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僕の大切な黒猫

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「……兄さん?」



不意に兄さんの笑い声がやんで……
姿も見えなくなった。



「兄さん?」



兄さんが今までいた所には、光る二つの目……



「わっっ!」



そこにいたのは、小さな黒猫だったんだ。
おかしな妄想が頭を過る。
だけど、そんな馬鹿なこと……



(……まさかね。)



「兄さん!出て来てよ!
兄さん!」

「にゃー!」

黒猫は、なにか落ち付かない様子であたりをきょろきょろしている。



「兄さん!」



「ふぎゃーーー!」

小さな黒猫は、立ち上がり、僕の片足にすがりついた。
そして、僕を大きな目でじっとみつめて……



(……まさか…ね?)



「兄さんなんか黒猫になってしまえば良い!」とは言った。
兄さんの笑い声がやんだのと同時に、兄さんの姿も見えなくなって、そして、そこには黒猫がいて……
でも、ありえない。
人間が黒猫になるなんて、ありえないことだ。
魔法なんて、ありえないことだ。



「どうしたんだい、黒猫君。
遊んでほしいの?
あいにくだけど、僕は兄さんを探さなきゃならないんだ。」

僕は、黒猫の身体をそっと離した。



「ふぎゃー!にゃごにゃごにゃーーー!」



それでも、黒猫はしつこく僕の足にしがみつく。



「……やめてよ。
だめだって言っただろ?
聞き分けの悪いところは、僕の兄さんにそっくりだね。」

僕がそう言うと、黒猫は僕の足に思いっきり噛み付いた。



「痛っっ!」



「ふぎゃー!ぎゃにゃにゃにゃー!」



黒猫は怒ってる。
怒って、なにかを言いたげに必死に鳴き声を上げている。



「……兄さん……じゃないよね?」

「ふみゃあーー!」

黒猫が頷く。



「また~……君は本当に面白い子だね。
じゃあ、もう一度聞くよ。
君は、僕の兄さんですか?」

黒猫がまた頷いた。



「マイケル……?」

黒猫は僕の瞳をじっとみつめて、何度も何度も頷いた。



(ははは……)



「兄さん…!
本当に兄さんなの!?
…………兄さんーーーー!」

僕は黒猫になった小さな兄さんの身体を力一杯抱き締めた。 
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