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第一章
第5話(1)現状を認識
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5
「潮目は確実にだが変わりつつあるな……」
ある日の放課後、ベランダから校庭を眺めながら日光が呟く。
「笠井君の加入が大きかったわね。私たちも含めて、クラスで11人ほどが日光君に協力的な姿勢を見せているわ」
「少しでもお役に立てたのなら嬉しいね」
玄武が笑顔を見せる。照美が額に手を当てて呟く。
「……もっとも、残りの8人ほどは旗色を鮮明にはしていないけど……」
「さらに言えば、残り10人が登校していないね」
「あらら……」
朱雀の補足に玄武は首を捻る。照美が日光に尋ねる。
「それでも方針に変更はないのでしょう?」
「ああ」
「方針とは?」
「し、四天王の方々と協力関係を結ぶことです……」
玄武の問いに聡乃が答える。
「へえ……それにしても本荘ちゃん、なんでそんなに離れたところにいるのさ? もっとこっちにおいでよ」
ベランダの端に佇む聡乃を玄武が手招きする。聡乃は手を左右に振る。
「い、いや、私は安全面を考えてここら辺で……」
「あ、安全面ってなに?」
「玄武、お前の放つ、そのパリピオーラは陰キャにとってはキツすぎるのだ……」
「そ、そんなものを放っているつもりはないけどね」
「かくいう俺もわずかではあるがダメージを負っている……日光と名乗る俺にとってもいささか眩し過ぎるのだ」
「そ、そうなん?」
「笠井君、この手の発言は無視しても一向に構わないわ」
「い、良いの?」
照美の言葉に玄武が戸惑う。朱雀が腕を組んで呟く。
「話は戻るが、四天王の残り二人を引き入れるのが目的か……」
「難しいのか?」
日光が問う。朱雀は笑みを浮かべて答える。
「笠井くんがイージーモード、僕がノーマルモードくらいの難易度だとするのなら、それぞれハードモード、ベリーハードモードくらいはあるだろうね」
「ちょいちょい、人のことをチョロいみたいに言わないでよ」
朱雀の説明に玄武が苦笑する。朱雀が笑みを浮かべる。
「実際そうだっただろう?」
「そうだったの? 日光っち」
「に、日光っち? う、う~ん、五十歩百歩といったところか?」
「だってよ」
「な⁉」
日光の答えに朱雀は不満そうな顔を見せる。日光が話を変える。
「まあ、それはともかくとしてだ、例のごとく、現状を把握しておこう……」
「現状を把握?」
「そうだ、玄武。お前の能力は『パリピ』。声や発する音の届く範囲内ならば、ほとんど誰でもテンションを上げることが出来ると……」
「そうだね。フロアーを熱く盛り上げることが出来るよ」
「フロアー……? とにかく言い換えれば、精神操作系の能力ということだな」
「なんだかおっかない言い方をするね、まあ、そういうことなのかもしれないね」
「しかし、声や音が届かない範囲だと、その効果は失われると……」
「うん、残念ながらね」
玄武が肩をすくめる。日光が話を続ける。
「そして、朱雀の能力が『垢バン』。垢……つまりアカウントを所持しており、なおかつ心のやましいことをそのアカウントなどで投稿していたら、そのやましさを突かれ、心身のバランスを崩してしまうと……」
「大体、そのとおりだね」
「言い換えれば精神干渉系か」
「自分の能力のカテゴライズに関してはあまり意識したことがないけど、そういう風に分類されるのかな?」
「井伊谷ちゃん、なかなかエグいね~」
玄武が笑う。日光が補足する。
「だが、相手がアカウントを所持していなかったり、健全な、または自信を持ってそのアカウントを利用している場合は効果がないと……」
「そのようだね」
朱雀が首をすくめる。
「どちらも精神に関係する能力だから、強力と言えば強力なのだがな……」
「だが?」
