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scene 2

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「当時はまだ特に結界もなにも張ってなかったし、ボク達の姿も見えたからな。
どんな奴でも村に入ろうと思えば入れた時代のことなのさ。」

「結局、犯人も宝物もいまだみつからないままです。
その後、二度とそんなことにならないようにと二つの村には強力な結界が張られました。
特に悪魔にはどんなことをしても入れないようにしたのです。
それからの長い間が過ぎ、何事もなく平和な時が流れ、いつしか私達の姿は人間には見えなくなっていました。
そんなある時、『見える』人間がどういう方法を使ったのかはわかりませんが村にやってきたのです。
彼は善良な人間のようだったので、皆でもてなしました。
ところが、数日経ったある日、悲劇は突然起こったのです。
その人間が宝を持ち出し、以前と同じように村に火をつけ、妖精共々焼き尽くしたのです。」

ティンガは一点をみつめ、冷静に話していたが、心の中はそうではないだろうことはオルジェにもすぐにわかった。



「その日、たまたま村を出ていた者が一人だけいた。
その男が村に帰ろうとしていると、見えない橋の入り口付近に人間が倒れているのをみつけたんだ。
近寄ってみると、その人間はすでに死んでいた。
男は胸騒ぎを感じ村へ行ってみると、そこは生き物のまったくいない一面の焼け野原になっていた…」

「……なんてひどいことを…!
だから、皆、人間を恐れてるんだな?」

「あぁ、もうずいぶん昔の話だし、この村がやられたわけじゃないからイメージとして怖がってるだけだけどな。」

「それで、宝はみつかったのか?」

「いえ…死んでいた人間の男は何も持っていなかったのです。
何か急ないさかいでもあったのか…詳しいことは何一つわからないのです。」

「そうか…しかし、たまたま村を出てたなんて運の良い男もいたもんだな。」

リンクはどこか寂しげな笑みを浮かべた。



「その男は、その後一人でこの村にやって来た。
そして、結婚をし息子が二人生まれた。
息子達には幼い頃から、村を守るように…宝物を守るようにと言い聞かせ…
そして、弟はこの村の村長になった…」

「……ってことは、その男の人はリンクとティンガのお父さんってことか!?」

「そういうこと。」

「そうだったのか…」

「実は、それだけではないのです。
万が一にもその宝が一つ所に集まってはとてもまずいことになるのです。
まさかとは思いますが、万一、盗まれた宝を持っているのが一人の人物だとしたら…
その者に、ここの宝が奪われてしまったら、それこそ大変なことになってしまうのです。」 
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