【第1章完】ゲートバスターズー北陸戦線ー

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
上 下
11 / 50
第1章

第3話(2)相撲しろ

しおりを挟む
「スリングショットが得意だというのは、以前から知っていましたが……」

「あれ? そうだっけ?」

 基地内のベンチに腰かけながら花と陸人が話す。

「そうですよ、いつも事あるごとに、自慢気に披露しているじゃないですか」

「こ、事あるごとに……?」

 花が首を傾げる。

「もしかして……」

「え?」

「自覚なかったのですか?」

「う、うん……」

 陸人が頷く。

「それは……」

 花が困惑気味の表情を浮かべる。

「あ、ちょっと痛い奴だと思ったでしょ⁉」

「いえ……」

「ん?」

「だいぶ痛いなと……」

「だ、だいぶ⁉」

「ええ」

「うわあ~ん!」

 陸人が顔を両手で覆う。

「まあまあ、泣き真似はやめて下さい」

「泣き真似じゃないよ!」

「本当に泣いているのですか?」

「俺の涙腺の脆さ、舐めないでくれる⁉」

「そんなことで胸を張られても困りますが……」

「ガラスのハートでもあるんだから!」

 陸人が自らの胸に手を当てる。

「……そっちに心臓があるのですか?」

「え? ああ、こっちか……」

 陸人が手を右胸から左胸に移す。花はため息をつく。

「はあ……まあ、そんなことはともかく……陸人くんの射撃の腕前は確かですね……」

「そ、そうかな……」

「ええ、の〇太くんやウ〇ップを彷彿とさせます……」

「そ、それって悪口じゃない⁉」

 陸人がまた涙目になる。

「悪口じゃありませんよ」

「そ、そう……?」

「ええ、ただ……」

「ただ?」

「〇び太くんも〇ソップもやる時はやりますが、陸人くんからはそういう雰囲気はあまり感じられないですね」

「え~ん!」

 陸人が再び顔を覆う。

「思ったことを言ったまでですよ」

「も、もうちょっとオブラートに包んでよ!」

「それは無理な相談です」

「そ、そんな~!」

「こんなとこにいやがったか!」

「うん?」

 陸人と花が視線を向けると、体格の良いツインテールの女性が仁王立ちしていた。

「志波田隊員……なにか御用ですか?」

「宇田川花隊員、お前には用はない! 氷刃隊員、お前に用がある!」

「ええ……?」

 陸人が戸惑う。ツインテールが後ろを指し示す。

「お前と勝負だ! こいつが!」

「ええっ⁉」

 ツインテールの後ろに立っていた、短髪で眼鏡の少年が驚く。顔立ちが花と似ている。

「な、なんで竜くんと俺が……」

「いいから勝負しろ! 相撲で!」

「す、相撲⁉ なんで⁉」

「男同士の勝負とくれば相撲と相場が決まっている!」

「は、初耳ですけど⁉」

「いいから! 何度も言わせるんじゃねえ!」

「あ、あの、蘭さん……やっぱりぼくには無理ですよ……」

 眼鏡の少年がツインテールに話す。ツインテールが少年の肩をグイっと引き寄せる。

「しっかりしろ、お前はアタイが見込んだ男なのだから……」

「は、はあ……」

「まずはこの基地最弱とも言われる氷刃隊員を軽く捻って自信をつけろ……」

「聞き捨てなりませんね」

 花が立ち上がり、自らより、やや大きいツインテールを見上げる。

「む?」

「竜みたいなヘタレが陸人くんに勝てるとでも?」

「ヘ、ヘタレ⁉」

「双子の兄に対して随分と辛辣じゃないか」

「兄ではなく弟です……だからこそ分かります」

「お前は知らんのかもしらねえが、こいつは最近それなりに鍛えてきているぜ?」

「なにごとも限界というものがあります」

「ふん……それなら試してみるか?」

「良いでしょう……」

「いけ、竜!」

「陸人くん!」

「か、勝手に盛り上がらないでくれない⁉」

 陸人が戸惑いの声を上げる。ツインテールが大声で促す。

「早くしやがれ!」

「しょ、しょうがないなあ……」

「うう……」

「な、何をやっている、お前ら⁉」

 ツインテールが慌てる。陸人と眼鏡の少年が上着を脱ぎ始めたからだ。

「え? 相撲だって言うから……」

「べ、別に服は脱がんでもいい!」

「勝手だな……ん⁉」

 四つのアラーム音がほぼ同時に鳴る。その場にいた四人全員への連絡だ。

「……呼び出しですね」

 端末を確認した花が呟く。陸人が首を傾げる。

「なんだろう?」

「とにかく行ってみるしかありませんね……」

 ジャージから軍服に着替えた四人が呼び出し場所に急いで向かう。陸人が呟く。

「ここって……使われていない倉庫?」

「第一部隊所属、志波田蘭(しばたらん)!」

「第二部隊所属、宇田川竜(うたがわりゅう)……」

「第二部隊所属、宇田川花!」

「第三部隊所属、氷刃陸人……以上四名、参りました」

「……入れ」

「失礼いたします!」

 蘭を先頭に四人が倉庫の中に入る。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【本格ハードSF】人類は孤独ではなかった――タイタン探査が明らかにした新たな知性との邂逅

