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第1章
第5話(4)ツインアタック活用
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「なんだ?」
「ササ……」
「ブブ……」
唐傘お化けの影と古代魚の影が合わさって、一つの大きな影になり、それが数体、川から陸に上がってくる。三丸が驚く。
「なにっ……融合しただと⁉」
「これはこれは……先日に引き続いて、こういうケースに遭遇するとはね……」
三丸の横で夜塚が顎をさする。
「サブブッ!」
「古代魚に足が生えた⁉」
「キモッ!」
竜の隣で、花が顔をしかめる。
「ササブブッ!」
「あ、歩いている!」
「ますますキモッ!」
「陸地を歩き回られたら厄介だね……」
「さっさと片付けるか……」
「ああ、ちょい待ち、松っちゃん」
「……」
「松ちゃんって」
「………」
三丸は夜塚の言葉を無視する。
「……三丸隊長」
「なんだ?」
「ここは彼らに任せよう」
「彼ら?」
「我が隊員たちにだよ」
夜塚が大海たちを指し示す。
「なんだと? 本気か?」
「本気も本気さ。実戦経験に勝る訓練はない」
夜塚が首をすくめる。
「しかし……」
三丸が顎をさする。
「考えている暇はそれほどないよ」
「……良いだろう」
三丸が頷く。
「理解を得られて嬉しく思うよ」
夜塚が笑顔を浮かべる。
「最初はどうする?」
三丸が尋ねる。
「まずは数を減らしたい」
夜塚が影の方を指差す。
「ああ……」
「ちょっとばかり多すぎるからね」
「そうだな」
「というわけで……氷刃隊員!」
「え⁉ は、はい!」
夜塚から突然呼びかけられ、陸人が驚く。
「ブレスレットを着けて!」
「は、はい!」
陸人が右腕にブレスレットを着ける。
「星野隊員!」
「はい!」
「ブレスレットを……」
「もう着けています!」
「さすがだ……二人とも右腕をかざして!」
「はい!」
「は、はい! ……な、なんだ、光に包まれている? この不思議な感覚は……」
陸人が腕をかざしながら月と同じ色の光に包まれた自らの体を見て首を傾げる。夜塚が月に対して声をかける。
「星野隊員、影の数を減らしたい!」
「はっ!」
「やり方は君らに任せる!」
「了解! はっ!」
「えっ⁉」
月がひとっ飛びで、川の対岸に着く。
「失礼!」
月が陸人の体を抱え込む。陸人が困惑する。
「えっ! えっ⁉」
「はあっ!」
「ええっ⁉」
月が陸人を抱えて空中高く飛び上がる。
「空中からなら影たちの様子がよく分かりますね!」
「た、高いところ怖い!」
「少しくらい我慢してください!」
「そ、そんな!」
「手を離しますよ!」
「ええっ⁉ ちょっと⁉」
「すぐ掴みますから!」
「いやあ!」
「嫌じゃない! 構え!」
「むっ⁉」
月が弓矢を、陸人が銃を構える。
「放て!」
「おおっ!」
「サブブッ⁉」
月と陸人の射撃を上から食らい、多くの影が霧消する。夜塚が頷く。
「ふむ、大分減らせたね……」
「二人とも見事な射撃だ。ブレスレットの補正もあるのだろうが、空中での姿勢制御もほぼ完璧だったな……」
三丸が感心する。
「さながら『射撃雨嵐』だね!」
「……ネーミングはどうでも良い」
「あらら……」
「さあ、氷刃隊員、降りますよ!」
空中で陸人を掴み直した月が告げる。
「お、お願いします!」
「ただ、ここでひとつ、残念なお知らせがあります……」
「え?」
「アタシは着地するのが致命的に下手なのです」
「えええっ⁉」
