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絶望と歌声

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 「亜里沙様、もういいかげんに落ち着いて下さい。」

 「……あなたに、私の気持ちなんてわからないわ!」



 今日の授業も最悪のものだった。
 私はまるで自分がAV女優にでもなったような気がした。
いくら大切な壺を割ったからといって、私はどうしてこんな大変なことを受け入れてしまったんだろう。
 申し訳ないけど、ジェームスさんや神父さんになんとかしてもらえば良かった。
 私は何もわかってなかったんだ。
メンタルだって、決して強くはない。
そんな私に、王子の側室なんて、務まるはずなかったのに…



だけど、今更そんなことを言ってももう遅い…
私はすでに選択してしまったんだから。



 状況は絶望的だとしか言えない。
だから、涙が溢れて来る。
 私には、もう泣くことしか出来ないから。



 「亜里沙様、少しでもなにかお召し上がりになって下さい。」

 「食べたくない!」



そう…メアリーさんとアンナさんへ反抗するくらいしか発散の方法はない。



せめて、この塔から出たい…!
こんなところにいるだけでもストレスはたまるのに、あんな授業を受けさせられたら、いつか私はおかしくなってしまう…



(あ……)



その時、響きのある男性の歌声が風に乗って聞こえて来た。
なんだろう?楽器の音色も聞こえる…



私は壁際に歩き、じっと耳を澄ませた。
ハープのような音色に、澄んだ歌声が重なって…あ、歌ってるのは二人だ。
 私はふと歌詞に耳を傾けた。
それは、ある旅人の話だった。
 退屈な故郷を捨て、夢を持って見知らぬ土地に旅をして、恋をしたり、ふられたり、騙されたり…
そんな旅人が最後には捨てたはずの故郷に想いを寄せるというストーリーだった。
いつの間にか、私は泣くのも忘れ、その歌声に聞き入っていた。
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