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チャプター1
第11話(2)パワー!
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「お、おい、やっぱ戻ろうぜ……」
「お前なに言ってんだよ! 戦闘の生配信……こんなバズるネタ、そうそうないぜ?」
五稜郭学園の正面入口前にかかる二の橋付近で、二人の男子高校生が話している。
「で、でもよ……すげえ音聞こえてくるし……勧告通り退避した方が……」
「配信者としてこんなチャンス逃せねえんだよ! よし! あ、あれ?」
ノリノリの男子が端末を構えるが、首を傾げる。及び腰の男子が尋ねる。
「ど、どうした?」
「い、いや、勝手にゲームアプリが起動してよ……う、うわっ⁉」
端末が光り、画面から何体かのキャラクターが一斉に飛び出す。皆肌が薄緑色で頭部に二本の短い角が生えた異形の姿をしている。
「あ、あれは『グラクロ』の敵キャラ⁉ お前、何やったんだよ⁉」
「そ、そんなこと聞かれても分かんねえよ! ⁉」
「ふっ……場所はわりかし正確だったな……」
「ゲ、ゲエッ⁉」
「に、逃げろ⁉」
甲冑を身に纏い長刀を手にした者の姿を見た高校生二人は慌ててその場から逃げ出す。
「ふむ……古の武人で軍神と謳われる者の姿か、悪くはないな……」
武人の姿をした者は自身の姿を冷静に確認する。異形の者が尋ねる。
「プロフェッサーレオイ、指示を……」
「NSPの反応はこの先だ。兵士たちよ、速やかに橋を渡れ」
「はっ!」
兵士たちがレオイの指示を受け、走り出す。レオイは呟く。
「様々な勢力がNSPを狙って動いているようだ……ここで後れをとってしまっては多次元犯罪組織ミルアムの名折れというもの……」
「ぐえっ⁉」
兵士の叫び声が聞こえる。
「む……?」
「悪いけど、ここから先は通行禁止だから♪ ……ってか、寒っ!」
ミニスカートで白髪の少女が身体を少し震わせながら立っている。
「誰かと思ったら香里愛衣子か……君もいい加減しつこいな」
「それはこっちの台詞だし。ってかさ……」
「ん?」
「その口調はもしかしてプロフェッサーレオイ? 随分可愛い声しているね、ウケる~」
愛衣子がレオイを指差して笑う。そう、レオイは重々しい甲冑こそ身に着けているが、顔や身体つきなどは美少女のそれなのである。
「わ、笑うな!」
「いやいや、それは笑うでしょ」
「こういうキャラクターなのだから致し方ないだろう!」
「身体を借りるならさ、もうちょっとよく選んだら?」
「余計なお世話だ! お前ら、さっさと進め!」
レオイは美少女ボイスで檄を飛ばす。兵士たちが進軍を再開する。
「そうはさせないよ! フリージング!」
愛衣子が真っ白なドレス調のスーツに身を包む。
「!」
「ファム・グラス、参上! 愛すべきこの三次元の世界はウチが守る!」
ファム・グラスがポーズを取る。兵士たちがやや怯む。
「ぐぬっ!」
「『スケートオンアイス・テクニック』!」
ファム・グラスの靴底に刃が出て、さらにファム・グラスの立つ周辺の橋が一瞬で凍りつき、ファム・グラスはそこを颯爽と滑り出す。まるでフィギュアスケートをこなすかのような動きで兵士たちの群れにあっという間に接近し、その中心に入り込む。
「むっ⁉」
「めんどいからちょっぱやでケリをつけるよ! キャメルスピン!」
「うおっ⁉」
ファム・グラスは上半身を倒して、右足を腰より上の位置に上げ、T字になるようにして高速でスピンする。すると、巻き上がった氷が兵士たちの体を凍らせてしまった。
「一丁上がり! お次は誰⁉」
「む、むう……」
「因縁のある相手だが、無理に戦わなくても良い! とにかく対岸に渡れ!」
レオイが指示する。兵士の一人が言い辛そうに答える。
「し、しかし、橋が凍って、通行が困難です……」
「頭を使え! 堀を泳いで渡るなど、いくらでもやりようはある!」
「な、なるほど!」
兵士たちは橋から堀に飛び込む。
「オールフリージング!」
「⁉」
