140 / 171
side 和彦
4
しおりを挟む
*
「そうだったんですか……
お疲れ様でした。
それにしても、あんなに俺のことを嫌ってたお母さんが急に戻られるなんて、なんだか信じられない気がします。」
「俺もなんだ。
美幸が働いてるのを見て、母さんはなにかを感じてたようだし、多分、店でも美幸のことを良く言われたんだと思う。
だから、機嫌が良かったのは事実だけど、いくらなんでもあんなにすぐに帰るのはおかしい。
荷物だってここに置いたままだからな。
でも、さっき見てみたら、置いてあった荷物は下着や着替えが少しあるだけだから、絶対に必要ってわけでもない。
俺もあの豹変ぶりは怪しいと思ってしばらく改札で待ってたんだけど、やっぱり母さんは出てはこなかった。
それに、俺に美幸のことを頼むって言ったんだ。
おまえと美幸のことを許したわけじゃないだろうけど、少し様子をみようと思ったんじゃないか。
俺に二人のことを見張れってことなのかもしれないな。」
「見張るだなんて……和彦さんに見張られてたんじゃ、俺、悪いこと出来ないな。」
シュウはそう言って、笑った。
俺も、釣られて一緒に笑った。
母さんが帰ったことで、心の重石が取れたというのか、なんだか気持ちが晴れたせいかもしれない。
だが、まだ気が抜けるわけじゃない。
母さんは戻ったら父さんにこのことを話すだろうし、今後もまだごたごたが続くことは間違いない。
ただ、母さんは、シュウのことを多少は認めてくれたのかもしれない。
今までバイトをしたこともなく、人と関わること自体を嫌ってひきこもりに近い生活をしていた美幸が、あんなに生き生きと働いていることには、シュウの影響も大きいと考えてくれたのかもしれない。
とにかく、なんとかして二人を説得し、今しばらくはこの生活を続けられるようにしてやることが俺の勤めだと思う。
近いうちに俺はなんらかの仕事を始め、シュウをそこで雇うことにしようと考えている。
そうやって、シュウが収入を得られるようになることが、二人の仲を認めてもらう第一歩になると思うから。
やがて、シュウが昼ご飯の準備を始めた頃、不意に俺の携帯が鳴った。
画面に出たのは美幸の番号だった。
こんな時間に美幸からシュウにではなく俺に電話なんて…
まさか、なにかあったのか…!?
俺の鼓動は急に速さを増した。
「そうだったんですか……
お疲れ様でした。
それにしても、あんなに俺のことを嫌ってたお母さんが急に戻られるなんて、なんだか信じられない気がします。」
「俺もなんだ。
美幸が働いてるのを見て、母さんはなにかを感じてたようだし、多分、店でも美幸のことを良く言われたんだと思う。
だから、機嫌が良かったのは事実だけど、いくらなんでもあんなにすぐに帰るのはおかしい。
荷物だってここに置いたままだからな。
でも、さっき見てみたら、置いてあった荷物は下着や着替えが少しあるだけだから、絶対に必要ってわけでもない。
俺もあの豹変ぶりは怪しいと思ってしばらく改札で待ってたんだけど、やっぱり母さんは出てはこなかった。
それに、俺に美幸のことを頼むって言ったんだ。
おまえと美幸のことを許したわけじゃないだろうけど、少し様子をみようと思ったんじゃないか。
俺に二人のことを見張れってことなのかもしれないな。」
「見張るだなんて……和彦さんに見張られてたんじゃ、俺、悪いこと出来ないな。」
シュウはそう言って、笑った。
俺も、釣られて一緒に笑った。
母さんが帰ったことで、心の重石が取れたというのか、なんだか気持ちが晴れたせいかもしれない。
だが、まだ気が抜けるわけじゃない。
母さんは戻ったら父さんにこのことを話すだろうし、今後もまだごたごたが続くことは間違いない。
ただ、母さんは、シュウのことを多少は認めてくれたのかもしれない。
今までバイトをしたこともなく、人と関わること自体を嫌ってひきこもりに近い生活をしていた美幸が、あんなに生き生きと働いていることには、シュウの影響も大きいと考えてくれたのかもしれない。
とにかく、なんとかして二人を説得し、今しばらくはこの生活を続けられるようにしてやることが俺の勤めだと思う。
近いうちに俺はなんらかの仕事を始め、シュウをそこで雇うことにしようと考えている。
そうやって、シュウが収入を得られるようになることが、二人の仲を認めてもらう第一歩になると思うから。
やがて、シュウが昼ご飯の準備を始めた頃、不意に俺の携帯が鳴った。
画面に出たのは美幸の番号だった。
こんな時間に美幸からシュウにではなく俺に電話なんて…
まさか、なにかあったのか…!?