日光はやや間を空けて言う。
「……微妙な能力といってしまえば、微妙だな」
「む……」
「まあ、反論出来ないっちゃ、出来ないね~」
日光の物言いに朱雀はムッとし、玄武は笑う。
「そういう君はどうなんだい?」
朱雀が日光に問う。照美が代わりに答える。
「その日によって変わる左眼の色によって、発現する能力が変わる『中二病』よ」
「それだけ聞くとなかなか凄そうなんだけどね」
玄武が腕を組んで耳を傾ける。
「現在、確認した限りでは、緑色の時はいわゆる邪気眼系、空も飛べることが出来るわ」
「へえ、すごいじゃん」
「ただし、二秒だけだけどね」
照美がピースサインを作って、前に突き出す。
「あら……」
玄武がややズッコケる。
「赤色の時はいわゆるDQN系、やたらと攻撃的な性格になるわ」
「心なしか戦闘力が上がっている気がする……」
「それはなかなか頼もしいんじゃないかい?」
朱雀が顎を撫でながら呟く。日光がポツリと付け足す。
「ただ、長続きしない……」
「むう……」
朱雀が軽く天を仰ぐ。照美が説明を続ける。
「オレンジ色の時はなんというか……言語系の中二病かしらね。やたらと横文字を使いたがる傾向が見られたわ」
「それは……どうなの?」
「俺自身もまだ把握しきれてないが、要は小難しい言葉を並べ立てて、相手を煙に巻く……そんな感じだな」
「う~ん、それはまた……」
玄武が腕を組んで首を傾げる。照美が続ける。
「この間の黄色の時は、サブカル系の中二病。とにかく斜に構えるって感じね」
「ス、ステージでも斜めに構えていましたよね」
聡乃が思い出しながら頷く。朱雀が頭を抑えながら問う。
「実際、あれは斜めに構えるだけなのかい?」
「……今のところはそのようだな」
「「……微妙だ」」
朱雀と玄武の声が揃う。日光が声を上げる。
「ど、どんな能力も使いようだ! 照美の『プチ炎上』も、聡乃の『陰キャ』も!」
「……ん? ねえ、西学生寮のB組棟の方で騒ぎが起こっているらしいわよ!」
「なんだと?」
端末を見た照美の言葉に日光が反応する。
「潮目は確実にだが変わりつつあるな……」
ある日の放課後、ベランダから校庭を眺めながら日光が呟く。
「笠井君の加入が大きかったわね。私たちも含めて、クラスで11人ほどが日光君に協力的な姿勢を見せているわ」
「少しでもお役に立てたのなら嬉しいね」
玄武が笑顔を見せる。照美が額に手を当てて呟く。
「……もっとも、残りの8人ほどは旗色を鮮明にはしていないけど……」
「さらに言えば、残り10人が登校していないね」
「あらら……」
朱雀の補足に玄武は首を捻る。照美が日光に尋ねる。
「それでも方針に変更はないのでしょう?」
「ああ」
「方針とは?」
「し、四天王の方々と協力関係を結ぶことです……」
玄武の問いに聡乃が答える。
「へえ……それにしても本荘ちゃん、なんでそんなに離れたところにいるのさ? もっとこっちにおいでよ」
ベランダの端に佇む聡乃を玄武が手招きする。聡乃は手を左右に振る。
「い、いや、私は安全面を考えてここら辺で……」
「あ、安全面ってなに?」
「玄武、お前の放つ、そのパリピオーラは陰キャにとってはキツすぎるのだ……」
「そ、そんなものを放っているつもりはないけどね」
「かくいう俺もわずかではあるがダメージを負っている……日光と名乗る俺にとってもいささか眩し過ぎるのだ」
「そ、そうなん?」
「笠井君、この手の発言は無視しても一向に構わないわ」
「い、良いの?」
照美の言葉に玄武が戸惑う。朱雀が腕を組んで呟く。
「話は戻るが、四天王の残り二人を引き入れるのが目的か……」
「難しいのか?」
日光が問う。朱雀は笑みを浮かべて答える。
「笠井くんがイージーモード、僕がノーマルモードくらいの難易度だとするのなら、それぞれハードモード、ベリーハードモードくらいはあるだろうね」
「ちょいちょい、人のことをチョロいみたいに言わないでよ」
