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「あ、王様。」

侍女さん達が素早く道を空け、頭を下げた。



「おぉ、この部屋は日当たりが良いな。
何か不自由はないか?」

「いえ、何も。」

「この部屋は私の母上が使っていた部屋だ。
永らく使う者がいなかったのだが、ようやく使ってもらえて、部屋も喜んでいるだろう。」



セバスチャンのお母さんってことは、王妃様?
私、王妃様の部屋を使わせてもらうの?



「なんだかもったいないです。
私なら、もっと普通の部屋で…」

「何を言う。
君はこの国の王妃だ。
この部屋を使うのは当然だろう。」

「えっ!?
わ、私が王妃??」

「まさか、忘れたわけではあるまい。
私たちは、クルドの神の前で
結婚の誓いを立てたではないか。」



そりゃあ確かにしたかもしれない。
でも、あれはシャール王子が無理やりやったこと…



「で、でも、あれは…」

私が話しかけると、セバスチャンは暗い表情に変わった。



「あの時の私は醜いせむし男だった。
君は優しいから、私を斬るのがいやで、それで口付けをしてくれたのかもしれない。
だが、それでも、結婚の誓いには違いがない。
……私のことが嫌いか?
あんな醜い姿を見てしまったのだから、気持ちが悪いか?」

「い、いえ、そういうわけでは……」
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