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運命の皮肉

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「アドルフ様、ジゼル様がお探しでしたよ。」

 「……そうか。」



 全くわずらわしいことだ。
どうせ、たいした用事ではなかろうに…



今、戻って来たばかりだが、また散歩にでも行こうかと思ったその時…
私の足は、凍り付いてしまったかのようにその場から動けなくなった。



 (な、なぜだ……!?)



 私の心臓は大きく飛び跳ね、胸を突き破って飛び出してしまいそうだった。



 廊下の向こう側には、侍女に着いて歩く貴族風の男と一人の女がいた。
それは、一目で異国の者とわかる女だ。



だが、それだけではない…



どれほど見た目が変わろうと、私にはすぐにわかったのだ。



その女が、アリシアだということが…



(な、なぜ、アリシアがこんなところに…!?)



 「あ、アリ……」

 「アドルフ様!」



 声をかけようとした時、背中に聞き覚えのある声が響いた。
 振り返ると、そこにはジゼルとランジャール王国のハミルトン陛下がいた。



 「陛下……」



アリシアのことは気にかかりながら、陛下を前にしてその場から動くわけにも行かず、私は小さくなるアリシアの後ろ姿を切ない想いで見送った。
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