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僕の大切な黒猫

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「おっかしいなぁ……
確か、このあたりだったはずだけど……」



ジャック・オ・ランタンのロザリオは、どうしたわけだかどこにもなかった。



「兄さん…昨夜、兄さんがいたのはそのあたりだよね?」

僕が指差した方を見て、黒猫の兄さんが小さく頷く。



「で、僕はここにいて……
確か、こっちに向かって投げたと思うんだ。」

兄さんはまた、うんうんと頷く。



「だったら、このあたりに飛んで行くはずなんだけど……」

だけど、そこらはさんざん探したけどみつからなかった。
夜のことだし、思い違いもあるかもしれない。
もっと広範囲を探さなきゃ……
だけど、もうそろそろ父さん達が起きる時間だ。
僕は一旦家に戻ることにした。







「ライアン…朝ごはんが出来たわよ。」

ノックと共に、母さんの声が響いた。



「……いらない。」

「もう……あなたまでそんなことを……」

母さんの困ったような声を聞くと、胸が痛む。
だけど、兄さんのためにも僕はここで折れるわけにはいかないんだ。



父さん達が仕事にでかけたのを確かめてから、僕は部屋を出た。
食堂のテーブルの上には、僕の分の朝食が置いてあった。
あえて、それを見ないふりをして、僕は外に飛び出した。







「お腹減っただろう?
さぁ、食べてよ。」



僕は、雑貨屋で兄さんと僕のための食料を買い込み、部屋に戻った。
反抗してる以上、家の食事も食べてはいけないような気がしたからだ。
兄さんの好物は知ってるけど、黒猫になった兄さんに食べさせるものは、兄さんの好きなもので良いのか、それとも猫の身体に合うものの方が良いのか……
そもそも、猫なんて飼ったことがないから、猫が何を好むのかもよくは知らない。
とにかく、魚や肉、パン等、兄さんが食べられそうなものを適当に買いこみ、早速、魚を煮込んで食べやすいように小さくほぐし兄さんの前に差し出した。



「……兄さん?
どうしたの?
食べたくないの?」

兄さんは、魚を前にして、落ち付かない素振りできょろきょろし……
ついには一目散にドアの方へ走り出した。



「どうしたの、兄さん?」

僕がドアを開くと、兄さんは駆け続け……トイレの前で立ち止まって、ドアをかりかりと爪で掻く。



「そっか、わかったよ、兄さん。
でも、そこじゃあ、しにくいだろうから……」

僕は兄さんを抱えて、庭へ駆け出した。



「さぁ、そのあたりでやって来なよ。
大丈夫。僕はここにいる。
のぞいたりしないから……」



そう言うと、兄さんはすごいスピードで茂みの奥に駆け出して行った。


 
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