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日記帳
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「ありがとうございます。
いただきます。」
男はワインを一気に飲み干した。
「あんた…もしかして、俺に何か話でもあったんじゃないのか?」
ランディは、さっきの話を小耳に挟んだ男が、自分の身の上話をしたがっているのではないかと考えたのだった。
力になってやれるかどうかはわからなかったが、話を聞くことなら間違いなく出来る。
元々面倒見の良いランディは、酒の一杯を飲む金も持たない男を見過ごすことは出来なかったのだ。
「別になにも…」
「なぁ、これも何かの縁だ。
俺にはたいしたことは出来ないかもしれないが、話すことで気が晴れることだってあるぜ。
な、話してみなよ。」
「あなたは良い人なんですね。
ご心配はありがたいのですが、本当に私は特別困ったことはないのですよ。」
男はそう言うと、にっこりと微笑んだ。
ランディには、男の真意がわからなかったが、おそらくは初対面の自分に警戒しているのか、虚勢を張っているのだろうと考えた。
「ところで、あなたはギャンブルがお好きなんですよね?
世の中には様々な賭け事がありますが、最大の賭けといったら人生そのものだと思いませんか?」
「人生がギャンブルか。ずいぶんと小難しいことを言うんだな。」
その言葉に、男は俯き失笑する。
「どういう両親の元に生まれるか…そこからすでに賭けは始まってるとは思いませんか?
良い目を出した者は裕福で幸せな家庭に生まれ、或いは賢く美しく健康に生まれ、悪い目を出した者はその反対に……」
その後の言葉を意味ありげな含み笑いに変えた男に、ランディの眉間には深い皺が刻まれた。
「そういう考え方はあんまり好きじゃないな…」
「それは意外です。
あなたはギャンブルがお好きだと思ったのに…」
「ギャンブルは好きだが、そういう考えは好きじゃないってことだ。
……すまないが、俺、一人で飲みたいんだ。」
男の考え方に気分を害したランディは、もうその男の話を聞く気にはなれずにそっぽを向いた。
「そうですか。
わかりました。
では、先程のワインのお礼にこれを受け取っていただけませんか?」
そう言って男が鞄の中から取り出したのは、一冊の日記帳だった。
「日記帳か…あいにくだが俺は日記なんてものは書かないから、気持ちだけ受け取っておくよ。
ありがとうな。」
「ご心配なく。
これは書く必要のない日記帳です。」
「……書く必要がない?」
その意味が理解出来ないランディは、男の言葉を繰り返した。
いただきます。」
男はワインを一気に飲み干した。
「あんた…もしかして、俺に何か話でもあったんじゃないのか?」
ランディは、さっきの話を小耳に挟んだ男が、自分の身の上話をしたがっているのではないかと考えたのだった。
力になってやれるかどうかはわからなかったが、話を聞くことなら間違いなく出来る。
元々面倒見の良いランディは、酒の一杯を飲む金も持たない男を見過ごすことは出来なかったのだ。
「別になにも…」
「なぁ、これも何かの縁だ。
俺にはたいしたことは出来ないかもしれないが、話すことで気が晴れることだってあるぜ。
な、話してみなよ。」
「あなたは良い人なんですね。
ご心配はありがたいのですが、本当に私は特別困ったことはないのですよ。」
男はそう言うと、にっこりと微笑んだ。
ランディには、男の真意がわからなかったが、おそらくは初対面の自分に警戒しているのか、虚勢を張っているのだろうと考えた。
「ところで、あなたはギャンブルがお好きなんですよね?
世の中には様々な賭け事がありますが、最大の賭けといったら人生そのものだと思いませんか?」
「人生がギャンブルか。ずいぶんと小難しいことを言うんだな。」
その言葉に、男は俯き失笑する。
「どういう両親の元に生まれるか…そこからすでに賭けは始まってるとは思いませんか?
良い目を出した者は裕福で幸せな家庭に生まれ、或いは賢く美しく健康に生まれ、悪い目を出した者はその反対に……」
その後の言葉を意味ありげな含み笑いに変えた男に、ランディの眉間には深い皺が刻まれた。
「そういう考え方はあんまり好きじゃないな…」
「それは意外です。
あなたはギャンブルがお好きだと思ったのに…」
「ギャンブルは好きだが、そういう考えは好きじゃないってことだ。
……すまないが、俺、一人で飲みたいんだ。」
男の考え方に気分を害したランディは、もうその男の話を聞く気にはなれずにそっぽを向いた。
「そうですか。
わかりました。
では、先程のワインのお礼にこれを受け取っていただけませんか?」
そう言って男が鞄の中から取り出したのは、一冊の日記帳だった。
「日記帳か…あいにくだが俺は日記なんてものは書かないから、気持ちだけ受け取っておくよ。
ありがとうな。」
「ご心配なく。
これは書く必要のない日記帳です。」
「……書く必要がない?」
その意味が理解出来ないランディは、男の言葉を繰り返した。
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