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継承の儀式

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カミーユとの旅は、思いの外、快適だった。
彼はとても細やかな気遣いをしてくれた。
それは私だけに限らず誰に対しても同じで、困っている人をみつけると率先して手を差し伸べる。
それに、彼は、花や鳥の名前、気象の予測の仕方、星や町についての逸話等、いろいろな知識を持ち、話していて飽きることがない。
どうせならもっと勉強をして神父にでもなれば良いものを……
彼の人間性には好感を抱きながらも、つまらない歌を歌い、町の者から小銭をもらう吟遊詩人という職業には、やはり感心はしなかった。
ロザンナに向かう間に立ち寄った町の広場でも、彼はいつも歌を歌って小金を稼いでいたが、私はそんな情け無い姿は見たくなかったので、その間は町をうろうろとして時間を潰した。
どの町にも若い男はそれなりにいたが、目を奪われるような者にはまだ出会ってはいない。
城からの追っ手らしき者もみかけない。
私は今の所うまく逃げ遂せているようだった。



そんな時、私はある町でとても勇ましい光景を目にした。
汗を流し、剣術の稽古をする若い青年に目を奪われた。
周りの者よりも一際体格が良く、顔つきも精悍で男らしい。



「お手合わせ願えないか?」

私は、思わずその青年に声をかけていた。
青年は無邪気な顔で微笑み、「喜んで…!」と答えた。



体格から想像した通り、とても力強い剣だった。
力ではとても敵わない。
ただ、技術はまだ荒削りだ。
おそらく、独学で学んだのだろう。
しっかりと基礎から学び直せば、素晴らしい剣士になれる素質を感じた。



「参った!」



私はなかなか終わらない戦いに終止符を打つべく、自ら負けを宣言した。



「小さいくせして、たいした奴だ!」

握手を交わした後、不意にがっしりと抱き締められ、私は顔が火を吹きそうになるのを感じた。
筋肉質の厚い胸板と固い腕、汗のにおいが私の鼓動を速くした。



「なぁ、皆で飲みに行こうぜ!」

周りの男達から歓声が上がった。
陽気で、統率力があり、私はますます彼に対して好印象を感じた。



ただ、それからは下がる一方だった。
酒が入っているとはいえ、彼の食べ方や飲み方は品がなく、話すことはそれ以上に品のない話ばかりだった。



「ジョッシュ、おまえ、この先どうするんだ?」

「どうするって…?」

「おまえも傭兵にならないか?
そうすりゃあ、たんまりと金が稼げる。」

「君は国のために働こうという気持ちはないのか?」

「馬鹿言うなよ。
平和なこの国で剣は必要ないだろ。
それに、傭兵なら金が……」



私とカミーユはこっそりと、店を後にした。 
 
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