205 / 277
別離
side 亜里沙
しおりを挟む
「亜里沙!」
ゆっくりと目を開く…
私の目に映ったのは、心配そうなリュシアン様の顔だった。
「リュシアン様…ここは…?」
そう訊ねてすぐに、そこがお城の私の部屋だと気付いた。
「ここはおまえの部屋だ。」
どうしたんだろう?
私…屋敷の方にいたはずなのに…
そう思った時、血に染まったアドルフ様の姿が頭を過り、心臓が早鐘を打ち出した。
「あ、アドルフ様…!!」
思わず大きな声を出してしまった。
だけど、叫んだ後で気が付いた。
そう…私は、今、眠っていた。
(そうか、あれは夢だったんだ!
私…怖い夢を見てたんだわ!)
そう思ったら、ほっとした。
ほっとして、なんだかおかしくなって、笑いが込み上げて来るのを懸命に押さえた。
以前もこんなことがあった。
怖い夢を見て、メアリーさん達を起こしてしまって…
だけど……
リュシアン様はとても沈んだ表情で、悲しそうに眼を伏せて首を振られた。
その動作を見た時、私はとても不安な気持ちを感じた。
「……リュシアン様…どういう意味ですか?」
私が訊ねると、リュシアン様はじっと私の目をみつめられた。
「覚えていないのか?」
「覚えてないって…何をです?」
また鼓動が速くなった。
なにかとても不吉な予感がして、リュシアン様の返事を訊くのがとても怖かった。
「アドルフは死んだ…」
「え…?今、なんと…?」
「アドルフは…この世にはもういない…」
(嘘……アドルフ様が刺されたのは、ただの夢…そう、とてもいやな夢…あれは夢なのよ!)
「嘘です!アドルフ様は生きてらっしゃいます!
今はきっと私の屋敷に…」
「良いか、亜里沙…すでに葬儀も済んだ…
アドルフだけではない…ジゼルも死んだ…」
「な、なんですって…?」
鼓動がさらに速くなる。
アドルフ様だけじゃなく、ジゼル様までが亡くなられた?
そんな馬鹿な…
リュシアン様は事の顛末をゆっくりと話して下さった。
アドルフ様は、私をかばったせいでジゼル様に刺し殺され、ジゼル様は次の日、近くの湖に浮かんでいるのが発見された…と。
おそらくは、罪の意識から自死されたのだろうということだった。
私は、アドルフ様の傍らに倒れたまま、三日間目を覚まさなかったのだと。
ゆっくりと目を開く…
私の目に映ったのは、心配そうなリュシアン様の顔だった。
「リュシアン様…ここは…?」
そう訊ねてすぐに、そこがお城の私の部屋だと気付いた。
「ここはおまえの部屋だ。」
どうしたんだろう?
私…屋敷の方にいたはずなのに…
そう思った時、血に染まったアドルフ様の姿が頭を過り、心臓が早鐘を打ち出した。
「あ、アドルフ様…!!」
思わず大きな声を出してしまった。
だけど、叫んだ後で気が付いた。
そう…私は、今、眠っていた。
(そうか、あれは夢だったんだ!
私…怖い夢を見てたんだわ!)
そう思ったら、ほっとした。
ほっとして、なんだかおかしくなって、笑いが込み上げて来るのを懸命に押さえた。
以前もこんなことがあった。
怖い夢を見て、メアリーさん達を起こしてしまって…
だけど……
リュシアン様はとても沈んだ表情で、悲しそうに眼を伏せて首を振られた。
その動作を見た時、私はとても不安な気持ちを感じた。
「……リュシアン様…どういう意味ですか?」
私が訊ねると、リュシアン様はじっと私の目をみつめられた。
「覚えていないのか?」
「覚えてないって…何をです?」
また鼓動が速くなった。
なにかとても不吉な予感がして、リュシアン様の返事を訊くのがとても怖かった。
「アドルフは死んだ…」
「え…?今、なんと…?」
「アドルフは…この世にはもういない…」
(嘘……アドルフ様が刺されたのは、ただの夢…そう、とてもいやな夢…あれは夢なのよ!)
「嘘です!アドルフ様は生きてらっしゃいます!
今はきっと私の屋敷に…」
「良いか、亜里沙…すでに葬儀も済んだ…
アドルフだけではない…ジゼルも死んだ…」
「な、なんですって…?」
鼓動がさらに速くなる。
アドルフ様だけじゃなく、ジゼル様までが亡くなられた?
そんな馬鹿な…
リュシアン様は事の顛末をゆっくりと話して下さった。
アドルフ様は、私をかばったせいでジゼル様に刺し殺され、ジゼル様は次の日、近くの湖に浮かんでいるのが発見された…と。
おそらくは、罪の意識から自死されたのだろうということだった。
私は、アドルフ様の傍らに倒れたまま、三日間目を覚まさなかったのだと。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
貴方様の後悔など知りません。探さないで下さいませ。
ましろ
恋愛
「致しかねます」
「な!?」
「何故強姦魔の被害者探しを?見つけて如何なさるのです」
「勿論謝罪を!」
「それは貴方様の自己満足に過ぎませんよ」
今まで順風満帆だった侯爵令息オーガストはある罪を犯した。
ある令嬢に恋をし、失恋した翌朝。目覚めるとあからさまな事後の後。あれは夢ではなかったのか?
白い体、胸元のホクロ。暗めな髪色。『違います、お許し下さい』涙ながらに抵抗する声。覚えているのはそれだけ。だが……血痕あり。
私は誰を抱いたのだ?
泥酔して罪を犯した男と、それに巻き込まれる人々と、その恋の行方。
★以前、無理矢理ネタを考えた時の別案。
幸せな始まりでは無いので苦手な方はそっ閉じでお願いします。
いつでもご都合主義。ゆるふわ設定です。箸休め程度にお楽しみ頂けると幸いです。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる