30 / 62
チャプター1
第8話(2)ほぼ知らない人たちのイベントを観覧
しおりを挟む
「往来で大声を上げるな、迷惑だろう……」
「ヴィランに諭された!」
「とにかく入るぞ」
「ちょ、ちょっと待って!」
「なんだ……」
舞に腕を引っ張られたジンライはウンザリ気味に呟く。
「百歩譲って、イベント観覧はいいわ。でも誰よ、シーズンズって?」
「シーズンズを知らないだと?」
「生憎、ちっとも!」
「正気とは思えんな……」
ジンライは信じられないと言った表情で舞を見る。
「そ、そこまで言われるほど⁉ 漫画はそれほど見ないのよ。代表作は?」
「……ドッポ、教えてやれ」
ジンライは車から通常形態に戻って、自らの肩に乗ったドッポに説明を促す。
「サクヒンメイハ『キ』デハジマリ、ゴモジメガ『イ』デス」
「なによ、その微妙なヒントは……」
「ゲキジョウバンアニメモダイヒットシマシタネ」
「あ! 分かった! え? 『鬼○の刃』⁉」
「違う」
「違うの⁉」
ジンライはやや呆れ気味に答えを言う。
「『季節の合間』だ」
「なにそれ⁉」
「人と人外の生物によって織り成される季節の合間を描いたハートウォーミングな作品だ」
「し、知らないわ!」
「アニメでは食卓シーンのハイクオリティな作画が話題を呼んだ……」
「ほ、本当に話題を呼んだの?」
「特にあの里芋の煮っころがしの作画は世界のSNSを席巻した……」
「クオリティ高めるところ間違っていない?」
「全く、季節の合間も知らんとは……」
ジンライはため息をつく。
「ほ、他にはないの?」
「……ドッポ」
「サクヒンメイニ『ジュツ』ガハイリ、『カイセン』デオワリマス」
「また、クセのあるヒントの出し方ね……でも分かったわ! 『呪術○戦』ね!」
「……違う」
「え⁉」
「『手術海鮮』だ」
「はい? なによ、それ?」
「医者として手術をする二人が、オフの日には仲良く釣りを楽しむストーリーだ」
「し、知らない! ってか、どんなストーリーよ!」
「医療漫画としてだけでなく、釣り漫画、グルメ漫画の側面も併せ持つ贅沢な作品だな」
「コンセプトがぶれていない?」
「むしろそこが良いと評価されている」
「どこで評価されているのよ……」
「季節も手術も知らん奴がいるとはな……国民的少女漫画だぞ?」
ジンライが軽く頭を抑える。
「え、少女漫画なの⁉」
「まあいい、そろそろ時間だ、店に入るぞ……」
ジンライたちがビルに入り、イベントが行われる会場に着く。
「イベントのお客さん、99%女性ね……」
「良いものに性別など関係ない……いわんや星の違いもな」
「説得力ある物言いね……あ、そろそろ始まるみたいよ」
司会者が壇上に上がり、イベントの開始を告げる。
「それではトークショーを始めさせて頂きます……シーズンズの皆さんです!」
「きゃあああー!」
女性客から黄色い歓声が上がる。四人の端正なルックスの男性がステージに現れる。
「よ、四人組なのね……」
「複数連載を抱えているからな、一人二人ではなかなか大変なのだろう」
「ヨニンソレゾレノサッカテキキャラクター、パーソナリティヲツカイワケタサクフウニテイヒョウガアリマス」
「そ、そうなの……」
ジンライとドッポの説明に舞が頷く。四人組が自己紹介を始める。
「桜花青春(おうかせいしゅん)です! よろしく!」
すらっとしたスタイルで、短い青髪の男性が挨拶する。
「その名の通り、青春を題材にした作品が多い。読者の間では『エモい』担当とされている」
「エモい担当……青春を題材……学園ものとか?」
「そうだな、後、スポーツものが多い、『苦虫マダム』とかな」
「どんなスポーツものよ……マダムとエモさはなかなか結びつかないでしょ……」
「疾風朱夏(はやてしゅか)です……よろしくお願いします……」
四人組の中では小柄な、少年と言ってもいいルックスの朱髪の男性が挨拶する。
「恋愛や日常ものが多い。担当は『尊い』だな。疾風というがもしや……」
「ああ、はとこよ、ほとんど会ったことはないけど、まさか漫画家になっていたとはね」
