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イヴの奇跡
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「じゃ…どうして?」
『その物語を書いたコピーライターの妻は、重篤な病気に冒されていた。
だけど、小さな子供はそのことがいまひとつ理解出来ない。
クリスマスが近付いて来ると、どこの家庭でもお母さんは忙しい。
ツリーを出したり家の中を飾り立てたりご馳走の準備をしたりと大わらわだ。
だけど、その子のお母さんは何もせず、いつもと同じようにただ寝ているだけ。
子供にはそのことが不思議に思えたんだろうな。
「ねぇ、パパ…よその家のママはクリスマスの準備でとっても忙しいのに、どうしてうちのママは何もせずに寝てるの?」
そんなことを訊ねる子供に、その父親は物語でメッセージを伝えたいと思ったんだ。
皆と同じじゃなくても良いんだってこと…違うっていうのは、何も悪いことじゃないってことをな。』
「……へぇ…そんないきさつがあったんだぁ……」
あの陽気な歌の裏にはそんな事実があったと知って、なんだかちょっとしんみりしてしまった。
『赤鼻のとなかいの話は知ってるのか?』
「え…だから、暗い夜道にはお前の鼻が役に立つっていって、サンタのそりひきにされたんでしょ?」
『確かにそうだけど、ざっくり言い過ぎ……
お前、本当に雑な性格なんだな。』
「悪かったわね、雑で……」
『赤い鼻のとなかい・ルドルフは自分の鼻が大嫌いだった。
なんたって、他のとなかいとは違い、真っ赤だったからな。』
「わかるわぁ。鼻が赤いと、なんだかそれだけで間抜けな顔に見えるもんね。
ばかっぽいよね。」
『黙って聞け。
そんなわけで、いつもみんなから鼻の事をからかわれ、ルドルフはコンプレックスのかたまりとなって暗い日々を過ごしていたんだ。
やがて、クリスマスがやって来た。
サンタとたくさんのプレゼントを載せたそりをひくのは8頭のとなかい達だ。
そのとなかい達は、言ってみれば動物界のヒーローみたいなもんだ。
みんながその勇姿を見ようと集まって来た。
だけど、いざ、出発…といった時になってあたりに真っ白な霧が立ち込めた。
そんな状態じゃ、煙突の場所さえ見えないし、どうしたものかと困っていた時に、サンタはルドルフの鼻に気が付いたんだ。
ルドルフの鼻は赤いだけじゃなくて、ぴかぴか光っていたからこれだと霧の中も進んで行けるって思ったんだな。』
「霧の中を進むって言ったら、相当明るい光じゃないと無理よね。
ルドルフの鼻は一体何ルクス……」
となかいの冷ややかな視線に気付き、私はそれ以上のおしゃべりをやめた。
『その物語を書いたコピーライターの妻は、重篤な病気に冒されていた。
だけど、小さな子供はそのことがいまひとつ理解出来ない。
クリスマスが近付いて来ると、どこの家庭でもお母さんは忙しい。
ツリーを出したり家の中を飾り立てたりご馳走の準備をしたりと大わらわだ。
だけど、その子のお母さんは何もせず、いつもと同じようにただ寝ているだけ。
子供にはそのことが不思議に思えたんだろうな。
「ねぇ、パパ…よその家のママはクリスマスの準備でとっても忙しいのに、どうしてうちのママは何もせずに寝てるの?」
そんなことを訊ねる子供に、その父親は物語でメッセージを伝えたいと思ったんだ。
皆と同じじゃなくても良いんだってこと…違うっていうのは、何も悪いことじゃないってことをな。』
「……へぇ…そんないきさつがあったんだぁ……」
あの陽気な歌の裏にはそんな事実があったと知って、なんだかちょっとしんみりしてしまった。
『赤鼻のとなかいの話は知ってるのか?』
「え…だから、暗い夜道にはお前の鼻が役に立つっていって、サンタのそりひきにされたんでしょ?」
『確かにそうだけど、ざっくり言い過ぎ……
お前、本当に雑な性格なんだな。』
「悪かったわね、雑で……」
『赤い鼻のとなかい・ルドルフは自分の鼻が大嫌いだった。
なんたって、他のとなかいとは違い、真っ赤だったからな。』
「わかるわぁ。鼻が赤いと、なんだかそれだけで間抜けな顔に見えるもんね。
ばかっぽいよね。」
『黙って聞け。
そんなわけで、いつもみんなから鼻の事をからかわれ、ルドルフはコンプレックスのかたまりとなって暗い日々を過ごしていたんだ。
やがて、クリスマスがやって来た。
サンタとたくさんのプレゼントを載せたそりをひくのは8頭のとなかい達だ。
そのとなかい達は、言ってみれば動物界のヒーローみたいなもんだ。
みんながその勇姿を見ようと集まって来た。
だけど、いざ、出発…といった時になってあたりに真っ白な霧が立ち込めた。
そんな状態じゃ、煙突の場所さえ見えないし、どうしたものかと困っていた時に、サンタはルドルフの鼻に気が付いたんだ。
ルドルフの鼻は赤いだけじゃなくて、ぴかぴか光っていたからこれだと霧の中も進んで行けるって思ったんだな。』
「霧の中を進むって言ったら、相当明るい光じゃないと無理よね。
ルドルフの鼻は一体何ルクス……」
となかいの冷ややかな視線に気付き、私はそれ以上のおしゃべりをやめた。
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