シャーロット
SF
土星の謎めいた衛星タイタン。その氷と液体メタンに覆われた湖の底で、独自の知性体「エリディアン」が進化を遂げていた。透き通った体を持つ彼らは、精緻な振動を通じてコミュニケーションを取り、環境を形作ることで「共鳴」という文化を育んできた。しかし、その平穏な世界に、人類の探査機が到着したことで大きな転機が訪れる。 探査機が発するリズミカルな振動はエリディアンたちの関心を引き、慎重なやり取りが始まる。これが、異なる文明同士の架け橋となる最初の一歩だった。「エンデュランスII号」の探査チームはエリディアンの振動信号を解読し、応答を送り返すことで対話を試みる。エリディアンたちは興味を抱きつつも警戒を続けながら、人類との画期的な知識交換を進める。 その後、人類は振動を光のパターンに変換できる「光の道具」をエリディアンに提供する。この装置は、彼らのコミュニケーション方法を再定義し、文化の可能性を飛躍的に拡大させるものだった。エリディアンたちはこの道具を受け入れ、新たな形でネットワークを調和させながら、光と振動の新しい次元を発見していく。 エリディアンがこうした革新を適応し、統合していく中で、人類はその変化を見守り、知識の共有がもたらす可能性の大きさに驚嘆する。同時に、彼らが自然現象を調和させる能力、たとえばタイタン地震を振動によって抑える力は、人類の理解を超えた生物学的・文化的な深みを示している。 この「ファーストコンタクト」の物語は、共存や進化、そして異なる知性体がもたらす無限の可能性を探るものだ。光と振動の共鳴が、2つの文明が未知へ挑む新たな時代の幕開けを象徴し、互いの好奇心と尊敬、希望に満ちた未来を切り開いていく。 -- プロモーション用の動画を作成しました。 オリジナルの画像をオリジナルの音楽で紹介しています。 https://www.youtube.com/watch?v=G_FW_nUXZiQ

銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

銀河英雄戦艦アトランテスノヴァ

マサノブ
SF
日本が地球の盟主となった世界に 宇宙から強力な侵略者が攻めてきた、 此は一隻の宇宙戦艦がやがて銀河の英雄戦艦と 呼ばれる迄の奇跡の物語である。

レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞

橋本 直
SF
地球人類が初めて地球外人類と出会った辺境惑星『遼州』の連合国家群『遼州同盟』。 その有力国のひとつ東和共和国に住むごく普通の大学生だった神前誠(しんぜんまこと)。彼は就職先に困り、母親の剣道場の師範代である嵯峨惟基を頼り軍に人型兵器『アサルト・モジュール』のパイロットの幹部候補生という待遇でなんとか入ることができた。 しかし、基礎訓練を終え、士官候補生として配属されたその嵯峨惟基が部隊長を務める部隊『遼州同盟司法局実働部隊』は巨大工場の中に仮住まいをする肩身の狭い状況の部隊だった。 さらに追い打ちをかけるのは個性的な同僚達。 直属の上司はガラは悪いが家柄が良いサイボーグ西園寺かなめと無口でぶっきらぼうな人造人間のカウラ・ベルガーの二人の女性士官。 他にもオタク趣味で意気投合するがどこか食えない女性人造人間の艦長代理アイシャ・クラウゼ、小さな元気っ子野生農業少女ナンバルゲニア・シャムラード、マイペースで人の話を聞かないサイボーグ吉田俊平、声と態度がでかい幼女にしか見えない指揮官クバルカ・ランなど個性の塊のような面々に振り回される誠。 しかも人に振り回されるばかりと思いきや自分に自分でも自覚のない不思議な力、「法術」が眠っていた。 考えがまとまらないまま初めての宇宙空間での演習に出るが、そして時を同じくして同盟の存在を揺るがしかねない同盟加盟国『胡州帝国』の国権軍権拡大を主張する独自行動派によるクーデターが画策されいるという報が届く。 誠は法術師専用アサルト・モジュール『05式乙型』を駆り戦場で何を見ることになるのか?そして彼の昇進はありうるのか?

3024年宇宙のスズキ

神谷モロ
SF
 俺の名はイチロー・スズキ。  もちろんベースボールとは無関係な一般人だ。  21世紀に生きていた普通の日本人。  ひょんな事故から冷凍睡眠されていたが1000年後の未来に蘇った現代の浦島太郎である。  今は福祉事業団体フリーボートの社員で、福祉船アマテラスの船長だ。 ※この作品はカクヨムでも掲載しています。

処理中です...