18 / 50
第1章
第5話(1)真面目と馬鹿
しおりを挟む
5
「しかし、この腕輪には驚かされました……」
金沢基地の敷地内を歩きながら、大海は腕輪をまじまじと見つめる。
「本当よね~」
隣を歩く月も同調する。
「連携攻撃や連続攻撃の類ならば、訓練や演習でも行ってきましたが……」
「ツインアタックなんてまるで想像も出来ないわよね~」
「いや、まったく……」
大海が頷く。
「これに慣れるのは時間がかかりそうね~」
月も自らに渡された腕輪を取り出して、見つめる。
「いや、慣れるというよりもですね……」
「え?」
「まず覚えなくては……いやいや、その前にある程度の予測を立てなければならないのではないですか?」
「そうか、共振する相手によって、能力や戦い方が変わってくるんだっけ?」
「先日の立山での感じではどうやらそのようですね……」
月の問いに大海は答える。
「つまり……共振相手の能力などを頭に入れておかないといけないってことね?」
「そうでしょうね」
「う~ん、それはちょっとメンドイな~」
月が苦笑する。
「オイラは歓迎だぜ」
大海たちが振り返ると、慶が立っていた。
「あ、古前田隊員、いたんですね……」
「おいおい、月ちゃん、それはないぜ~」
「……行きましょう、大海」
月が歩みを速める。
「いやいや、なんだか冷たくね?」
「気のせいですよ」
「月ちゃん呼びが気に障ったかい?」
「……」
「慶ちゃんって呼んでいいんだぜ?」
「慶ちゃん隊員」
「いや、お前が呼ぶのかよ!」
慶が大海につっこむ。
「歓迎とはどういう意味ですか?」
「ん? ああ……確かにこの腕輪は扱うのが面倒そうな代物ではあるが、要は強力な攻撃を繰り出すことが出来るんだろ? まだるっこしいコンビネーションを磨くよりかは、よっぽどオイラの性に合っていると思ってな」
「なるほど……ですが」
「ですが?」
「コンビネーションに関する訓練を怠ってはならないと考えます」
「真面目だねえ……」
「息を合わせる、意思を統一する類のものですから、コンビネーションが基本になってきます。基本は何事においても大事です」
「ああ~分かったよ、お前さんが全面的に正しい」
慶がわざとらしく両手を挙げる。
「ご理解頂けてなによりです、慶ちゃん隊員」
「……お前は慶って呼んで良いよ」
「そうですか?」
「ああ、野郎にちゃん付けされるとか、鳥肌もんだ……」
「そうですか……」
「その代わり、オイラも大海って呼ぶぜ。良いよな?」
「ええ、それは構いません」
「……貴様ら、ちょっといいか?」
くわえタバコをした女性が三人に声をかける。振り返った慶が口笛を鳴らす。
「~~♪ おおっ、いい女……」
「バカ慶!」
「おおいっ⁉ 月ちゃん、バカは酷いんじゃねえか? 親しき仲にもなんとやらだぜ……」
「よく見て!」
「うん? ……あ、ああ⁉ その北陸一、くわえタバコがよく似合うクールビューティーっぷりは! 福井管区の三丸隊長⁉」
「……人をなにで判断しているんだ貴様は。しかも北陸一って……限定的だな」
三丸が呆れ気味に慶を見つめる。
「い、いや……」
「基地内は基本禁煙ですよ」
「う、うおい⁉ 大海!」
慶が大海の言葉に驚く。大海がその様子を見て、首を傾げる。
「慶、何を驚いているのですか?」
「お前の空気の読めなさにだよ!」
「空気は吸うものです」
「状況を察しろ!」
「察した上で、ご注意申し上げたのです」
「バカ真面目か!」
「真面目であろうと努めていますが、バカは少々心外です」
大海は眉をわずかに動かす。どうやらムッとしているようだ。
「あ~もう!」
「……坊主、ちょっと黙れ」
「は、はい!」
「どこもかしこもうるさいが……貴様が正しいな」
三丸が笑ってタバコをしまう。
「生意気なことを申し上げました」
大海が頭を下げる。三丸が片手を挙げる。
「別に構わんさ……」
「はっ! ふ、二人とも敬礼よ!」
「!」
「おっと!」
月に促され、大海と慶が三丸に向かって慌てて敬礼する。
「失礼しました!」
大海が声を上げる。三丸が軽く手を左右に振る。
「敬礼などいらん……楽にしろ」
「はっ‼」
「はっ!」
「ははあっ!」
三丸の言葉に従い、大海たちは敬礼を解く。
「意外と硬い連中だな……自分にない部分を補った人選か?」
大海たちを見て、三丸がボソッと呟く。
「え?」
月が首を傾げる。三丸が小さく首を振る。
「いや、なんでもない……それよりも貴様ら、あの馬鹿はどこだ?」
「え……」
三丸の問いに月が戸惑いながら慶を指し示す。慶が声を上げる。
