上 下
280 / 406
ハーフハートチョコレート

11

しおりを挟む
リュウには二人っきりで話をさせてくれるように頼み、俺は懐かしい自分の部屋の扉を静かに開けた。



「やぁ、久しぶりだな…」

声をかけると、俺の姿をした亀田はたいして驚きもせずどこかふてくされたような顔を向けた。



「なんだ、おまえか…どうした?」

だらしなくベッドに寝転がる俺の顔は、少しむくんでいるように見えた。
髪の毛も乱れている。
部屋の中も散らかっていた。



「おまえ、日課の運動してないらしいな!
リュウから聞いたぞ。」

「運動?あいにく、俺は運動ってやつが一番嫌いでね。」

「この身体みたいにぶくぶく太って返してくれるなよ。」

「うるさいな、何の用だ!何しに来やがった!」

「おまえの様子がおかしいって、皆が心配してるようだ。
一応、頭を打ったってことにしておいたが、おまえも少しは努力しろよ!」

「努力?
ふん、ホストのくせに偉そうなことを…」

「なんだと…!
おまえもこの十日間、ホストの仕事を体験してみて本当はその大変さが身に染みてるんじゃないのか?!」

俺の顔をした亀田はその言葉を鼻で笑った。



「全然だな。
こんなに楽して金が稼げるなんて、お笑いだよ。」

それが奴の虚勢であることはわかっていた。
リュウの話によると、つい先日、奴は客を怒らせて頭から酒を浴びせられたらしく、その日は相当に落ちこんでいたと言う事だった。



「そうか……なら好きにやるが良いさ。」

怒りが込み上げ、俺は乱暴に扉を閉めると、そのまま部屋を後にした。



そんな強気でいられるのもきっとあと少しのことだ。
どうせ、もうしばらくしたら泣きついて来るに違いない。
そしたら、もう一度、蜃気楼.comでなんとかすぐに元に戻れる方法を探して…最悪それがみつからなかったとしたら、俺は、奴の友人ということでここに暮らし、奴に指示を与えるなりなんなりしてなんとかこの一年を乗りきろうと考えていた。
多少の失敗なら取り返せるが、俺がこの世界でもう生きて行けない程のダメージを与えられたら困るのは俺なのだから。
奴にうまく出来ないようなら、体調が悪いとかなんとか言って、しばらく海外で時間を潰せば良い。
そのくらいの蓄えはある。



しかし、俺の予想とは裏腹に、奴はその後も一向に俺の前には現れなかった…
あの日からすでに約半年が過ぎていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...