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あれから…

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「執務の方は慣れましたか?」

 「いや…なかなか慣れないな。
 退屈だし、窮屈だ。
なんで俺みたいなのが王家に生まれたんだろうな。」

 「きっと……運命……なのでしょうね。」

 「運命……?」



 亜里沙は、目を伏せたまま、まるで他人事のようにそう言った。



そういえば、亜里沙はいまだに何かを隠している。
それは主に自分に関わることだ。
 出身は、地図にも載らない北の小国だとしか教えてくれない。
しかも、なぜユーロジアに来たのか、どうやって来たのか、家族のこと…そういうことはまだ何も教えてはくれない。
 彼女が『運命』という言葉を発した時、俺はふとそのことを考えた。



 亜里沙にも、運命だから諦めるしかないと思うようなことがあったのではないか…と。
そうでなくとも、ユーロジアに来てからの彼女はまさに運命に翻弄されている。
 花屋で働いていたところを俺の玩具として城に連れて来られ、そうかと思えばアドルフに見初められて塔に幽閉され、そこからようやく解放されてアドルフの側室になったと思ったら、そのアドルフが死んでしまい…



普通なら、その時点で故郷へ戻りたいと思うのではないだろうか?
だが、彼女は一言もそんなことは言わなかった。



おそらく…何か帰れない事情があるのだと思う。
いつか、そんなこともすべて打ち明けてくれる日が来るのだろうか…?
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