ファム・グラスが手をかざすと、堀の水が一瞬で凍って、飛び込んだ兵士たちも動かなくなってしまった。ファム・グラスが笑う。
「こういうことも出来るんだよ? 大した頭の使い方だね? ひょっとしてウケ狙い?」
「ちっ……」
「さて、残りはアンタだけだけど、どうする? せっかくだから女子会でもする?」
「馬鹿にするな! 来い! 青兎!」
「なっ⁉」
地面に落ちていた端末が光ったかと思うと、青鹿毛色をした見事な馬体の馬が勢いよく飛び出してくる。レオイはその馬に飛び乗り、走り出す。
「この程度の氷、飛び越えるまで!」
「し、しまった!」
レオイが馬を跳躍させ、橋の凍っていた部分を軽々と飛び越えてみせる。
「君と遊んでいる暇はない! 目的を優先する!」
「くっ! 『スケートオンアイス・スピード』!」
「なにっ⁉」
ファム・グラスの靴底に別の種類の刃が現れ、スピードスケートの様に滑り出して、あっという間にレオイの前方に回り込む。
「この先には行かせない!」
「手荒な真似はしたくないのだが!」
「きゃっ⁉」
レオイが物凄い勢いで振り下ろした長刀が地面を抉る。なんとかそれを躱したファム・グラスだったが、その威力に驚嘆する。レオイが長刀を構え直し、淡々と呟く。
「姿形は美少女といえ、あまり侮るなよ、魂は軍神のそれだ……」
「くっ……」
「これで終わりだ!」
「そうはさせん!」
「なに⁉」
レオイが振るった長刀を、駆け付けた疾風迅雷がキックで受け止める。
「ジ、ジンライっち⁉」
「お、お前は⁉」
「ミルアムの幹部か、妙な恰好をしているが……」
「『グランド・クロニクル』ってソシャゲの星5キャラだよ」
「厄介な相手ということか……」
ファム・グラスの説明にジンライが頷く。
「ふん、一人増えたくらいで状況は変わらん! このパワーの差は埋められんだろう!」
「ふふっ、そうかしら?」
「なんだと?」
ファム・グラスが不敵な笑みを浮かべる。
「『スケートオンアイス・パワー』!」
ファム・グラスの靴底にまた別の種類の刃が現れ、上半身下半身とも、特殊なスーツが現れ、細い身体が倍くらいの大きさに膨れ上がる。ジンライが驚く。
「そ、その姿は⁉」
「アイスホッケーだよ! それ!」
「ぐおっ⁉」
ファム・グラスが強烈な体当たりをかまし、馬が転倒し、レオイが地面に転がる。
「どうよ、うちのタックルは⁉ パワーの差も埋まったね!」
「くそっ! ならばこの長刀で始末する!」
すぐさま立ち上がったレオイは長刀を振り回し、威嚇する。ジンライが呟く。
「くっ、迂闊には飛び込めんな……」
「ジンライっち! アドリブになるけど、ウチに合わせて!」
「策があるのか⁉ 分かった!」
「それ!」
ファム・グラスが素早くレオイから見て右側に回り込む。疾風迅雷はそれを見て、反対側に回り込み、レオイを挟み込む形を取る。
「む!」
「行くよ!」
ファム・グラスの手にスティックが現れ、さらに足元に黒い円盤が現れる。アイスホッケーで使用されるパックである。ファム・グラスはスティックを振り、パックを打ち込む。パックは物凄いスピードで疾風迅雷に向かって滑って行く。
「ふん……! 『カラーフォーム』! 『マゼンタ』モード!」
疾風迅雷のパワードスーツが赤紫色になる。レオイが驚く。
「そ、それは⁉」
「視覚と触覚を研ぎ澄ました! 見える! そこだ!」
疾風迅雷がパックをファム・グラスに向かって正確に蹴り返す。
「ナイス! 『バッティングショット』!」
「ぐはっ⁉」
ファム・グラスが打ち返したパックがレオイの身体に当たる。レオイは膝をつく。
「もらった!」
「おのれ!」
「なっ⁉」
畳み掛けようと、ファム・グラスが迫ったが、レオイは馬とともに姿を消した。
「逃がしたか……『特殊次元転移装置』という奴だな……」
疾風迅雷の近くに滑り寄ってきたファム・グラスが言い辛そうに口を開く。
「ごめん、助けにきたつもりが助けられちゃって……」
「気にするな、俺様は行く所がある! カニ男か、舞の援護を頼む!」
ジンライは忙しく、その場から走り去る。
