上 下
283 / 355
復讐の連鎖

96

しおりを挟む
「……すまなかった、アズラエル。
……それで……ルキティアはどうした?」

 「ルキティア?……あの女性か?
それなら、簡単だが裏山に葬った。
あの状況では葬儀屋を頼むのもはばかられたのでな…」

 「そうか…何から何まで世話になったな…
 ………アズラエル…ルキティアの顔を見たか?」

 「あぁ…
エルスールに生き移しだな…
エルスールは双子だったのか?」

 「いや…エルスールに姉妹はいないと聞いている。全くの別人だ。
だが、ルキティアは容姿だけではなく、その口調や態度までがエルスールにそっくりで…
信じられない想いだった。
 俺はすぐにルキティアに夢中になって…オルジェスのこともなにもかもどうでも良くなっていた…
だから、こんな罰を受けたのかもしれん…」

トレルはそこまで話すと、感情が高ぶったのか、また両手で顔を覆った。



 「トレル…ひさしぶりに一本どうだ?」

 部屋を出たアズラエルは、煙草とライターを持って戻った。



 「病人にこんなもん吸わせて良いのか?」

 「あぁ…今の煙草はきっと薬になるだろう。」

トレルは涙を拭い、煙草に火を点けゆっくりと吸い込んだ。



 「……うまいよ。
 一体、何日ぶりだろう…
こんなに吸わなかったのは、初めてだな…」

トレルは吐き出した白い煙を愛しそうにみつめる。



 「ゆっくり吸えよ。」

アズラエルは、そんなトレルを優しい瞳で見守った。



 「……アズラエル…あんたの言う通りだ。
このおかげで随分と落ち着いた。
……話を聞いてくれるか…?」

トレルは短くなった煙草を灰皿に押しつぶし、アズラエルの方に顔を向ける。
アズラエルは、何も言わずゆっくりと頷いた。



 「ルキティアを殺ったのは……オルジェスだ……」

 喉から搾り出すような声で、トレルは呟く。



 「ルキティアと寝てる時に、突然、オルジェスが飛びこんで来た。
そんな時だったから、俺は、奴に抵抗することが精一杯で…そのうち、ルークがやって来て俺の頭を椅子で殴りつけた。
あいつは、俺の知ってるルークとはまるで別人だった…
何の躊躇いもなく俺に椅子を振り上げて、何度も殴りつけたんだ…
その衝撃で俺は意識をなくした…
それからどのくらい経ったのかわからないが、水を浴びせられて俺が目を醒ますと、ルキティアがベッドの上で酷い暴行を受けていた。
 俺は柱に括りつけられていたから動く事も出来なかった…
オルジェスは俺に面白いものを見せてやると言って服を脱ぎ出し…そして…」

トレルの呼吸が早くなるのを感じ、アズラエルはそっとトレルの背中をさする。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

復活ラヂオアプリ

田古みゆう
ライト文芸
 ある日、気がついたら、スマートフォンに『復活ラヂオ』という名前のアプリが入っていた。全く入れた覚えはなかった。でも、酔いに任せてアプリを入れたのかもしれない。  ラジオなんて、最近は全く聴いていない。それどころか、音楽もドラマもニュースも。今を語るものには、何にも触れていない。あの日からオレは、何をすれば良いのか、何がしたいのか、自分のことが全く分からなくなった。だから、手持ち無沙汰に酒を飲んだ。  そんな自堕落な生活に染まり始めて、幾日も経った頃、珍しく頭がクリアになった時があった。何処かへ行きたい気分だった。着の身着のまま、部屋の外へと出て見ると、外の世界は、思いの外、明るかった。  自分の思っていた世界との違いに思わず心を動かされる。もしかしたら、世界は、自分が思っていたものとは、違うのかも知れない。そう思い立つと、離れていたメディアに触れてみようという気になった。  スマートフォンを取り出し、入れた覚えのない『復活ラヂオ』をスタートさせる。そのチャンネルから流れできたのは、機械じみた、男とも女とも分からない、感情のない不思議な声だった。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

小動物系魔術師はキュートアグレッション王子から逃げられない

白峰暁
恋愛
闇魔術師のメルナは、亡くなった師匠の願いに従い、小さくなって王城に忍び込む。 闇魔術師は遠い昔に王家に追われる立場になり、今はすっかり散り散りになってしまったが、それを復興させる鍵が城の地下室に隠されているのだという。メルナはそれを目指して転移魔法で城に忍び込んだのだ。 だが、メルナは地下室に行く前に城の第四王子・ルーファスに捕まってしまう。 メルナは何度も地下室を目指そうとするが、その度にルーファスに捕まる。そして、段々とルーファスのメルナへの興味も強くなっていく。

婚約破棄を告げた瞬間に主神を祀る大聖堂が倒壊しました〜神様はお怒りのようです〜

和歌
ファンタジー
「アリシア・フィルハーリス、君の犯した罪はあまりに醜い。今日この場をもって私レオン・ウル・ゴルドとアリシア・フィルハーリスの婚約破棄を宣言する──」  王宮の夜会で王太子が声高に告げた直後に、凄まじい地響きと揺れが広間を襲った。 ※恋愛要素が薄すぎる気がするので、恋愛→ファンタジーにカテゴリを変更しました(11/27) ※感想コメントありがとうございます。ネタバレせずに返信するのが難しい為、返信しておりませんが、色々予想しながら読んでいただけるのを励みにしております。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

処理中です...