「ふむ、世間は意外と狭いものだな……代表作は『手洗いミューズの赤木さん』だ」
「どういう恋愛ものよ……」
「佳月白秋(かげつはくしゅう)だ。よろしく頼む……」
やや斜に構えた態度の白髪の男性が挨拶する。
「バトルや歴史ものを多く手掛けている。『エグい』担当だ」
「エグい担当って……」
「主に戦闘描写がな。それが良いという読者もいる。『文具のり』がヒットした」
「文具でどうエグさを出すのよ……」
「吹雪玄冬(ふぶきげんとう)……よろしく……」
四人の中では一番筋肉質で、黒髪の男性が挨拶する。
「『チルい』担当だな。見た目に反してエッセイ風やほのぼのギャグ作品が多い」
「チルい?」
「落ち着く作風ということだ。『今朝、なに食べたっけ?』とかな」
「どんな漫画よ……っていうか、さっきから一つも知らない漫画ばかりなんだけど」
首を傾げる舞をよそに、司会者が話し始める。
「……さて、四人にご挨拶頂きました。まずはトークショーの方を始めさせて頂きます……」
「きゃあー⁉」
女性の悲鳴が響き、ビルの窓が割れる。舞が驚く。
「な、なに⁉」
「! あれは……」
窓に駆け寄り、外を見下ろしたジンライが目を見開く。そこには灰色のパワードスーツに身を包んだ者が数人、茶色のパワードスーツを着た者が一人いた。茶色のスーツが叫ぶ。
「我々はドイタール帝国第十三艦隊特殊独立部隊である! 突然だがこの都市は我々の支配下とする! 無駄な抵抗はしないことだ。さもないと……」
「!」
茶色のスーツが周囲のビルの壁や窓ガラスに銃撃を加える。群衆はパニックに陥る。
「ジ、ジンライ!」
「奴らめ……ん⁉」
「行きますよ!」
「なっ⁉」
朱髪の男性の掛け声でシーズンズの四人が窓から勢いよく飛び出し、ジンライは驚く。
「ヴィランに諭された!」
「とにかく入るぞ」
「ちょ、ちょっと待って!」
「なんだ……」
舞に腕を引っ張られたジンライはウンザリ気味に呟く。
「百歩譲って、イベント観覧はいいわ。でも誰よ、シーズンズって?」
「シーズンズを知らないだと?」
「生憎、ちっとも!」
「正気とは思えんな……」
ジンライは信じられないと言った表情で舞を見る。
「そ、そこまで言われるほど⁉ 漫画はそれほど見ないのよ。代表作は?」
「……ドッポ、教えてやれ」
ジンライは車から通常形態に戻って、自らの肩に乗ったドッポに説明を促す。
「サクヒンメイハ『キ』デハジマリ、ゴモジメガ『イ』デス」
「なによ、その微妙なヒントは……」
「ゲキジョウバンアニメモダイヒットシマシタネ」
「あ! 分かった! え? 『鬼○の刃』⁉」
「違う」
「違うの⁉」
ジンライはやや呆れ気味に答えを言う。
「『季節の合間』だ」
「なにそれ⁉」
「人と人外の生物によって織り成される季節の合間を描いたハートウォーミングな作品だ」
「し、知らないわ!」
「アニメでは食卓シーンのハイクオリティな作画が話題を呼んだ……」
「ほ、本当に話題を呼んだの?」
「特にあの里芋の煮っころがしの作画は世界のSNSを席巻した……」
「クオリティ高めるところ間違っていない?」
「全く、季節の合間も知らんとは……」
ジンライはため息をつく。
「ほ、他にはないの?」
「……ドッポ」
「サクヒンメイニ『ジュツ』ガハイリ、『カイセン』デオワリマス」
「また、クセのあるヒントの出し方ね……でも分かったわ! 『呪術○戦』ね!」
「……違う」
「え⁉」
「『手術海鮮』だ」
「はい? なによ、それ?」
「医者として手術をする二人が、オフの日には仲良く釣りを楽しむストーリーだ」
「し、知らない! ってか、どんなストーリーよ!」
「医療漫画としてだけでなく、釣り漫画、グルメ漫画の側面も併せ持つ贅沢な作品だな」
「コンセプトがぶれていない?」
「むしろそこが良いと評価されている」
「どこで評価されているのよ……」
「季節も手術も知らん奴がいるとはな……国民的少女漫画だぞ?」
ジンライが軽く頭を抑える。
「え、少女漫画なの⁉」
「まあいい、そろそろ時間だ、店に入るぞ……」
ジンライたちがビルに入り、イベントが行われる会場に着く。
「イベントのお客さん、99%女性ね……」