「ふふっ、挽回のチャンスはまだあるか……よっしゃ! 切り替えて行こう♪」
ファム・グラスは元気よく滑り出す。
「お前なに言ってんだよ! 戦闘の生配信……こんなバズるネタ、そうそうないぜ?」
五稜郭学園の正面入口前にかかる二の橋付近で、二人の男子高校生が話している。
「で、でもよ……すげえ音聞こえてくるし……勧告通り退避した方が……」
「配信者としてこんなチャンス逃せねえんだよ! よし! あ、あれ?」
ノリノリの男子が端末を構えるが、首を傾げる。及び腰の男子が尋ねる。
「ど、どうした?」
「い、いや、勝手にゲームアプリが起動してよ……う、うわっ⁉」
端末が光り、画面から何体かのキャラクターが一斉に飛び出す。皆肌が薄緑色で頭部に二本の短い角が生えた異形の姿をしている。
「あ、あれは『グラクロ』の敵キャラ⁉ お前、何やったんだよ⁉」
「そ、そんなこと聞かれても分かんねえよ! ⁉」
「ふっ……場所はわりかし正確だったな……」
「ゲ、ゲエッ⁉」
「に、逃げろ⁉」
甲冑を身に纏い長刀を手にした者の姿を見た高校生二人は慌ててその場から逃げ出す。
「ふむ……古の武人で軍神と謳われる者の姿か、悪くはないな……」
武人の姿をした者は自身の姿を冷静に確認する。異形の者が尋ねる。
「プロフェッサーレオイ、指示を……」
「NSPの反応はこの先だ。兵士たちよ、速やかに橋を渡れ」
「はっ!」
兵士たちがレオイの指示を受け、走り出す。レオイは呟く。
「様々な勢力がNSPを狙って動いているようだ……ここで後れをとってしまっては多次元犯罪組織ミルアムの名折れというもの……」
「ぐえっ⁉」
兵士の叫び声が聞こえる。
「む……?」
「悪いけど、ここから先は通行禁止だから♪ ……ってか、寒っ!」
ミニスカートで白髪の少女が身体を少し震わせながら立っている。
「誰かと思ったら香里愛衣子か……君もいい加減しつこいな」
「それはこっちの台詞だし。ってかさ……」
「ん?」
「その口調はもしかしてプロフェッサーレオイ? 随分可愛い声しているね、ウケる~」
愛衣子がレオイを指差して笑う。そう、レオイは重々しい甲冑こそ身に着けているが、顔や身体つきなどは美少女のそれなのである。
「わ、笑うな!」
「いやいや、それは笑うでしょ」
「こういうキャラクターなのだから致し方ないだろう!」
「身体を借りるならさ、もうちょっとよく選んだら?」
「余計なお世話だ! お前ら、さっさと進め!」
レオイは美少女ボイスで檄を飛ばす。兵士たちが進軍を再開する。
「そうはさせないよ! フリージング!」
愛衣子が真っ白なドレス調のスーツに身を包む。
「!」
「ファム・グラス、参上! 愛すべきこの三次元の世界はウチが守る!」
ファム・グラスがポーズを取る。兵士たちがやや怯む。
「ぐぬっ!」
「『スケートオンアイス・テクニック』!」
ファム・グラスの靴底に刃が出て、さらにファム・グラスの立つ周辺の橋が一瞬で凍りつき、ファム・グラスはそこを颯爽と滑り出す。まるでフィギュアスケートをこなすかのような動きで兵士たちの群れにあっという間に接近し、その中心に入り込む。
「むっ⁉」
「めんどいからちょっぱやでケリをつけるよ! キャメルスピン!」
「うおっ⁉」
ファム・グラスは上半身を倒して、右足を腰より上の位置に上げ、T字になるようにして高速でスピンする。すると、巻き上がった氷が兵士たちの体を凍らせてしまった。
「一丁上がり! お次は誰⁉」
「む、むう……」
「因縁のある相手だが、無理に戦わなくても良い! とにかく対岸に渡れ!」
レオイが指示する。兵士の一人が言い辛そうに答える。
「し、しかし、橋が凍って、通行が困難です……」
「頭を使え! 堀を泳いで渡るなど、いくらでもやりようはある!」
「な、なるほど!」
兵士たちは橋から堀に飛び込む。
「オールフリージング!」
「⁉」
ファム・グラスが手をかざすと、堀の水が一瞬で凍って、飛び込んだ兵士たちも動かなくなってしまった。ファム・グラスが笑う。
「こういうことも出来るんだよ? 大した頭の使い方だね? ひょっとしてウケ狙い?」
