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策略

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シャルロットは、いつものようにベルナールを夕食に招いた。
普段通りに夕食を済ませた後、シャルロットはベルナールを散歩に誘い出した。



「とても良い風だね、シャルロット。」

「そうね…本当に気持ち良いわ。
ところで……ねぇ、ベルナール…ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」

「なんだい?」

「……あなたは私のことを愛していると言ってくれた。
でも、あなたは私に触れようとはしないし、結婚も出来ないと言ったわね。
その理由を聞かせてほしいの。」

「その理由は言えないと言ったはずだ…」

「お願いよ、ベルナール。
私、どんなことも受け止めるから…
どうか、あなたの本心を聞かせて!」

ベルナールは、少し苛立っているのか眉間に皺を寄せ、じっと押し黙っている。



「ベルナール…お願いよ!
聞かせて、何もかも……」

ベルナールは、そよぐ風になびく長い髪を、そっと整えた。



「……僕は、ジェローム伯爵の玩具だった…」

「……え?」

シャルロットは、思いがけないベルナールの言葉に混乱した。



「君もジェローム伯爵のことは知ってるだろう?
彼がどういう趣味を持った人物なのかってことも…」

「え……ええ…」

シャルロットは、驚きのためか頷きながら短い言葉を発するだけだった。



「僕の家は一応は貴族とはいえ、名もなき貧乏貴族だった。
金がないのに見栄ばかり張る両親のせいで、家計はどうしようもない所まで来てたんだ。
そんな時、僕は偶然ジェローム伯爵と出会ってしまった。
伯爵は、僕を一目で気に入り、僕を養子にほしいと大金を積んだ。
両親はそれに二つ返事で応じた…
わかるかい?……両親は、金のため、僕を伯爵に売ったんだよ…」

ベルナールは肩を落とし、その拳はわなわなと震えていた。
そんなベルナールを目の前にして、シャルロットは何も言う事が出来なかった。



「伯爵の屋敷に連れていかれたその晩、僕は、彼に襲われた。
死に物狂いで抵抗したけど、僕の抵抗など彼にとっては赤子の手をひねるようなものでしかなかった。
それから毎日、同じことが繰り返された。
おぞましい悪夢のような日々に僕はすっかり心を失くし、ある日、ついに限界が来てしまったんだ…
僕は無意識のうちに大量の薬を飲んでいた……
なのに、なのに、僕は死にきれなかった…!
助けられてしまったんだ!」

ベルナールの思いがけない告白に、シャルロットはただその場に呆然と立ち尽くすだけだった。 
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