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「これからどうするつもりだ?」

「え?は、はい。まだ決めかねていますが...」

「とにかく、ここは早くに出た方が良い。何かあったら、大変だからな。
そして、真面目で頼りになる男と早くに世帯を持つことだな。
田舎の方でしばらく目立たないように生きていくんだ。
長い時が過ぎれば、さすがに女王ももうあんたにこだわることはないだろう。」



セバスチャン、私のことを真面目に考えてくれてるんだね。



私、やっぱりもう元の世界に戻ることは無理なのかな?
この世界で生きていくしかないんだろうか?



「どうしたんだ?」

「え...?」

「涙が......」

「あ...」



知らないうちに、私は涙を流していたみたいだ。
やっぱり、悲しいんだよね。
当たり前だよね。
帰ろうと思ったら、クラウディアさんに頼むしかない。



(あ......)



魔法使いは、城に仕えてることが多いって聞いた。
じゃあ、別の城の魔法使いだったら...



無理だよね。
一般庶民の私の願いなんて、聞いてもらえるはずがない。
そもそも、魔法使いに会うことだって、無理かもしれないもの。
別の城ってなったら外国に行かないといけないかもしれないし、せいぜい馬車くらいしかないこの世界で、外国に行くなんて無理だよね。
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