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第二章
第19話(3) 渡船上のバトル
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「はっ!」
「くっ! 何⁉」
殴りかかってきた黒髪の女の子に戸惑いながら、勇次は後ろに飛んでその攻撃をかわしたかと思ったが、何かに殴られたような衝撃を受ける。
「もう一丁!」
「ちっ! がっ⁉」
再び黒髪が距離を詰めてきたため、勇次は同じ要領でかわそうとするが、かわしきれない。
「ふん! 妖力のわりにはこんなもんか⁉」
(何故だ⁉ かわしたと思ったら別の方向から衝撃が……軌道が読めねえ!)
「畳みかける!」
(拳で殴りにきているわけじゃねえのか⁉ まず、得物を見極めねえと!)
「おらっ!」
「くっ!」
「!」
三度殴りかかってきた黒髪に対し、勇次は金棒を使って受け止め、黒髪の手元を凝視する。
(……短い木の棒⁉ それなのに衝撃は明後日の方角から……ここか!)
勇次は時間差で飛んできたものをかわす。黒髪は舌打ちする。
「ちっ!」
勇次は自分がかわしたものが何かを確認する。
「あ、赤い玉⁉」
「ふん!」
黒髪は糸が付いた穴の空いた赤い玉を木の棒の先端に器用に納める。勇次が信じられないといった表情で声を上げる。
「ま、まさか……けん玉か⁉」
「他に何がある!」
「そ、そんなおもちゃで戦うとか正気か⁉」
「妖にどうこう言われる筋合いはねえ!」
「いや、だから俺は妖じゃなくて……」
「じゃあ、そのほとばしる妖力はなんだ⁉」
「こ、これはその……体質というか……」
「わけのわからんことを!」
「くっ! 仕方ねえ!」
勇次は黒髪の攻撃を受け止め、糸を上手く金棒に巻き付ける。
「なっ⁉」
「少し大人しくしてもらう!」
勇次が叫ぶ。
「こ、根絶させて頂きますって⁉」
一方、甲板の別方向では愛と白髪の女の子が対峙している。愛の腕には糸が絡みついており、その糸は白髪が持っている。
「言葉の通りです」
「私は妖ではないわ!」
「お姉さんからなにやら高い妖力のようなものを感じますが……」
「これは神力よ! 私は神社の家系なの!」
「ふむ……ではお連れの体がほんのりと赤いお兄さんはどう説明するのですか? ここからでも妖力をひしひしと感じますが」
白髪が勇次の方を指し示す。
「あ、あれは……」
「あれは?」
「個人のプライバシーだから私の口から言えないわ!」
「ならば、お姉さんも妖だという疑念は消えないですね」
「信じて!」
「なかなか難しい相談です」
愛の言葉に白髪は困ったように首を傾げる。
「落ち着いて! 話せばわかるわ!」
「まず……お姉さんを大人しくさせます!」
「きゃっ⁉」
白髪が糸を引っ張ると、愛は柵に体を打ち付けられる。その影響で糸が愛の腕から解ける。
「しまった!」
「くっ、仁藤正人……お貸し給へ!」
体勢を立て直した愛は仁藤を二体出現させ、自らを守るように立たせる。白髪は首を捻る。
「その服装……隊服?」
「⁉ 隊服を知っているの……」
「気のせいですね!」
白髪が腕を振るうと、二体の仁藤があっけなく霧消する。愛が愕然とする。
「なっ⁉ 容赦ない!」
「ふっ……」
白髪が糸を引き戻して、短い軸で連なった二つの小さい円盤を手に納める。愛は驚く。
「ま、まさか、ヨーヨー⁉」
「ええ、私はこれを手足のように自由に使えます……お覚悟!」
「朔月望……お貸し給へ!」
「⁉」
愛が一体の朔月を出現させる。
「くっ! 糸が! は、離せ!」
「そう言って離す馬鹿はいない! うおりゃ!」
勇次が黒髪の体ごと持ち上げて、背負い投げのような動きで甲板に叩き付ける。
「ぐはっ……!」
「お、女の子に手荒な真似をするのは気が進まなかったが、仕方がない……」
「……」
「大人しくなったか?」
勇次が仰向けに倒れる黒髪を覗き込もうとする。
「はっ!」
「うおっと!」
黒髪がけん玉を振るい、玉が直線に飛ぶが、勇次はこれをかわす。
「ちっ! 外したか!」
「避けたんだよ! 一回落ち着け!」
「黙れ!」
黒髪が立ち上がって、けん玉を振りかざす。
「……!」
「ヨーヨーが弾かれた⁉ はっ⁉」
朔月が一瞬で白髪の懐に入り、短刀をかざす。愛が叫ぶ。
「峰打ちでお願い!」
「‼」
「がはっ……!」
朔月の攻撃を腹部に喰らい、白髪は膝をつく。愛が近づく。
「お、落ち着いたかしら?」
「えい!」
白髪がヨーヨーを振るい、それを喰らった朔月が霧消する。愛が戸惑う。
「ま、まだ動けるの⁉」
「不用意に接近したのが運の尽きです!」
すくっと立ち上がった白髪がヨーヨーを振りかざす。
「喰らえ! ⁉」
「お覚悟! ⁉」
次の瞬間、黒髪の腕を御剣が素手でがっちりと抑え、投げ込んだ刀で白髪のヨーヨーを器用に巻き込み、どちらも無力化させる。御剣が呆れ気味に呟く。
「何をやっている……」
「「隊長!」」
「「ええっ⁉」」
御剣を見た黒髪と白髪の言葉に勇次と愛が揃って驚く。
「くっ! 何⁉」
殴りかかってきた黒髪の女の子に戸惑いながら、勇次は後ろに飛んでその攻撃をかわしたかと思ったが、何かに殴られたような衝撃を受ける。
「もう一丁!」
「ちっ! がっ⁉」
再び黒髪が距離を詰めてきたため、勇次は同じ要領でかわそうとするが、かわしきれない。
「ふん! 妖力のわりにはこんなもんか⁉」
(何故だ⁉ かわしたと思ったら別の方向から衝撃が……軌道が読めねえ!)
