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早朝から始まった私の捜索は、結局、昼過ぎまで続けられたみたいだ。
あの御屋敷から一番近いのはこの町だから、無理もない。
一軒一軒、虱潰しに探して行ったようだ。
だけど、まさかセバスチャンの所に私がいるとは思わなかったんだね。
助かったよ。



「これだけ探したんだ。
多分、ここにはもう来ないと思う。
だが、油断は禁物だ。
家からも出ない方が良いな。」

「そうですね。」

みつかったら、どうなるかわからない。
絶対にみつかってはいけない。
セバスチャンの言う通り、家の中に引きこもってるのが良さそうだ。



セバスチャンは、用があるらしく、割と長い間家を空ける。
ひとりでいるととても心細く、不安になるけど、そんなことは言っていられない。



「たいしたものがなくてすまないけど、我慢してくれ。」

「いえ、そんなことは…
ありがとうございます。」

どうやら、セバスチャンはどこかで働いているようだ。
暗くなってから、野菜くずのようなものを持って帰って来る。
きっと大変な生活だったろうに、私が来たことでさらに大変な状況になってるんだろう。
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