あれこれ短編集

かぼちゃからの贈り物

３

「そんなのだめだよ。
ハロウィンは楽しい祭りだって誰かが言ってたよ。
 君も楽しまなきゃ…」

 「だって、何も楽しいことなんてないんだから、仕方ないじゃないか！」

 「だったら……」

かぼちゃは躊躇いながら、ゆっくりと言葉を続けました。



 「君も仮装をすればいい。
そして、お菓子をもらうと良いよ。」

 「さっきも言ったろ。
 僕には仮装なんて…」

 「僕のを貸してあげるよ。
だから、ハロウィンを楽しんで…」

 「え？」

 「ちょっと後ろを向いてて…」

 男の子は言われた通りにしました。
かぼちゃは、少しだけ考えましたが、すぐに決断しました。
 男の子が後ろを向いてる隙に、マントを取り去ったのです。
ドスンという音がして、かぼちゃの頭がごろりと転がりました。



 「あ…あれ？」

 男の子は、きょろきょろとかぼちゃを探しますが、そこにはもうさっきのかぼちゃの姿はありません。
かぼちゃの頭とマントと帽子が転がっているだけでした。



 「あ、ありがとう！」

 男の子は大きな声でそう言うと、マントを羽織り、かぼちゃの頭をかぶり、駆け出して行きました。



 （良かった…これであの子もかぼちゃのこと、好きになってくれるかな？）



ほんの束の間の冒険でしたが、かぼちゃはとても満足しました。
 男の子もお菓子をもらえて、ハロウィンやかぼちゃが大好きになりました。