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「まさか、あんた…何か辛い事があって、やけになって、それでここに来たのか?」

「え?えっと…ま、まぁ、そんな所かもしれません。」

私は曖昧に笑って誤魔化した。



「見た感じじゃ、どこぞの貴族の使用人ってとこか。」

「は、はい、そうです。」

きっと、あの部屋は使用人の部屋だったんだね。
とりあえず、変装はうまくいってるみたいだね。



「なにがあったのかは知らないが、こんなところに来ても何も良いことなんてないぞ。
まともな町に行って、神父にでも話を聞いてもらった方が良い。」

この人、見た目はあれだけど、やっぱり良い人みたいだね。




「あの…この近くに、別の町はあるんですか?」

「近くにはないな。
一番近い町でも、何日かかかる。
ここらには、乗り合い馬車はないからな。」



そうか。
これからは移動も徒歩なんだね。大変だなぁ。
確かに、この町は危険そうだから、長居はしない方が良いかもしれないけど、移動するにもお金はかかる。
私は無一文なのに、どうしたら良いんだろう?



考えたら絶望的な気持ちにはなったけど、でも、逃げることにはとりあえず成功したんだから。
今はそのことを喜ぼう。
そう、最悪の事態は免れたんだから。
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