「ちっ……」
「さて、残りはアンタだけだけど、どうする? せっかくだから女子会でもする?」
「馬鹿にするな! 来い! 青兎!」
「なっ⁉」
地面に落ちていた端末が光ったかと思うと、青鹿毛色をした見事な馬体の馬が勢いよく飛び出してくる。レオイはその馬に飛び乗り、走り出す。
「この程度の氷、飛び越えるまで!」
「し、しまった!」
レオイが馬を跳躍させ、橋の凍っていた部分を軽々と飛び越えてみせる。
「君と遊んでいる暇はない! 目的を優先する!」
「くっ! 『スケートオンアイス・スピード』!」
「なにっ⁉」
ファム・グラスの靴底に別の種類の刃が現れ、スピードスケートの様に滑り出して、あっという間にレオイの前方に回り込む。
「この先には行かせない!」
「手荒な真似はしたくないのだが!」
「きゃっ⁉」
レオイが物凄い勢いで振り下ろした長刀が地面を抉る。なんとかそれを躱したファム・グラスだったが、その威力に驚嘆する。レオイが長刀を構え直し、淡々と呟く。
「姿形は美少女といえ、あまり侮るなよ、魂は軍神のそれだ……」
「くっ……」
「これで終わりだ!」
「そうはさせん!」
「なに⁉」
レオイが振るった長刀を、駆け付けた疾風迅雷がキックで受け止める。
「ジ、ジンライっち⁉」
「お、お前は⁉」
「ミルアムの幹部か、妙な恰好をしているが……」
「『グランド・クロニクル』ってソシャゲの星5キャラだよ」
「厄介な相手ということか……」
ファム・グラスの説明にジンライが頷く。
「ふん、一人増えたくらいで状況は変わらん! このパワーの差は埋められんだろう!」
「ふふっ、そうかしら?」
「なんだと?」
ファム・グラスが不敵な笑みを浮かべる。
「『スケートオンアイス・パワー』!」
ファム・グラスの靴底にまた別の種類の刃が現れ、上半身下半身とも、特殊なスーツが現れ、細い身体が倍くらいの大きさに膨れ上がる。ジンライが驚く。
「そ、その姿は⁉」
「アイスホッケーだよ! それ!」
「ぐおっ⁉」
ファム・グラスが強烈な体当たりをかまし、馬が転倒し、レオイが地面に転がる。
「どうよ、うちのタックルは⁉ パワーの差も埋まったね!」
「くそっ! ならばこの長刀で始末する!」
すぐさま立ち上がったレオイは長刀を振り回し、威嚇する。ジンライが呟く。
「くっ、迂闊には飛び込めんな……」
「ジンライっち! アドリブになるけど、ウチに合わせて!」
「策があるのか⁉ 分かった!」
「それ!」
ファム・グラスが素早くレオイから見て右側に回り込む。疾風迅雷はそれを見て、反対側に回り込み、レオイを挟み込む形を取る。
「む!」
「行くよ!」
ファム・グラスの手にスティックが現れ、さらに足元に黒い円盤が現れる。アイスホッケーで使用されるパックである。ファム・グラスはスティックを振り、パックを打ち込む。パックは物凄いスピードで疾風迅雷に向かって滑って行く。
「ふん……! 『カラーフォーム』! 『マゼンタ』モード!」
疾風迅雷のパワードスーツが赤紫色になる。レオイが驚く。
「そ、それは⁉」
「視覚と触覚を研ぎ澄ました! 見える! そこだ!」
疾風迅雷がパックをファム・グラスに向かって正確に蹴り返す。
「ナイス! 『バッティングショット』!」
「ぐはっ⁉」
ファム・グラスが打ち返したパックがレオイの身体に当たる。レオイは膝をつく。
「もらった!」
「おのれ!」
「なっ⁉」
畳み掛けようと、ファム・グラスが迫ったが、レオイは馬とともに姿を消した。
「逃がしたか……『特殊次元転移装置』という奴だな……」
疾風迅雷の近くに滑り寄ってきたファム・グラスが言い辛そうに口を開く。
「ごめん、助けにきたつもりが助けられちゃって……」
「気にするな、俺様は行く所がある! カニ男か、舞の援護を頼む!」
ジンライは忙しく、その場から走り去る。
「ふふっ、挽回のチャンスはまだあるか……よっしゃ! 切り替えて行こう♪」
ファム・グラスは元気よく滑り出す。
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