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決意

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「……アズラエル…あんたには本当に感謝してる。
あの時あんたが来てくれてなかったら…そして、その後、俺をあれほど献身的に世話してくれていなかったら…俺は、今この場所にはいなかっただろう。
ありがとう…アズラエル…」

 「いや…私がもっと早くにここに来ていたら…
たとえ、ルキティアを助けることは出来なかったにしても、君をもっと早くに救えただろうに…」

 黙ってアズラエルの話を聞いていたトレルが突然俯き笑い出す。



 「……どうした?
 私は、何か、おかしなことを言ったか?」

 「……いや…そうじゃない。
ただ、あんたが本当にイアンに似てるから…
 ……イアンもそうだった…
何かあったらいつも自分を責めていた。
 普段はけっこう厳しいくせに、傷付いた者にはとことん尽くす…
それは、悪魔になってからも少しも変わらなかった…
俺はイアンに新たな命をもらい……そして、イアンからもらった大切な命をなくしてしまいそうになった時、あんたに救われた…
 ……もしかして、あんたにはイアンが乗り移ってるんじゃないだろうな?」

 「……そうかもしれんぞ。」

アズラエルは、冗談で返しながら穏やかな瞳でトレルをみつめた。
トレルは、アズラエルから不意に視線を逸らし、小さく肩を揺らす。



 「……今度はどうしたんだ?」

 「やっぱりそうだ。
あんたにはイアンが乗り移ってるんだ。
 今の顔、イアンにそっくりだったぜ。
……アズラエル、覚えてるか?
 俺達が初めて会った日のこと…」

 「あぁ、良く覚えてるさ。
あの頃の君は黒い猫だった…」

 「……そのことはもう忘れてくれよ。」

 二人は顔を見合せて笑った。



 「……あの時のあんたと来たら、悪魔を瀕死の状態にしておきながら、欠片程の同情心さえ感じてはいなかった。
 悪魔の中でも特別な…凍り付くほど冷酷な瞳をしていたな…」

 「……そうだったかな…昔のことは忘れたよ。」

 「……でも、あんたが動物に向ける瞳はそれとはまるで別人のようだった。
 優しくて愛情に満ち溢れた温かなものだった。
……最近のあんたはその瞳をしている。」

 「それは当然じゃないか。
……なんせ、君は黒猫なんだからな。」

トレルは、真面目な顔で答えるアズラエルに、明るい声で笑った。
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