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「そう警戒なさるな、若いの。ワシの名はフォーラス。お前さんなら、この名を一度は耳にした事があろう?」
白く長い顎髭を右手で撫でながら、老人は名乗った。
「…あんたも物好きだな。わざわざコンジュラシオンの俺に、声をかけてくるとは。悪魔の騎士・フォーラス」
それを聞いて、老人は楽しそうに笑う。
「お前さんの実力の程は、仲間内でも有名だ。ワシらはお前さんには逆らえん。そこでひとつ、困っておる時に恩を売っておくのも悪くないと思ってな」
「恩?契約の間違いじゃないのか」
「いや、恩だ。ワシの得意分野は失せものを探し当てる事…」
トレルは呆れたタメ息をついた。
「恩を売って何をしようとしているのかは知らんが、もし探しものが見つかったとしても、俺はお前に何ひとつ与える事はないからな」
「分かっておるとも」
「それから、この事をイアンに告げ口するな。牧師は俺が悪魔と口をきくのを、何よりも嫌がるからな」
「そのようだな」
悪魔はトレルの革の手袋をはめた、左手を指差して笑う。
「お前の主人は用心深い。お前が悪魔に魅入られぬよう、聖なる印(しるし)を刻むくらいに」
見えもしない印の存在を言い当てられ、トレルはギョッとした。
疑心は拭えなかったが、トレルは悪魔の能力の高さを知っていたので、申し出を受ける事にした。
白く長い顎髭を右手で撫でながら、老人は名乗った。
「…あんたも物好きだな。わざわざコンジュラシオンの俺に、声をかけてくるとは。悪魔の騎士・フォーラス」
それを聞いて、老人は楽しそうに笑う。
「お前さんの実力の程は、仲間内でも有名だ。ワシらはお前さんには逆らえん。そこでひとつ、困っておる時に恩を売っておくのも悪くないと思ってな」
「恩?契約の間違いじゃないのか」
「いや、恩だ。ワシの得意分野は失せものを探し当てる事…」
トレルは呆れたタメ息をついた。
「恩を売って何をしようとしているのかは知らんが、もし探しものが見つかったとしても、俺はお前に何ひとつ与える事はないからな」
「分かっておるとも」
「それから、この事をイアンに告げ口するな。牧師は俺が悪魔と口をきくのを、何よりも嫌がるからな」
「そのようだな」
悪魔はトレルの革の手袋をはめた、左手を指差して笑う。
「お前の主人は用心深い。お前が悪魔に魅入られぬよう、聖なる印(しるし)を刻むくらいに」
見えもしない印の存在を言い当てられ、トレルはギョッとした。
疑心は拭えなかったが、トレルは悪魔の能力の高さを知っていたので、申し出を受ける事にした。
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