朱雀の説明に玄武が苦笑する。朱雀が笑みを浮かべる。
「実際そうだっただろう?」
「そうだったの? 日光っち」
「に、日光っち? う、う~ん、五十歩百歩といったところか?」
「だってよ」
「な⁉」
日光の答えに朱雀は不満そうな顔を見せる。日光が話を変える。
「まあ、それはともかくとしてだ、例のごとく、現状を把握しておこう……」
「現状を把握?」
「そうだ、玄武。お前の能力は『パリピ』。声や発する音の届く範囲内ならば、ほとんど誰でもテンションを上げることが出来ると……」
「そうだね。フロアーを熱く盛り上げることが出来るよ」
「フロアー……? とにかく言い換えれば、精神操作系の能力ということだな」
「なんだかおっかない言い方をするね、まあ、そういうことなのかもしれないね」
「しかし、声や音が届かない範囲だと、その効果は失われると……」
「うん、残念ながらね」
玄武が肩をすくめる。日光が話を続ける。
「そして、朱雀の能力が『垢バン』。垢……つまりアカウントを所持しており、なおかつ心のやましいことをそのアカウントなどで投稿していたら、そのやましさを突かれ、心身のバランスを崩してしまうと……」
「大体、そのとおりだね」
「言い換えれば精神干渉系か」
「自分の能力のカテゴライズに関してはあまり意識したことがないけど、そういう風に分類されるのかな?」
「井伊谷ちゃん、なかなかエグいね~」
玄武が笑う。日光が補足する。
「だが、相手がアカウントを所持していなかったり、健全な、または自信を持ってそのアカウントを利用している場合は効果がないと……」
「そのようだね」
朱雀が首をすくめる。
「どちらも精神に関係する能力だから、強力と言えば強力なのだがな……」
「だが?」
日光はやや間を空けて言う。
「……微妙な能力といってしまえば、微妙だな」
「む……」
「まあ、反論出来ないっちゃ、出来ないね~」
日光の物言いに朱雀はムッとし、玄武は笑う。
「そういう君はどうなんだい?」
朱雀が日光に問う。照美が代わりに答える。
「その日によって変わる左眼の色によって、発現する能力が変わる『中二病』よ」
「それだけ聞くとなかなか凄そうなんだけどね」
玄武が腕を組んで耳を傾ける。
「現在、確認した限りでは、緑色の時はいわゆる邪気眼系、空も飛べることが出来るわ」
「へえ、すごいじゃん」
「ただし、二秒だけだけどね」
照美がピースサインを作って、前に突き出す。
「あら……」
玄武がややズッコケる。
「赤色の時はいわゆるDQN系、やたらと攻撃的な性格になるわ」
「心なしか戦闘力が上がっている気がする……」
「それはなかなか頼もしいんじゃないかい?」
朱雀が顎を撫でながら呟く。日光がポツリと付け足す。
「ただ、長続きしない……」
「むう……」
朱雀が軽く天を仰ぐ。照美が説明を続ける。
「オレンジ色の時はなんというか……言語系の中二病かしらね。やたらと横文字を使いたがる傾向が見られたわ」
「それは……どうなの?」
「俺自身もまだ把握しきれてないが、要は小難しい言葉を並べ立てて、相手を煙に巻く……そんな感じだな」
「う~ん、それはまた……」
玄武が腕を組んで首を傾げる。照美が続ける。
「この間の黄色の時は、サブカル系の中二病。とにかく斜に構えるって感じね」
「ス、ステージでも斜めに構えていましたよね」
聡乃が思い出しながら頷く。朱雀が頭を抑えながら問う。
「実際、あれは斜めに構えるだけなのかい?」
「……今のところはそのようだな」
「「……微妙だ」」
朱雀と玄武の声が揃う。日光が声を上げる。
「ど、どんな能力も使いようだ! 照美の『プチ炎上』も、聡乃の『陰キャ』も!」
「……ん? ねえ、西学生寮のB組棟の方で騒ぎが起こっているらしいわよ!」
「なんだと?」
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