「いや、ちょっとだけですよ? ちょっとだけ……」
「ちょっとだけでも致命的な時点でアウトなんですよ!」
「川の方に落ちれば大丈夫! ブレスレットのお陰で身体も強化されているから!」
「いやああ!」
月と陸人がわめきながら着水する。三丸が夜塚に尋ねる。
「……大丈夫か?」
「大丈夫でしょ、それじゃあ、志波田隊員!」
「おう!」
「古前田隊員!」
「おうよ!」
「二人は細かいことを考えずに攻撃!」
「おおっ!」
「うおおっ!」
「サブブブッ⁉」
蘭と慶の金棒と槍での攻撃を食らった影が霧消する。
「ふむ! 『鬼も内! 仏も内!』って感じだね!」
「……却下」
「えっ⁉ ダメ⁉」
「長い、『鬼仏双撃』くらいでいいだろう」
「おおっ、それ採用♪」
夜塚が三丸に向かって右腕の親指を立てる。残っていた影が水中に潜る。
「まだ影が残っているぞ!」
「残りの仕上げは疾風隊員と宇田川花隊員、宇田川竜隊員、頼むよ!」
「了解です! 宇田川隊員のお姉さん! 探索を!」
「はい! ……残り五体がまとまって泳いでいます。そちらから見て二時の方向!」
「分かりました! おおおっ!」
大海が剣を振るい、川の中から影が飛び出す。影が一体になり、頭に傘を生やす。
「合体しました! 傘で空に逃げる気です! ありったけの一撃を!」
竜がすかさず声をかける。
「分かりました! うおおおっ!」
「サブブブブッ⁉」
影が霧消する。夜塚が呟く。
「『索敵之剣』というのはどうかな?」
「まあ、良いんじゃないか……」
「三丸隊長、随分と適当な答えだね」
「いちいち相手をするのが面倒だからな」
「酷いな」
「それより片付いたようだぞ」
「ああ、君たち、よくやってくれたよ」
夜塚が隊員たちに向かってウインクする。三丸が呟く。
「訓練は終了だな」
「そうだね、帰投しよう。お疲れさま♪」
夜塚が隊員たちに優しく声をかける。
「ササ……」
「ブブ……」
唐傘お化けの影と古代魚の影が合わさって、一つの大きな影になり、それが数体、川から陸に上がってくる。三丸が驚く。
「なにっ……融合しただと⁉」
「これはこれは……先日に引き続いて、こういうケースに遭遇するとはね……」
三丸の横で夜塚が顎をさする。
「サブブッ!」
「古代魚に足が生えた⁉」
「キモッ!」
竜の隣で、花が顔をしかめる。
「ササブブッ!」
「あ、歩いている!」
「ますますキモッ!」
「陸地を歩き回られたら厄介だね……」
「さっさと片付けるか……」
「ああ、ちょい待ち、松っちゃん」
「……」
「松ちゃんって」
「………」
三丸は夜塚の言葉を無視する。
「……三丸隊長」
「なんだ?」
「ここは彼らに任せよう」
「彼ら?」
「我が隊員たちにだよ」
夜塚が大海たちを指し示す。
「なんだと? 本気か?」
「本気も本気さ。実戦経験に勝る訓練はない」
夜塚が首をすくめる。
「しかし……」
三丸が顎をさする。
「考えている暇はそれほどないよ」
「……良いだろう」
三丸が頷く。
「理解を得られて嬉しく思うよ」
夜塚が笑顔を浮かべる。
「最初はどうする?」
三丸が尋ねる。
「まずは数を減らしたい」
夜塚が影の方を指差す。
「ああ……」
「ちょっとばかり多すぎるからね」
「そうだな」
「というわけで……氷刃隊員!」
「え⁉ は、はい!」
夜塚から突然呼びかけられ、陸人が驚く。
「ブレスレットを着けて!」
「は、はい!」
陸人が右腕にブレスレットを着ける。
「星野隊員!」
「はい!」
「ブレスレットを……」
「もう着けています!」
「さすがだ……二人とも右腕をかざして!」
「はい!」
