずい話なの?」

 「ケイト……お、俺、ケイトのことが好きなんだ!」

まっすぐにみつめてそう言ったオルジェに、ケイトの顔色は急激に変わった。



 「う、嘘よ、そんなの!
おかしいわ。オルジェは今まで一言だってそんなこと…あ…」

 不意に近付いて来たかと思うと、オルジェの唇が、ケイトの唇を塞いだ。



 「や…やめて!オルジェ、どういうつもりなの!?」

 「ケイト、俺のことが嫌いなのか?」

 「そうじゃないけど…オルジェはそんなことは…」

ケイトの瞳には恐れと疑いの色が宿っていた。



 「ケイト……
おまえ、最近変わったよな…そう、ランディに出会ってからだ。
ランディのことが好きなのか?
もしかしたら、おまえがランディにとられるんじゃないかって、俺…すごく不安になって…
その時、俺…自分の気持ちにやっと気が付いたんだ。
ケイトのことを…俺はずっとケイトのことを愛してたんだって…」

 「オルジェ…」

 「やっぱりランディの方が良いのか?
あいつの方がカッコいいから?」

 「そ、そんなことないよ…
私もずっとオルジェのこと…す、好き……」

ケイトは瞳を伏せ、恥ずかしそうにそう言った。



 「本当なのか?本当に…あぁ、ケイト…!」

オルジェは弾けた笑顔でケイトを抱き締め、再び唇を合わせた。
 今度はケイトもオルジェに抗うことはなかった。



 「ケイト…俺…不安なんだ…
怖いんだ…
ケイト…」

 「オルジェ、どうしたのよ、一体…」

オルジェの唇は何度もケイトの唇を求めた。
やがて、その唇はケイトの首筋に這う。



 「いやっ、オルジェ…
これ以上は…」

 「ケイト…愛してる…ケイト…
もう止められないよ…」

 「オ…ルジェ…だ…だめ…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ガチャで破滅した男は異世界でもガチャをやめられないようです

一色孝太郎
ファンタジー
 前世でとあるソシャゲのガチャに全ツッパして人生が終わった記憶を持つ 13 歳の少年ディーノは、今世でもハズレギフト『ガチャ』を授かる。ガチャなんかもう引くもんか! そう決意するも結局はガチャの誘惑には勝てず……。  これはガチャの妖精と共に運を天に任せて成り上がりを目指す男の物語である。 ※作中のガチャは実際のガチャ同様の確率テーブルを作り、一発勝負でランダムに抽選をさせています。そのため、ガチャの結果によって物語の未来は変化します ※本作品は他サイト様でも同時掲載しております ※2020/12/26 タイトルを変更しました(旧題:ガチャに人生全ツッパ) ※2020/12/26 あらすじをシンプルにしました

没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。 亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。 さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。 南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。 ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

元聖女だった少女は我が道を往く

春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。 彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。 「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。 その言葉は取り返しのつかない事態を招く。 でも、もうわたしには関係ない。 だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。 わたしが聖女となることもない。 ─── それは誓約だったから ☆これは聖女物ではありません ☆他社でも公開はじめました

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...