「いや、だから酷くない⁉」
「その馬鹿ではない」
「酷い!」
「馬鹿、もとい……夜塚の奴はどこにいる?」
三丸は再度問う。
「しかし、この腕輪には驚かされました……」
金沢基地の敷地内を歩きながら、大海は腕輪をまじまじと見つめる。
「本当よね~」
隣を歩く月も同調する。
「連携攻撃や連続攻撃の類ならば、訓練や演習でも行ってきましたが……」
「ツインアタックなんてまるで想像も出来ないわよね~」
「いや、まったく……」
大海が頷く。
「これに慣れるのは時間がかかりそうね~」
月も自らに渡された腕輪を取り出して、見つめる。
「いや、慣れるというよりもですね……」
「え?」
「まず覚えなくては……いやいや、その前にある程度の予測を立てなければならないのではないですか?」
「そうか、共振する相手によって、能力や戦い方が変わってくるんだっけ?」
「先日の立山での感じではどうやらそのようですね……」
月の問いに大海は答える。
「つまり……共振相手の能力などを頭に入れておかないといけないってことね?」
「そうでしょうね」
「う~ん、それはちょっとメンドイな~」
月が苦笑する。
「オイラは歓迎だぜ」
大海たちが振り返ると、慶が立っていた。
「あ、古前田隊員、いたんですね……」
「おいおい、月ちゃん、それはないぜ~」
「……行きましょう、大海」
月が歩みを速める。
「いやいや、なんだか冷たくね?」
「気のせいですよ」
「月ちゃん呼びが気に障ったかい?」
「……」
「慶ちゃんって呼んでいいんだぜ?」
「慶ちゃん隊員」
「いや、お前が呼ぶのかよ!」
慶が大海につっこむ。
「歓迎とはどういう意味ですか?」
「ん? ああ……確かにこの腕輪は扱うのが面倒そうな代物ではあるが、要は強力な攻撃を繰り出すことが出来るんだろ? まだるっこしいコンビネーションを磨くよりかは、よっぽどオイラの性に合っていると思ってな」
「なるほど……ですが」
「ですが?」
「コンビネーションに関する訓練を怠ってはならないと考えます」
「真面目だねえ……」
「息を合わせる、意思を統一する類のものですから、コンビネーションが基本になってきます。基本は何事においても大事です」
「ああ~分かったよ、お前さんが全面的に正しい」
慶がわざとらしく両手を挙げる。
「ご理解頂けてなによりです、慶ちゃん隊員」
「……お前は慶って呼んで良いよ」
「そうですか?」
「ああ、野郎にちゃん付けされるとか、鳥肌もんだ……」
「そうですか……」
「その代わり、オイラも大海って呼ぶぜ。良いよな?」
「ええ、それは構いません」
「……貴様ら、ちょっといいか?」
くわえタバコをした女性が三人に声をかける。振り返った慶が口笛を鳴らす。
「~~♪ おおっ、いい女……」
「バカ慶!」
「おおいっ⁉ 月ちゃん、バカは酷いんじゃねえか? 親しき仲にもなんとやらだぜ……」
「よく見て!」
「うん? ……あ、ああ⁉ その北陸一、くわえタバコがよく似合うクールビューティーっぷりは! 福井管区の三丸隊長⁉」
「……人をなにで判断しているんだ貴様は。しかも北陸一って……限定的だな」
三丸が呆れ気味に慶を見つめる。
「い、いや……」
「基地内は基本禁煙ですよ」
「う、うおい⁉ 大海!」
慶が大海の言葉に驚く。大海がその様子を見て、首を傾げる。
「慶、何を驚いているのですか?」
「お前の空気の読めなさにだよ!」
「空気は吸うものです」
「状況を察しろ!」
「察した上で、ご注意申し上げたのです」
「バカ真面目か!」
「真面目であろうと努めていますが、バカは少々心外です」
大海は眉をわずかに動かす。どうやらムッとしているようだ。
「あ~もう!」
「……坊主、ちょっと黙れ」
「は、はい!」
「どこもかしこもうるさいが……貴様が正しいな」
三丸が笑ってタバコをしまう。
「生意気なことを申し上げました」
大海が頭を下げる。三丸が片手を挙げる。
「別に構わんさ……」
「はっ! ふ、二人とも敬礼よ!」
「!」
「おっと!」
月に促され、大海と慶が三丸に向かって慌てて敬礼する。
「失礼しました!」
大海が声を上げる。三丸が軽く手を左右に振る。
「敬礼などいらん……楽にしろ」
「はっ‼」
「はっ!」
「ははあっ!」
三丸の言葉に従い、大海たちは敬礼を解く。
「意外と硬い連中だな……自分にない部分を補った人選か?」
大海たちを見て、三丸がボソッと呟く。
「え?」
月が首を傾げる。三丸が小さく首を振る。
「いや、なんでもない……それよりも貴様ら、あの馬鹿はどこだ?」
