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デスゲーム2日目

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「あ゛~~~痛かった~~~~~~~~~~~~~~」

「お疲れ様です……本当に申し訳ないです……」

「あ~~~遠山さんお疲れ~~~~~、いや~~~~~~こんなことになるとは思わなかったなぁ~~~~~……何があったん?」



 会議前日、まひるさんに頼んで1時間仮死状態になる偽装用ブレスレットを発注し、なんとか当日に間に合った。元々エリさんがつけているブレスレットは何の変哲もないブレスレットだったため、もしあのまま会議が進んでいたら大事故が起きるところだった。本当に危なかった。



「ええとですね……端的に言うと依頼者の水瀬さんが独断で動いているんです」

「あ~そうなんか、なんかこっちもしばらく誰も噛まないでくれーって頼まれてさ。遠山さんに許可を貰ってるって言われて、書類もpdfで送られてきたし、じゃあそうなんかなって」

「偽装ですね……それはこちらのセキュリティ管理不足です。大変申し訳ございませんでした」

「まあまあいいよ、そんで大丈夫なん?この人狼ゲーム」

「正直人狼ゲームとしては破綻しましたね。無意味な身内切りで自分自身を確固たる白にする……クライアントが喜ぶかどうか」

「まあ一応今回は初心者がやるような人狼ゲームが見たいって依頼なんでしょ?多めに見てくれんじゃね?」

「……だといいですね。願うばかりです」

「で、マキちゃんは勝てるん?」

「まあ勝てるでしょうね……身内切りまでしたんですから。ただ……華村カナはどうするのかな、とは思っています」

「どうって?」

「このままスムーズにいけば華村カナは生き残りますよ。どうするつもりなんでしょうか」

「あー確かに」

「……ねえ、鴨志田さん」

「……」



 遠山は鴨志田の方を向く。バツが悪そうに鴨志田はこちらを見返してきた。



「これがプラン通りなんですか?」

「ああ、そうだ……マキの思惑通りだよ」



 この期に及んでまだ水瀬さんを下の名前で呼ぶその精神性にドン引きだが、一旦は置いておこう。



「それに、彼女がどういう人間かは、君が調べた通りだろう……」

「……」

「なに?なんの話?」



 エリがこちらの顔を覗き込む。この人さっきまで死んでたのに随分元気だな……



「水瀬さんを特例として身辺調査したんですよ。このまま好きにさせる訳にいきませんからね」

「へーーーーえっ!!すごいね!?依頼者を!?そんなの初めてじゃない?よくあの頑固頭部長を説得したねぇ~~」

「誰が頑固頭部長だと?」



 背後に明確な殺意をまとう部長が立っていた。あーあ。



「あらあらやだやだ吉田さ~ん!そんな怒んないでくださいよ~冗談じゃないですか!冗談!」

「次は無いからな、全く……あとそのギャルキャラやめろ。もういいだろ」

「長いことやったから中々抜けないんですよ~これ☆キャハ☆」

「本物の毒針ブレスレットをつけておけばよかった……」

「ひっど~~~い!!!」

「あ、あの……お二人ってそんなフランクな関係だったんですか?」

「ああ、言ってなかったか……こいつは私の元部下だ。デスゲーム企画運営課の前のな。殺し屋の方の業務をやっていた時代だ」

「あのころは若かったですなあ~~」



 エリが腕を組みながらうなずいている。え、この人何歳なんだ……?ギャルのキャラ付けの設定が若干古い気はしてたけど……



「遠山気をつけろよ。この会社にはこういう化け物がゴロゴロいるぞ」

「そうだぞー☆」

「は、はい……へへへ」



 笑うことしかできない。



「それで、遠山……まとまったのか?例のブツは……」

「あ、はい。今最後のチェックをしているところです」

「何それ?」

「ん、まだ詳しいことは言えませんが……僕たちの仕事です。デスゲームを企画・運営して、最後までやり切る……そのための武器です」

「ふーん?じゃあもうこのデスゲームはマキちゃんに任せるの?」

「……手綱は握りますよ。最後の一人が水瀬さんになるように、ね」



 賽は投げられた。あとは野となれ山となれ。
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