俺の鼓動は急に速さを増した。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜
ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました
誠に申し訳ございません。
—————————————————
前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。
名前は山梨 花。
他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。
動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、
転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、
休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。
それは物心ついた時から生涯を終えるまで。
このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。
—————————————————
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
異世界でゆるゆる生活を満喫す
葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。
もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。
家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。
ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
転生エルフさんは今日も惰眠を貪ります
白波ハクア
ファンタジー
とある真っ黒な会社に入社してしまった無気力主人公は、赤信号をかっ飛ばしてきた車に跳ねられて死亡してしまった。神様によってチート能力満載のエルフとして、剣と魔法の異世界に転生した主人公の願いはただ一つ。「自堕落を極めます」
どこまでもマイペースを貫く主人公と、それに振り回される魔王達の異世界ファンタジーコメディー開幕です。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
実話怪談物語 ~しんいち君と霊感少女幽子さんの実話を元にした本格心霊ミステリー~
しんいち
ミステリー
オカルトに魅了された主人公、しんいち君は、ある日、霊感を持つ少女「幽子」と出会う。彼女は不思議な力を持ち、様々な霊的な現象を感じ取ることができる。しんいち君は、幽子から依頼を受け、彼女の力を借りて数々のミステリアスな事件に挑むことになる。
彼らは、失われた魂の行方を追い、過去の悲劇に隠された真実を解き明かす旅に出る。幽子の霊感としんいち君の好奇心が交錯する中、彼らは次第に深い絆を築いていく。しかし、彼らの前には、恐ろしい霊や謎めいた存在が立ちはだかり、真実を知ることがどれほど危険であるかを思い知らされる。
果たして、しんいち君と幽子は、数々の試練を乗り越え、真実に辿り着くことができるのか?彼らの冒険は、オカルトの世界の奥深さと人間の心の闇を描き出す、ミステリアスな物語である。
【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。
みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!
沢野 りお
ファンタジー
【書籍化します!】2022年12月下旬にレジーナブックス様から刊行されることになりました!
定番の転生しました、前世アラサー女子です。
前世の記憶が戻ったのは、7歳のとき。
・・・なんか、病的に痩せていて体力ナシでみすぼらしいんだけど・・・、え?王女なの?これで?
どうやら亡くなった母の身分が低かったため、血の繋がった家族からは存在を無視された、みそっかすの王女が私。
しかも、使用人から虐げられていじめられている?お世話も満足にされずに、衰弱死寸前?
ええーっ!
まだ7歳の体では自立するのも無理だし、ぐぬぬぬ。
しっかーし、奴隷の亜人と手を組んで、こんなクソ王宮や国なんか出て行ってやる!
家出ならぬ、王宮出を企てる間に、なにやら王位継承を巡ってキナ臭い感じが・・・。
えっ?私には関係ないんだから巻き込まないでよ!ちょっと、王族暗殺?継承争い勃発?亜人奴隷解放運動?
そんなの知らなーい!
みそっかすちびっ子転生王女の私が、城出・出国して、安全な地でチート能力を駆使して、ワハハハハな生活を手に入れる、そんな立身出世のお話でぇーす!
え?違う?
とりあえず、家族になった亜人たちと、あっちのトラブル、こっちの騒動に巻き込まれながら、旅をしていきます。
R15は保険です。
更新は不定期です。
「みそっかすちびっ子王女の転生冒険ものがたり」を改訂、再up。
2021/8/21 改めて投稿し直しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる