超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!

阿弥陀乃トンマージ

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チャプター1

第12話(4)赤いボタンを押してくれ

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「その戦艦は……!」

「ああ、つい最近就役したドイタール帝国の最新型だね。やや小さいが、大気圏内の戦闘も想定していたからちょうど良い。我々新生ウヨマテチョ公国の艦としてありがたく運用させてもらっているよ」

 五稜郭の南方の海上に浮かぶ戦艦はやや小さいとは言っても、五稜郭を囲む水堀の五分の一程は埋められそうな大きさである。ドッポの通信機能により、回線にアクセスすることが出来た為、ジンライは改めて問う。

「それをどうやって入手した?」

「帝国内にも協力者がいるという話は前にもしただろう? ちょっと融通してもらってね……他にもサイズや用途などは様々だが、今の所は全部で三十隻程か……立ち上げとしてはまずまず数が揃ったかな」

 モニターに映る白髪の青年、ムラクモは両手を大袈裟に広げながら答える。

「その軍服は……」

「ああ、これかい? ウヨマテチョ公国の由緒ある軍服だ。とは言ってもこれも帝国内の協力者に仕立ててもらったんだけどね」

 ムラクモはまだ真新しい軍服の胸元辺りを指先でつまみながら笑う。

「……本当に帝国に反旗を翻すつもりなのだな」

「ああ、そうだよ」

「勿論、今言った戦力が全てではないのだろうが……帝国を甘く見てはいないか?」

「兵力や戦力が多ければ良いわけではない……大事なのはそれを如何に運用するかだよ」

「運用……」

「そう、方法やタイミングなどを的確に見極めるのが何よりも重要なんだ」

 ムラクモが右手の人差し指を立てる。ジンライは目を細めて呟く。

「確かに帝国は戦線を拡大し過ぎている感が否めない……」

「否めないじゃなくてそうなんだよ」

「とは言っても、この辺境で兵を挙げても帝国本土からは遠いぞ」

「呼応してくれる者や協力者は各地にいるよ、上手い具合に帝国に対して楔を打ち込むことが出来るように周到に根回しはしてある。各地に戦力を分散してしまっている今の帝国ではそれを抑えきることは出来ないだろう」

「机上の空論だ」

「まあ、今の所はそう言われても仕方がないかな」

 ムラクモは苦笑を浮かべる。ジンライが声を上げる。

「かっての友として忠告する……今からでもやめるべきだ」

「今更やめられないよ、分かっているだろう?」

「しかし!」

「僕が今、ここで、動いた意味をよく考えてみてくれ」

「……NSPか?」

「その通りだ」

 ムラクモはジンライの答えにウィンクする。

「それほどまでなのか、NSPとは……?」

「未知なる部分が多いというのは認める。しかし、それだけで戦局を変え得ることが出来る可能性を持ったエネルギーだと考えているよ」

「ふむ……」

「どうだい、ジンライ? 僕と手を組まないかい?」

「何を言っている……?」

 ジンライは怪訝な顔つきになる。

「政治的活動を苦手とする君にとっては帝国内での復権はもはや絶望的だ」

「な、なにを……」

「アマザに反乱を起こされた意味をよく考えてみるんだ……君は敵を作り過ぎた」

「お、俺様は帝国の為に戦ってきただけだ!」

「それだけじゃ駄目なんだよ……」

「だ、駄目だと……?」

「古今東西、各地の歴史が証明している……強すぎる存在は時に邪魔になるんだ」

「そ、それこそNSPを手土産にすれば……」

「手土産と言っても、具体的にはどうするんだい?」

「む……」

「ただ手渡して、はいおしまい、じゃないんだよ? 有効な活用法をいくつか提示・模索しつつ、しかるべき研究機関や信頼出来る存在などに預ける必要がある」

「……」

 黙り込むジンライに対し、ムラクモが話を続ける。

「あのエネルギーはそれだけで一国内の微妙なパワーバランスを崩す危険性を秘めている……君がそのエネルギーを政争の具として上手に扱い、巧みに政権内での地位を新たに確立することが出来るとは……悪いがとても思えないね」

「むう……」

「もしかして僕のことを当てにしていたのかな? 確かに僕が手を貸せば、あるいはうまく行ったかもしれないね。ただ、残念ながら、僕は帝国を倒す側に回った。帝国内での権力争いにはもはや何の興味もない」

「ぐっ……」

 ジンライは唇を噛み締める。

「そこで、改めて提案だ。君も僕とともに来い」

「俺様の立場を忘れたのか……? 俺様は皇帝陛下の子だぞ?」

「と言っても養子だろう?」

「それはそうだが……」

「君は君自身のルーツを考えてみたことが無いのか?」

「なんだと?」

「まあ、僕がこれ以上色々言うのは野暮ってものか……話を戻そう。手を組もう」

 ムラクモがモニター越しに手を差し伸べる。

「……断る」

「なに?」

 ムラクモが顔をしかめる。

「聞こえなかったか? 断ると言ったのだ」

「……一応理由を聞こうか」

「その上から目線が気に食わん」

「え?」

「さっきから誰に物を言っている……俺様は『銀河一のヴィラン』、ジンライ様だぞ? 物事を頼むなら、跪いて頭を垂れろ」

「! ははっ……」

 ムラクモが乾いた笑いを浮かべる。

「なにがおかしい?」

「いや、ある意味君らしいかなと思ってね」

「要するに貴様は俺様と袂を分かつという結論を下したわけだ。それならば致し方ない……ただ、NSPは渡せんな」

「自分の状況を分かっているのかい? パワードスーツを脱いでしまっているよ」

「また着ればいい! ……何⁉」

 ジンライはポーズを取るが、パワードスーツが反応しない。ムラクモが笑う。

「ふふっ……」

「そういえば効果があるとかなんとか言っていたな! 何をした⁉」

「天ノ川夫妻の開発した『変身&エトセトラ封印装置』による照射を行っているよ」

「なっ⁉ 変身&エトセトラ封印装置だと⁉」

「これで君も含め、そこに集った地元ヒーローたちは全くの無力だ……」

「くっ……卑怯な手を!」

「せめて策略と言って貰いたいな。そこには天ノ川夫妻の娘さんもいるんだろう? 愛娘を巻き込みたくないという親心の表れだよ。僕としても無駄な戦闘は出来る限り避けたいのでね。ありがたく使わせてもらったよ」

