上 下
232 / 406
イヴの奇跡

しおりを挟む
「じゃ…どうして?」

 『その物語を書いたコピーライターの妻は、重篤な病気に冒されていた。
だけど、小さな子供はそのことがいまひとつ理解出来ない。
クリスマスが近付いて来ると、どこの家庭でもお母さんは忙しい。
ツリーを出したり家の中を飾り立てたりご馳走の準備をしたりと大わらわだ。
だけど、その子のお母さんは何もせず、いつもと同じようにただ寝ているだけ。
 子供にはそのことが不思議に思えたんだろうな。
 「ねぇ、パパ…よその家のママはクリスマスの準備でとっても忙しいのに、どうしてうちのママは何もせずに寝てるの?」
そんなことを訊ねる子供に、その父親は物語でメッセージを伝えたいと思ったんだ。
 皆と同じじゃなくても良いんだってこと…違うっていうのは、何も悪いことじゃないってことをな。』

 「……へぇ…そんないきさつがあったんだぁ……」

あの陽気な歌の裏にはそんな事実があったと知って、なんだかちょっとしんみりしてしまった。



 『赤鼻のとなかいの話は知ってるのか?』

 「え…だから、暗い夜道にはお前の鼻が役に立つっていって、サンタのそりひきにされたんでしょ?」

 『確かにそうだけど、ざっくり言い過ぎ……
お前、本当に雑な性格なんだな。』

 「悪かったわね、雑で……」

 『赤い鼻のとなかい・ルドルフは自分の鼻が大嫌いだった。
なんたって、他のとなかいとは違い、真っ赤だったからな。』

 「わかるわぁ。鼻が赤いと、なんだかそれだけで間抜けな顔に見えるもんね。
ばかっぽいよね。」

 『黙って聞け。
そんなわけで、いつもみんなから鼻の事をからかわれ、ルドルフはコンプレックスのかたまりとなって暗い日々を過ごしていたんだ。
やがて、クリスマスがやって来た。
サンタとたくさんのプレゼントを載せたそりをひくのは8頭のとなかい達だ。
そのとなかい達は、言ってみれば動物界のヒーローみたいなもんだ。
みんながその勇姿を見ようと集まって来た。
だけど、いざ、出発…といった時になってあたりに真っ白な霧が立ち込めた。
そんな状態じゃ、煙突の場所さえ見えないし、どうしたものかと困っていた時に、サンタはルドルフの鼻に気が付いたんだ。
ルドルフの鼻は赤いだけじゃなくて、ぴかぴか光っていたからこれだと霧の中も進んで行けるって思ったんだな。』

 「霧の中を進むって言ったら、相当明るい光じゃないと無理よね。
ルドルフの鼻は一体何ルクス……」

となかいの冷ややかな視線に気付き、私はそれ以上のおしゃべりをやめた。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

処理中です...