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肩透かし

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見知らぬ男が狂気に満ちた目をして、私に向かって突進してくる。
 手には、鋭く光る剣を握って…



甲高い悲鳴…



(殺される…)



 私は恐怖のあまり、動くことも出来ずに目を瞑る…



赤い赤い赤い……
赤い血が、どんどん広がっていく…
倒れた男性の金色の髪を赤く染めながら…



「いやーーーーっっ!」



 自分の悲鳴で目が覚めた。
どくどくと、脈打つ血管…



(夢……)



 「亜里沙様!なにかあったのですか!?」

 「亜里沙様、ご無事ですか!?」



 駆け付けてくれたメアリーさんとアンナさんに、頭を下げた。



 「ごめんなさい、怖い夢を見ただけなの…」

 「そうでしたか。なにかお薬でもお持ちしましょうか?」

 「いいえ、大丈夫です。あ…お水を下さい。」



 冷たい水を飲んで、少し気分が落ち着いた。



だけど、この夢…
確か、あの塔に行った時に見た夢とよく似ている。
ううん、似ているんじゃなくて同じ夢だ。



 「ごめんなさいね。もう大丈夫だから…」

 外は、まだ薄暗かった。
 柱の時計は、5時過ぎを指していた。



 起きるにはまだ早い。



 (大丈夫、大丈夫…あんなのただの夢だから…)



 私は自分にそう言い聞かせて、そっと目を閉じた。


 
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