「ぐっ……」

「さあ、悪いことは言わない、おとなしくそこから退避してくれ」

「お、おのれ……」

「NSPは渡さないよ!」

 大二郎の声が響き渡る。ジンライが驚く。

「大二郎⁉ どこにいる⁉ 学園の校舎か⁉」

「舞!」

 大二郎が近くにいると思われる舞に声をかける。

「えっと……この青いボタンを押せば良いの?」

「そう! 思い切ってやっちゃって!」

「わ、分かったわ! ええい!」

 ボタンが押された音がしたかと思うと、ゴゴゴっと音がして、地面が大きく揺れる。

「な、なんだ⁉ 地震か! いや、これは⁉」

 ジンライが目を見張った、地面が急浮上したからである。大二郎の声が再び響く。

「空中戦艦『五稜郭』発進!」

 五稜郭自体が浮上し、あっという間にムラクモの戦艦と同じ高度に達する。

「こ、これは……⁉」

「校舎外にいる皆、大丈夫かい⁉」

 大二郎がドッポのモニターに回線を繋ぎ、様子を聞いてくる。ジンライが聞き返す。

「大二郎、これはどういう状況だ!」

「前世紀末、五稜郭は都市防衛の一環として、空中戦艦としての機能を持たせる計画が進んでいたんだ……様々な事情が重なって、その計画は凍結されていたみたいだけど……NSPを活用することによって、その計画を再始動することが出来たよ!」

「こ、これが貴様の目的だったのか⁉」

「全てではないけど、そうだね! 五稜郭が空を飛ぶなんて、夢があるじゃないか!」

「キラキラした目で言うな! 飛んでどうする⁉」

「舞、その赤いボタンを押してみてくれ」

「えっと……これね。はい、押したわよ」

「主砲発射!」

「ええっ⁉」

 五稜郭から凄まじいエネルギーの奔流が流れ、ムラクモの戦艦の下部に直撃する。

「よし!」

「よし!じゃないわよ! 孫娘に何を撃たせてんのよ!」

「エネルギーはまだ十分ではないし、あの戦艦のあの辺りは誰もいない、無人で稼働するブロックだということはドッポによるデータハッキングで分かっていた。心配ないさ!」

「そ、そういう問題じゃないわよ!」

「ドッポめ、いつの間に……」

 ジンライがドッポを睨む。ドッポは悪びれず答える。

「ハカセカラノイライデ、テイコクノデータベースニアクセスヲココロミテイマシタ」

「貴様、どちらの味方だ?」

「……トニカク、ジンライサマニトッテモイイホウコウニコロガリマシタ」

「なんだと? こ、これは⁉」

「ヘンシン&エトセトラフウインソウチノハカイニセイコウシマシタ」

「!」

「「「「連載開始!」」」」

「「「「風花雪月、見参!」」」」

「函館の平和は」「俺たちが守る!」「航空戦艦と戦うのは初めてだな……」「腕が鳴る」

 青と朱と白と黒の四色が混ざったカラーのパワードスーツを着た風花雪月が現れる。

「『爆ぜろ剣』‼ 魔法少女新誠組副長、菱形十六夜、参る!」

 浅葱色のだんだら模様のドレス姿になった女性が刀を構える。

「テュロン! よし! 変化出来るな!」

「うん! 凸凹護身術がまた使えるわ!」

 大きくなったテュロンに跨ったマコトとデコボコが並び立つ。

「カラーズ・カルテット、出動よ! レッツ!」

「「「「カラーリング!」」」」

「勝利の凱歌を轟かす! シャウトブラウン!」

「栄光の姿を世に示す! メロディーパープル!」

「輝く未来を書き記す! リズムグリーン!」

「蔓延る悪を叩き伏す! ビートオレンジ!」

「四人揃って!」

「「「「カラーズ・カルテット」」」」

 色付きのスーツを着た四人が名乗りと共にポーズを決めると、後方が派手に爆発する。

「べべベアー‼」

 雄叫びとともに、巨大な熊の顔をした巨人が出現する。

「フリージング!ファム・グラス、参上! 愛すべきこの三次元の世界はウチが守る!」

 真っ白なドレス調のスーツに身を包んだ女性が優雅にターンを決める。

「甲殻起動!この世の悪を挟み込み! 正義の心で切り刻む! クラブマン参上!」

 掛け声とともに頭部がカニで、両腕が大きなハサミを持った男がポーズを決める。

「貴様ら……」

「ジンライ! 函館を守って!」

 舞の声が聞こえてくると、ジンライは力強く頷く。

「吹けよ、疾風!轟け、迅雷!疾風迅雷、参上!貴様らの邪な野望は俺様が打ち砕く‼」

 パワードスーツを着用した疾風迅雷がポーズを取る。

「くっ……」

「ムラクモ! NSPは貴様には渡さん!」

 疾風迅雷が対面する戦艦に向かって指を差す。
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