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クリスマスプレゼントは靴下に

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「え……っと。」

私はあたりを見渡した。



「あ、あそこでちょっと洗いましょうか。」

私は、店の脇にある蛇口をみつけて、それを指差した。
そして、すかさず彼に肩を貸してそこまで連れて行った。



あぁ、まるで夢みたい……!
 理想のタイプと、密着してる~~~!
そういえば、男の人とこんな風に密着したのって……
年末の忘年会で、酔っ払って部長と肩組んで歌った時以来のことだ。
コロンのような良い香りとお酒のにおい…そしてどぶ臭……
蛇口までほんの数メートルの距離しかないのがとても悔しい。
もっと遠けりゃ良いのに……



「そこに立ってて下さいね。」

「あ、僕、自分でしますから。」

「良いから、良いから。
冷たいけど、ちょっと我慢して下さいね。」



イケメンが遠慮するのも聞かずに、私はどろどろの靴下を脱がせ、汚れたズボンの裾や足を綺麗に洗ってあげた。
 冷たい水も、緊張で全然気にならない。
だって、男の人の足を洗ってあげるなんて初めてのことだもん。
しかも、相手は私の理想のイケメン……
こんなことをしてる私は、なんだか戦国時代の武士の妻みたいじゃない…?……なんてことを考えると、ますます顔が火照って来るから冷たい水も冷たいどころか気持ち良いくらい。



「本当にすみません。」

イケメン君は、恐縮して頭を下げる。



「いえいえ、全然!」


それは無理してるわけでもなんでもない、私の本心。
むしろ、あなたが溝にはまってくれたことにお礼を言いたいくらいですから!
 私は嬉しくて込みあがって来る笑いを無理に押さえながら、せっせと彼の足を洗った。







「よし、これでひとまず綺麗になったかな。」

水だけでは汚れもにおいも完全に落ちるはずはないけれど、さっきよりはずっとマシになった。
一生懸命洗ったもの。
でも、そのせいでイケメン君の足は真っ赤になって、いかにも寒そう……



(あ…そうだ!)



「あ…あの……
ちゃんとしたものじゃないんですけど、私、靴下持ってるんで……」



私は、さっきもらった靴下をイケメンに見せた。
こんなもの普通なら履けるようなものじゃないけど、今は緊急事態だ。
素足でいるよりはまだ良いだろうし。



「え…?これって新品じゃないんですか?良いんですか?」

「ええ、どうぞ、どうぞ。」



でも、束の間とは言っても、こんなクリスマス仕様の派手な靴下を履くのはいやかもしれない。
とりあえず、前島だったら絶対断るよな。
あいつ、中身がないせいか、見た目だけにはえらくこだわり持ってるみたいだから。




「そんなの無理っす。」

あいつなら絶対にそう言って断るね。



でも、普通の男の人ならやっぱりこんなの恥ずかしいかな?
あぁ、余計なことを言わなきゃ良かった…私が後悔していたら、彼は天使のような素敵な笑顔を見せてくれて……



「じゃあ、遠慮なく……」

そう言って、私から靴下を受け取って躊躇うことなくそれを履いてくれた。 
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