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愛ゆえに…

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(ラプンツェル…どこにいるんだ。
僕は絶対に君のことを諦めない…
だから、君もどうにかして生きていてくれ!
僕が君をみつけるまで、どうか…どうか無事でいてくれ…)



アレクセイは木の実を食べ、雨水をすすり、光を失った不自由な身体で懸命に森の中をさ迷い歩いた。
その後も、どんな苦難にも屈することなく、彼はラプンツェルを探して歩いた。
いつしか着ている物はまるでぼろ布のようになり、髪や髭は伸び放題…彼が王子である等ということを考える者はどこにもいなかった。
町では物乞いまでして、彼は諦めることなくラプンツェルを探し続けた。



そんなある日のことだった。



(ここは……)

アレクセイの耳は遠くに聞こえる波の音を捕らえた。



(海が近いのか?)

規則的に繰り返される波の音に、アレクセイはどこか心地良いものを感じた。
歩いていくうちに、波の音は大きくなり…そして、アレクセイの足は不意に踏みしめるものを失った。



「あ…あぁーーー!」

身体のバランスを崩し、アレクセイは海面に叩き付けられた。
桟橋から足を踏みはずしたのだということを理解するうちにも、彼の身体は海中深く沈んで行く。
彼は懸命に空気を求めてもがいたが、抵抗も空しくその身体はどんどん沈んでいくばかりだった。



(ラプンツェル…まだ君をみつけていないというのに、僕はこんな所で…)

アレクセイは自分の身体の中に海の水がどくどくと進入して来るのを感じた。
息が出来ない苦しさと、薄れ行く意識がアレクセイを交互に襲う…



(もう…だめだ……ラプンツェル……)







アレクセイは、柔らかな唇の感触で目覚めた。



「う…うぅっ…」

アレクセイの口から海水が吐き出される。



「気が付きましたか!?」

「こ…ここは……」

「あなたは海の底に沈んでいたのですよ。」

アレクセイは透き通ったその声に聞き覚えがあった。



「……ラプンツェル…
ラプンツェルなんだね!」

アレクセイは、身体を起こし女性の身体を抱きしめた。



「な、なにをなさるんです!
わ、私は……」

「あぁ…間違いない…
この滑らかな肌…しなやかな細い髪…
やっと会えた!
ラプンツェル…会いたかった!!」

「あ……」

女性を強く抱き締めるアレクセイの曇った瞳から熱い涙がこぼれ落ちた。 
 
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