「良いものに性別など関係ない……いわんや星の違いもな」
「説得力ある物言いね……あ、そろそろ始まるみたいよ」
司会者が壇上に上がり、イベントの開始を告げる。
「それではトークショーを始めさせて頂きます……シーズンズの皆さんです!」
「きゃあああー!」
女性客から黄色い歓声が上がる。四人の端正なルックスの男性がステージに現れる。
「よ、四人組なのね……」
「複数連載を抱えているからな、一人二人ではなかなか大変なのだろう」
「ヨニンソレゾレノサッカテキキャラクター、パーソナリティヲツカイワケタサクフウニテイヒョウガアリマス」
「そ、そうなの……」
ジンライとドッポの説明に舞が頷く。四人組が自己紹介を始める。
「桜花青春(おうかせいしゅん)です! よろしく!」
すらっとしたスタイルで、短い青髪の男性が挨拶する。
「その名の通り、青春を題材にした作品が多い。読者の間では『エモい』担当とされている」
「エモい担当……青春を題材……学園ものとか?」
「そうだな、後、スポーツものが多い、『苦虫マダム』とかな」
「どんなスポーツものよ……マダムとエモさはなかなか結びつかないでしょ……」
「疾風朱夏(はやてしゅか)です……よろしくお願いします……」
四人組の中では小柄な、少年と言ってもいいルックスの朱髪の男性が挨拶する。
「恋愛や日常ものが多い。担当は『尊い』だな。疾風というがもしや……」
「ああ、はとこよ、ほとんど会ったことはないけど、まさか漫画家になっていたとはね」
「ふむ、世間は意外と狭いものだな……代表作は『手洗いミューズの赤木さん』だ」
「どういう恋愛ものよ……」
「佳月白秋(かげつはくしゅう)だ。よろしく頼む……」
やや斜に構えた態度の白髪の男性が挨拶する。
「バトルや歴史ものを多く手掛けている。『エグい』担当だ」
「エグい担当って……」
「主に戦闘描写がな。それが良いという読者もいる。『文具のり』がヒットした」
「文具でどうエグさを出すのよ……」
「吹雪玄冬(ふぶきげんとう)……よろしく……」
四人の中では一番筋肉質で、黒髪の男性が挨拶する。
「『チルい』担当だな。見た目に反してエッセイ風やほのぼのギャグ作品が多い」
「チルい?」
「落ち着く作風ということだ。『今朝、なに食べたっけ?』とかな」
「どんな漫画よ……っていうか、さっきから一つも知らない漫画ばかりなんだけど」
首を傾げる舞をよそに、司会者が話し始める。
「……さて、四人にご挨拶頂きました。まずはトークショーの方を始めさせて頂きます……」
「きゃあー⁉」
女性の悲鳴が響き、ビルの窓が割れる。舞が驚く。
「な、なに⁉」
「! あれは……」
窓に駆け寄り、外を見下ろしたジンライが目を見開く。そこには灰色のパワードスーツに身を包んだ者が数人、茶色のパワードスーツを着た者が一人いた。茶色のスーツが叫ぶ。
「我々はドイタール帝国第十三艦隊特殊独立部隊である! 突然だがこの都市は我々の支配下とする! 無駄な抵抗はしないことだ。さもないと……」
「!」
茶色のスーツが周囲のビルの壁や窓ガラスに銃撃を加える。群衆はパニックに陥る。
「ジ、ジンライ!」
「奴らめ……ん⁉」
「行きますよ!」
「なっ⁉」
朱髪の男性の掛け声でシーズンズの四人が窓から勢いよく飛び出し、ジンライは驚く。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
染髪マン〜髪色で能力が変わる俺はヒーロー活動を始めました〜
仮面大将G
ファンタジー
金髪にしたらヒーローになっちゃった!?
大学生になったから髪を染めてみよう。そんな軽い気持ちで美容室に行った染谷柊吾が、半分騙されてヒーロー活動を始めます。
対するは黒髪しか認めない、秘密結社クロゾーメ軍団!黒染めの圧力を押しのけ、自由を掴み取れ!
大学デビューから始まる髪染めヒーローファンタジー!
※小説家になろう様、カクヨム様でも同作品を掲載しております。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる