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「夕飯が出来たぜ。」

ノックと共に声が聞こえた。
夕飯と聞いた途端にお腹が鳴った。



(あれ?)



リビングのテーブルにはお婆さんが着いていた。



「あぁ、俺の婆さん。
この家の持ち主だ。」

「あ、どうも。こんばんは。」

「こんばんは。」



テーブルには、三人分の食事が並んだ。
スープとパンだ。
庶民は、たいていこんな食事なのかな?
でも、スープの具材は割と入ってる。



(あ......)



塩味を感じた。
ここには、調味料があるんだね。
久しぶりの塩味に、食欲がそそられる。
魚っぽいものも入ってた。


「ところで、あんた、どこに行くんだい?」

「え?えーっと、サリーナの方へ。」

「へぇ、サリーナに行って何をするんだい?」

「何って...特にはないですが、暮らしやすいって聞いたもので。」

「そうだな。ここよりは暮らしやすいとは聞くな。
俺は行ったことはないからわからないけど。」

へぇ、そうなんだ。
サリーナって、割と評判は良い所なんだね。



「あなたは、ずっとここで暮らしてらっしゃるんですか?」

「この子の親は早くに亡くなったからね。」

今まで黙っていたお婆さんが口を開いた。



「婆ちゃんが、俺を育ててくれたんだ。」

その言葉に、お婆さんがにっこりと微笑んだ。
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