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日記帳

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(そうだ…
未来のページをめくりさえしなきゃ、なんてことないんだ…
何も恐れることはない…!)

 自分に言い聞かせるように心の中でそう呟いたランディは、傍らの読みかけの本から栞を抜き取り、今日の日記のページにその栞を挿し込んだ。



 (これで良い…
これで、もう安心だ…)



 *



それから、寝る前にその日の日記を読むのがランディの日課となった。
 日記には、どんな些細な間違いもない。
その日の出来事が嘘偽りなく書かれていた。
そんな日々を繰り返しているうちに、日記帳に対する恐怖心も薄れ、やがてランディの心の中にはある疑問が持ちあがった。



 (考えてみれば、未来がどんな風になるかは、本人が意識してなくても結局の所は自分が選んでるわけだよな。
 言ってみればそれがあの男の言う所の「人生のサイコロを振る」ってことじゃないのか?
たとえば、明日俺は競馬に行く予定だ。
 買う馬も決めている。
 第3レースの2番アラビアンナイトだ。
こいつは大穴だが間違いなく来る!
 明日はこれしか買わない。
そう、俺はもうはっきりと決めているんだ!)

 強い決意を再認識すると、ランディはどうしても明日のことが知りたくなった。
 明日のそのレースのため、金貸しから金も借りてある。
まだ前に借りた金も返していないため、金貸しには無理を言い、三日以内に返せなかったら家を引き渡す約束までしていた。
さほど立派なものではないが、家は両親がランディに遺してくれた唯一の遺産だ。
そこを追い出されたら、ランディは早速住む場所さえ失ってしまうのだ。
そんなことを考えると、ランディの明日のことを知りたいという欲求はどんどんと大きく膨らんだ。



 (どうしよう…
やっぱり、日記帳を見ておくべきか?
でも、そこに書いてあることは絶対に変えられないとあいつは言っていた。
 俺は、今こんなにはっきりと明日することを決めてるが、違う事が書いてあったら本当にそうなるんだろうか?
もし、そこにアラビアンナイトが入らず、すってんてんになったなんて書いてあったら…)

 様々な想いがランディの頭の中をぐるぐると周り、不安な気持ちはどんどん広がって行く。
それは、どんなに酒を飲んでも少しも解消されなかった。

 
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