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十字架の楽園

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「あなた達は誰?
あ…あなたはリリィさん。」

外見とは不釣合いな程、しっかりとした口調で子供は話した。
だが、私達が傷だらけでいることについては不思議と何も言わなかった。



「なぜ、私のことを知ってるの?」

「記録写真で見ました。
あなたは最初に作られた方ですよね。」

まさか……!



「おまえ、まさか博士達によって作られた…」

私が心の中に抱いていた恐ろしい疑問をジョシュアが言葉にしてしまった。
少年は、何事も考えていないように平然と頷いた。

その動作を見た途端、私は大きな声を上げて泣き出していた。
少年はきょとんとした顔で私を見ている。
自分で考えることをしない人形のような瞳…ニ年と少し前までの私と同じ瞳で…



「ロビンソン博士を呼んできましょうか?」

「いや、良いんだ。
…博士はさっき急用が出来て出かけたから、ここにはいない…」

「こんな時間にですか?
どこへ行かれたんでしょう?」

「さぁ、俺もそこまでは聞いちゃいないけどな…」

「そういえば、さっき大きな物音がしましたが…」

「あ…あぁ、あれは……
なんかの実験で、瓶が弾け飛んだんだってさ。」

「……そうなんですか…」

少年がジョシュアの話を信じているのかいないのか、私にはよくわからなかった。



「ジョシュア…お水を…」

私がジョシュアに水を頼んだ時、少年が、はっとしたようにジョシュアをみつめた。



「僕と同じ名前ですね。」

「…え…?」

「僕の名前はジョシュア。
ロビンソン博士が付けて下さったんです。
とても大切な名前だそうです。」

そういって誇らしげな顔で少年は微笑んだ。



「……大切な…名前…?
う、嘘だ!そ、そんなこと……」

ジョシュアはそう呟くとうな垂れ、がっくりとその場に膝をついた。
私には彼の心の中がわかるような気がした…



「ジョシュア、まだ早いわ…
いつもの時間まで寝てなさい。
あ、そういえば、スノーザー博士は?」

「スノーザー博士は、昨年亡くなられました。」

「スノーザー博士が…?!」

死因を尋ねようかとも思ったけど、話が長引いてはいけないと思い聞くのはやめておいた。
私が出ていく時にはお元気だったのに…

元々、ここには三人の博士達がいた。
本来ならばもっとたくさんのアシスタントが欲しい所だろうが、秘密の漏洩を怖れたのか、すべての作業を三人で補っていた。
アンダーソン博士は私が12の時に亡くなり、その後はロビンソン博士とスノーザー博士によって研究は続けられて来た。
ジョシュアは私がここを出てから出来たのだろうが、それにしては年齢が合わない。
ジョシュアの姿は5~6歳に見えるのだから。 
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