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虹企画1周年記念SS
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「ごめんな…ノーマン。
俺が悪かったわ…」
しばらくしてマールがぽつりと呟いた。
『そんなことはもう良い。
それより、明日から早速壷を探してみよう。』
「え…でも、その可能性は低いって…」
『今の所、それ以外に案がないのだから仕方がないじゃないか。』
「ほんまにごめんな…」
*
次の日から、ショーンに案内を頼み、マールは壷探しを始めた。
ショーンには詳しい説明はせず、ただ変わった壷を探してるとだけ伝えた。
しかし、変わった壷などそうそうあるわけもない。
ショーンは仕事も休んで遠くの町までマールを案内したが、一週間経っても思うような壷はやはり発見できなかった。
「ごめんなぁ、ショーン。
一週間も仕事休ませてしもて…」
「良いんですよ。
僕は今までめったに休む事がなかったので、旅行に行くと言ったら親方も気分良く休ませてくれましたから。」
「でも、せっかく連れて来てもろたけど、やっぱりここにも俺の探してる壷はなさそうやわ。
明日帰ろな。」
「そうでしたか…それは残念です。
じゃあ、一旦家に戻ってまた親方と休みの事を話し合ってから出なおしましょう。」
「いや、ええんや。
やっぱりここにはあんな壷はないんや…」
(よほど大切な壷なんだな…
いつもは明るい天使様があんなにお寂しそうな顔をなさって…)
ショーンはマールの横顔をじっとみつめた。
「マール様、お疲れになったでしょう?
ちょっとそこの店でお茶でも飲んで行きませんか?」
「そやな…」
言葉少なにマールはそう答え、二人は小さなカフェに入った。
「マール様、紅茶でよろしいですか?」
「うん、まかせるわ。」
オーダーを聞きに来たウェイトレスが、ショーンの傍で立ち止まった。
「すみません。温かい紅茶を二つ。」
「あの…」
「何か…?」
ショーンは、ウェイトレスの顔を見上げた。
「間違ったらごめんなさい。
あなた、もしかしたらショーンじゃありませんか?」
「え…?
確かに僕はショーンですが…あなたは…あ…!!そのほくろは…!」
「思い出した?」
「まさか…おてんばエルマ?」
「酷いわ!まだその呼び名を使うなんて…でも、本当に久しぶりねぇ!
何年ぶりかしら?」
「確か君が引っ越してからだから、もう…15,6年になるんじゃないかい?
君は外国へ行ったとばかり思ってたよ。」
「その通りよ。
つい先週戻って来たばかりなの!」
「先週?そうだったのか…
それにしても、君…すごく変わったね…」
「そう?私、そんなに変わった?」
「うん、すっごく綺麗になった…!」
「まぁ、ショーンったら。
あなたも口がうまくなったわね!
子供の頃は口下手だったのに…」
「僕は今でも口下手のままさ。
お世辞は言えないもの…」
「まぁ…」
二人の頬がほんのりと染まっていく。
俺が悪かったわ…」
しばらくしてマールがぽつりと呟いた。
『そんなことはもう良い。
それより、明日から早速壷を探してみよう。』
「え…でも、その可能性は低いって…」
『今の所、それ以外に案がないのだから仕方がないじゃないか。』
「ほんまにごめんな…」
*
次の日から、ショーンに案内を頼み、マールは壷探しを始めた。
ショーンには詳しい説明はせず、ただ変わった壷を探してるとだけ伝えた。
しかし、変わった壷などそうそうあるわけもない。
ショーンは仕事も休んで遠くの町までマールを案内したが、一週間経っても思うような壷はやはり発見できなかった。
「ごめんなぁ、ショーン。
一週間も仕事休ませてしもて…」
「良いんですよ。
僕は今までめったに休む事がなかったので、旅行に行くと言ったら親方も気分良く休ませてくれましたから。」
「でも、せっかく連れて来てもろたけど、やっぱりここにも俺の探してる壷はなさそうやわ。
明日帰ろな。」
「そうでしたか…それは残念です。
じゃあ、一旦家に戻ってまた親方と休みの事を話し合ってから出なおしましょう。」
「いや、ええんや。
やっぱりここにはあんな壷はないんや…」
(よほど大切な壷なんだな…
いつもは明るい天使様があんなにお寂しそうな顔をなさって…)
ショーンはマールの横顔をじっとみつめた。
「マール様、お疲れになったでしょう?
ちょっとそこの店でお茶でも飲んで行きませんか?」
「そやな…」
言葉少なにマールはそう答え、二人は小さなカフェに入った。
「マール様、紅茶でよろしいですか?」
「うん、まかせるわ。」
オーダーを聞きに来たウェイトレスが、ショーンの傍で立ち止まった。
「すみません。温かい紅茶を二つ。」
「あの…」
「何か…?」
ショーンは、ウェイトレスの顔を見上げた。
「間違ったらごめんなさい。
あなた、もしかしたらショーンじゃありませんか?」
「え…?
確かに僕はショーンですが…あなたは…あ…!!そのほくろは…!」
「思い出した?」
「まさか…おてんばエルマ?」
「酷いわ!まだその呼び名を使うなんて…でも、本当に久しぶりねぇ!
何年ぶりかしら?」
「確か君が引っ越してからだから、もう…15,6年になるんじゃないかい?
君は外国へ行ったとばかり思ってたよ。」
「その通りよ。
つい先週戻って来たばかりなの!」
「先週?そうだったのか…
それにしても、君…すごく変わったね…」
「そう?私、そんなに変わった?」
「うん、すっごく綺麗になった…!」
「まぁ、ショーンったら。
あなたも口がうまくなったわね!
子供の頃は口下手だったのに…」
「僕は今でも口下手のままさ。
お世辞は言えないもの…」
「まぁ…」
二人の頬がほんのりと染まっていく。
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