「は、はい! ……な、なんだ、光に包まれている? この不思議な感覚は……」
陸人が腕をかざしながら月と同じ色の光に包まれた自らの体を見て首を傾げる。夜塚が月に対して声をかける。
「星野隊員、影の数を減らしたい!」
「はっ!」
「やり方は君らに任せる!」
「了解! はっ!」
「えっ⁉」
月がひとっ飛びで、川の対岸に着く。
「失礼!」
月が陸人の体を抱え込む。陸人が困惑する。
「えっ! えっ⁉」
「はあっ!」
「ええっ⁉」
月が陸人を抱えて空中高く飛び上がる。
「空中からなら影たちの様子がよく分かりますね!」
「た、高いところ怖い!」
「少しくらい我慢してください!」
「そ、そんな!」
「手を離しますよ!」
「ええっ⁉ ちょっと⁉」
「すぐ掴みますから!」
「いやあ!」
「嫌じゃない! 構え!」
「むっ⁉」
月が弓矢を、陸人が銃を構える。
「放て!」
「おおっ!」
「サブブッ⁉」
月と陸人の射撃を上から食らい、多くの影が霧消する。夜塚が頷く。
「ふむ、大分減らせたね……」
「二人とも見事な射撃だ。ブレスレットの補正もあるのだろうが、空中での姿勢制御もほぼ完璧だったな……」
三丸が感心する。
「さながら『射撃雨嵐』だね!」
「……ネーミングはどうでも良い」
「あらら……」
「さあ、氷刃隊員、降りますよ!」
空中で陸人を掴み直した月が告げる。
「お、お願いします!」
「ただ、ここでひとつ、残念なお知らせがあります……」
「え?」
「アタシは着地するのが致命的に下手なのです」
「えええっ⁉」
「いや、ちょっとだけですよ? ちょっとだけ……」
「ちょっとだけでも致命的な時点でアウトなんですよ!」
「川の方に落ちれば大丈夫! ブレスレットのお陰で身体も強化されているから!」
「いやああ!」
月と陸人がわめきながら着水する。三丸が夜塚に尋ねる。
「……大丈夫か?」
「大丈夫でしょ、それじゃあ、志波田隊員!」
「おう!」
「古前田隊員!」
「おうよ!」
「二人は細かいことを考えずに攻撃!」
「おおっ!」
「うおおっ!」
「サブブブッ⁉」
蘭と慶の金棒と槍での攻撃を食らった影が霧消する。
「ふむ! 『鬼も内! 仏も内!』って感じだね!」
「……却下」
「えっ⁉ ダメ⁉」
「長い、『鬼仏双撃』くらいでいいだろう」
「おおっ、それ採用♪」
夜塚が三丸に向かって右腕の親指を立てる。残っていた影が水中に潜る。
「まだ影が残っているぞ!」
「残りの仕上げは疾風隊員と宇田川花隊員、宇田川竜隊員、頼むよ!」
「了解です! 宇田川隊員のお姉さん! 探索を!」
「はい! ……残り五体がまとまって泳いでいます。そちらから見て二時の方向!」
「分かりました! おおおっ!」
大海が剣を振るい、川の中から影が飛び出す。影が一体になり、頭に傘を生やす。
「合体しました! 傘で空に逃げる気です! ありったけの一撃を!」
竜がすかさず声をかける。
「分かりました! うおおおっ!」
「サブブブブッ⁉」
影が霧消する。夜塚が呟く。
「『索敵之剣』というのはどうかな?」
「まあ、良いんじゃないか……」
「三丸隊長、随分と適当な答えだね」
「いちいち相手をするのが面倒だからな」
「酷いな」
「それより片付いたようだぞ」
「ああ、君たち、よくやってくれたよ」
夜塚が隊員たちに向かってウインクする。三丸が呟く。
「訓練は終了だな」
「そうだね、帰投しよう。お疲れさま♪」
夜塚が隊員たちに優しく声をかける。
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