「え……」
三丸の問いに月が戸惑いながら慶を指し示す。慶が声を上げる。
「いや、だから酷くない⁉」
「その馬鹿ではない」
「酷い!」
「馬鹿、もとい……夜塚の奴はどこにいる?」
三丸は再度問う。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
あやとり
吉世大海(キッセイヒロミ)
SF
人類は世界を宇宙まで進出させた。
地球の「地上主権主義連合国」通称「地連」、中立国や、月にある国々、火星のドームを中心とする「ゼウス共和国」で世界は構成されている。
そして、その構成された世界に張り巡らされたのがドールプログラム。それは日常生活の機械の動作の活用から殺戮兵器の動作…それらを円滑に操るプログラムとそれによるネットワーク。つまり、世界を、宇宙を把握するプログラムである。
宇宙の国々は資源や力を、さらにはドールプログラムを操る力を持った者達、それらを巡って世界の争いは加速する。
・六本の糸
月の人工ドーム「希望」は「地連」と「ゼウス共和国」の争いの間で滅ぼされ、そこで育った仲良しの少年と少女たちは「希望」の消滅によりバラバラになってしまう。
「コウヤ・ハヤセ」は地球に住む少年だ。彼はある時期より前の記憶のない少年であり、自分の親も生まれた場所も知らない。そんな彼が自分の過去を知るという「ユイ」と名乗る少女と出会う。そして自分の住むドームに「ゼウス共和国」からの襲撃を受け「地連」の争いに巻き込まれてしまう。
~地球編~
地球が舞台。ゼウス共和国と地連の争いの話。
~「天」編~
月が舞台。軍本部と主人公たちのやり取りと人との関りがメインの話。
~研究ドーム編~
月が舞台。仲間の救出とそれぞれの過去がメインの話。
~「天」2編~
月が舞台。主人公たちの束の間の休憩時間の話。
~プログラム編~
地球が舞台。準備とドールプログラムの話。
~収束作戦編~
月と宇宙が舞台。プログラム収束作戦の話。最終章。
・泥の中
六本の糸以前の話。主役が別人物。月と宇宙が舞台。
・糸から外れて
~無力な鍵~
リコウ・ヤクシジはドールプログラムの研究者を目指す学生だった。だが、彼の元に風変わりな青年が現われてから彼の世界は変わる。
~流れ続ける因~
ドールプログラム開発、それよりもずっと昔の権力者たちの幼い話や因縁が絡んでくる。
~因の子~
前章の続き。前章では権力者の過去が絡んだが、今回はその子供の因縁が絡む。
ご都合主義です。設定や階級に穴だらけでツッコミどころ満載ですが気にしないでください。
更新しながら、最初から徐々に訂正を加えていきます。
小説家になろうで投稿していた作品です。
スペースシエルさんReboot 〜宇宙生物に寄生されましたぁ!〜
柚亜紫翼
SF
真っ暗な宇宙を一人で旅するシエルさんはお父さんの遺してくれた小型宇宙船に乗ってハンターというお仕事をして暮らしています。
ステーションに住んでいるお友達のリンちゃんとの遠距離通話を楽しみにしている長命種の145歳、趣味は読書、夢は自然豊かな惑星で市民権とお家を手に入れのんびり暮らす事!。
「宇宙船にずっと引きこもっていたいけど、僕の船はボロボロ、修理代や食費、お薬代・・・生きる為にはお金が要るの、だから・・・嫌だけど、怖いけど、人と関わってお仕事をして・・・今日もお金を稼がなきゃ・・・」
これは「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」に投稿している「〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜」の元になったお話のリメイクです、なので内容や登場人物が「リーゼロッテさん」とよく似ています。
時々鬱展開やスプラッタな要素が混ざりますが、シエルさんが優雅な引きこもり生活を夢見てのんびりまったり宇宙を旅するお話です。
遥か昔に書いたオリジナルを元にリメイクし、新しい要素を混ぜて最初から書き直していますので宇宙版の「リーゼロッテさん」として楽しんでもらえたら嬉しいです。
〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜
https://www.alphapolis.co.jp/novel/652357507/282796475
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる