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取り引き

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「しかし……何度も言うが、明日はジゼルとの婚礼なのだぞ。
そんな時に側室とはいくらなんでも…
せめて、数か月でも経ってからではどうだ?」

 「だめです!
そんなことをしては、リュシアンに汚されてしまいます。」

 「だ、だが、元々はリュシアンの女なのだろう?
そんな者にこだわらずとも、側室ならいくらでも…」

 「あの女じゃないとだめなんです!」



 私は苛々とし、自分でも驚くような感情的な声を出していた。



 「アドルフ…本当にどうしたのだ?
おまえともあろう者がそのようなことを言い出すとは…」

 「私は今まで陛下に逆らうようなことはしてこなかったはずです。
なにか、望みを言ったこともない。
ですから、どうかこの度のことだけは…」

 「残念だが、それはならぬ…」



その言葉に、私は絶望した。
ならば、私も最後の手を出すまでだ。



 「……どうしてもですか?」

 「あぁ、おまえの望みに応えることは出来ぬ。」

 「……そうですか、わかりました。
ならば、私は明日ジゼルとの婚礼は致しません。」

 「な、なんだと…!?
そ、そんな子供のようなことを…」



 陛下の顔色が変わった。
 瞳には激しい怒りの色が宿っている。
しかし、私はそんなことではひるまなかった。



 「私はあの女のことで頭がどうにかしてしまったようです。
 私の願いが叶わないのなら、私はもう生きていても仕方ありません。
 塔のてっぺんからこの身を投げましょう。」

 「ア、アドルフ…なんということを…!」



 陛下のこめかみには青い筋が浮き上がり、握りしめた拳がわなわなと震えていた。
 陛下は本気でお怒りになられているようだ。
しかし、そんなことは構わない。
 今のことは脅しでもなんでもない…私は本気で言ったのだから。
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