「畳みかける!」
(拳で殴りにきているわけじゃねえのか⁉ まず、得物を見極めねえと!)
「おらっ!」
「くっ!」
「!」
三度殴りかかってきた黒髪に対し、勇次は金棒を使って受け止め、黒髪の手元を凝視する。
(……短い木の棒⁉ それなのに衝撃は明後日の方角から……ここか!)
勇次は時間差で飛んできたものをかわす。黒髪は舌打ちする。
「ちっ!」
勇次は自分がかわしたものが何かを確認する。
「あ、赤い玉⁉」
「ふん!」
黒髪は糸が付いた穴の空いた赤い玉を木の棒の先端に器用に納める。勇次が信じられないといった表情で声を上げる。
「ま、まさか……けん玉か⁉」
「他に何がある!」
「そ、そんなおもちゃで戦うとか正気か⁉」
「妖にどうこう言われる筋合いはねえ!」
「いや、だから俺は妖じゃなくて……」
「じゃあ、そのほとばしる妖力はなんだ⁉」
「こ、これはその……体質というか……」
「わけのわからんことを!」
「くっ! 仕方ねえ!」
勇次は黒髪の攻撃を受け止め、糸を上手く金棒に巻き付ける。
「なっ⁉」
「少し大人しくしてもらう!」
勇次が叫ぶ。
「こ、根絶させて頂きますって⁉」
一方、甲板の別方向では愛と白髪の女の子が対峙している。愛の腕には糸が絡みついており、その糸は白髪が持っている。
「言葉の通りです」
「私は妖ではないわ!」
「お姉さんからなにやら高い妖力のようなものを感じますが……」
「これは神力よ! 私は神社の家系なの!」
「ふむ……ではお連れの体がほんのりと赤いお兄さんはどう説明するのですか? ここからでも妖力をひしひしと感じますが」
白髪が勇次の方を指し示す。
「あ、あれは……」
「あれは?」
「個人のプライバシーだから私の口から言えないわ!」
「ならば、お姉さんも妖だという疑念は消えないですね」
「信じて!」
「なかなか難しい相談です」
愛の言葉に白髪は困ったように首を傾げる。
「落ち着いて! 話せばわかるわ!」
「まず……お姉さんを大人しくさせます!」
「きゃっ⁉」
白髪が糸を引っ張ると、愛は柵に体を打ち付けられる。その影響で糸が愛の腕から解ける。
「しまった!」
「くっ、仁藤正人……お貸し給へ!」
体勢を立て直した愛は仁藤を二体出現させ、自らを守るように立たせる。白髪は首を捻る。
「その服装……隊服?」
「⁉ 隊服を知っているの……」
「気のせいですね!」
白髪が腕を振るうと、二体の仁藤があっけなく霧消する。愛が愕然とする。
「なっ⁉ 容赦ない!」
「ふっ……」
白髪が糸を引き戻して、短い軸で連なった二つの小さい円盤を手に納める。愛は驚く。
「ま、まさか、ヨーヨー⁉」
「ええ、私はこれを手足のように自由に使えます……お覚悟!」
「朔月望……お貸し給へ!」
「⁉」
愛が一体の朔月を出現させる。
「くっ! 糸が! は、離せ!」
「そう言って離す馬鹿はいない! うおりゃ!」
勇次が黒髪の体ごと持ち上げて、背負い投げのような動きで甲板に叩き付ける。
「ぐはっ……!」
「お、女の子に手荒な真似をするのは気が進まなかったが、仕方がない……」
「……」
「大人しくなったか?」
勇次が仰向けに倒れる黒髪を覗き込もうとする。
「はっ!」
「うおっと!」
黒髪がけん玉を振るい、玉が直線に飛ぶが、勇次はこれをかわす。
「ちっ! 外したか!」
「避けたんだよ! 一回落ち着け!」
「黙れ!」
黒髪が立ち上がって、けん玉を振りかざす。
「……!」
「ヨーヨーが弾かれた⁉ はっ⁉」
朔月が一瞬で白髪の懐に入り、短刀をかざす。愛が叫ぶ。
「峰打ちでお願い!」
「‼」
「がはっ……!」
朔月の攻撃を腹部に喰らい、白髪は膝をつく。愛が近づく。
「お、落ち着いたかしら?」
「えい!」
白髪がヨーヨーを振るい、それを喰らった朔月が霧消する。愛が戸惑う。
「ま、まだ動けるの⁉」
「不用意に接近したのが運の尽きです!」
すくっと立ち上がった白髪がヨーヨーを振りかざす。
「喰らえ! ⁉」
「お覚悟! ⁉」
次の瞬間、黒髪の腕を御剣が素手でがっちりと抑え、投げ込んだ刀で白髪のヨーヨーを器用に巻き込み、どちらも無力化させる。御剣が呆れ気味に呟く。
「何をやっている……」
「「隊長!」」
「「ええっ⁉」」
御剣を見た黒髪と白髪の言葉に勇次と愛が揃って驚く。
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