あれこれ短編集

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 （あぁ、やっぱり綺麗……！）


 見上げた空には、こぼれ落ちて来そうな星がきらきらと煌めき、月は太陽とはまた違う優しい光をふり注いで、私の沈んだ気持ちを励ましてくれているような気がした。



 空気が澄んでいて、街灯も少ないから、漆黒の闇と月や星のコントラストは最高だ。



 （……やっぱり来て良かった……）



ぼんやりと空を眺めていると、闇の中に先輩の顔が思い浮かんだ。
とうとう想いは伝えられなかった。
 美術部に入部してからずっと密かな片思いを続けていた倉木先輩…
キャンバスに向かってる時の真剣な眼差しがすごく格好良くて、先輩の描く絵はどれも先輩の性格通りに優しくて…



たった二年だったけど、一緒に部活出来たことが幸せだと思えるほど、憧れていた先輩…
でも、その想いは伝えられなかった。
 今時、告白の一つも出来ないなんて情けないけど、私にはごくありきたりな卒業祝いの言葉しか言えなかった。
 長い間考えて、何度も何度も練習した告白の言葉は、結局口にすることはなかった。
それで良かったんだ。
 告白なんてしたところで、うまくいくはずもない。
 自分の勇気のなさをそんな風に誤魔化しては来たけれど、やっぱり胸の中がまだもやもやしてる。



そんな時、ふと、私はここへ来ることを思いついた。
 大好きなおじいちゃんとおばあちゃんがいる、このひなびた田舎町。



それは正解だったと思う。
 自然はただそこにあるだけで人に元気を与えてくれる。
 青く高い空や、きらきらの星や、山の緑からは何か不思議なパワーが出てるんじゃないかって思う程…



ここに数日いたら、先輩のことで傷付いた気持ちもきっと癒える…
そんな気がした。